不動産査定が高すぎるのはなぜ?会社ごとに差が出る理由と見抜き方

不動産売却

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一括査定を使ったら、A社は3,200万円、B社は3,300万円、C社は3,100万円。ここまではまあ分かる。

でもD社だけ3,800万円。

「え、そんなに高く売れるの?」と思う反面、「なんかおかしくない?」とも感じる。

その直感、正しいです。

不動産業界では、わざと高い査定額を出して媒介契約を取りにいく手法が昔から存在します。業界では「釣り査定」と呼ばれることもあります。

この記事では、仲介営業を15年やってきた筆者が、なぜ高すぎる査定が出るのか?どうやって見抜けばいいのか?を、査定を出す側の視点からお伝えします。

  1. なぜ不動産会社は高すぎる査定を出すのか?
    1. 理由1|媒介契約を取ることが最優先だから
    2. 理由2|一括査定では「他社に勝つ」必要がある
    3. 理由3|売主は「高く言ってくれる会社」を選びがち
  2. 釣り査定を見抜く3つのチェックポイント
    1. チェック1|査定の根拠(成約事例)を具体的に聞く
    2. チェック2|「この価格で何ヶ月で売れますか?」と聞く
    3. チェック3|査定額と売出価格の違いを説明できるか
  3. 正しい査定額はどう判断すればいい?
    1. 複数社の「中央値」を基準にする
    2. 成約事例を自分でも確認する
    3. 「高い=悪」とは限らない
  4. 高すぎる査定に飛びついて失敗するパターン
  5. よくある質問
    1. 一番高い査定を出した会社に頼めば得ですか?
    2. 査定額どおりに売れますか?
    3. 高い査定を出されると断りにくいです。
    4. 安い査定を出す会社のほうが良心的ですか?
  6. まとめ|査定額ではなく「根拠」で会社を選ぼう
    1. 査定額は不動産会社によって差が出ることがあります
  7. 高すぎる査定に迷ったら、あわせて読みたい記事
  8. 査定額の差が大きいのはなぜ?金額がばらつく4つの理由
    1. 理由1|査定方法そのものが違う(机上査定と訪問査定)
    2. 理由2|会社ごとに、手元にある成約事例と買主が違う
    3. 理由3|想定している「売り方」が違う(仲介か、買取か)
    4. 理由4|受注のための「上乗せ」が混ざっている
  9. 高い査定の会社をそのまま選ばないほうがいい、契約上の理由
    1. 媒介契約は、法律で期間と義務が決まっている
    2. 「3か月」という単位が、高い査定と組み合わさるとどうなるか
    3. ただし、専任媒介が悪いわけではありません
  10. 高すぎる査定を受け取ったときのチェックリスト
    1. 1. そもそも「査定書」が出てくるか
    2. 2. 「査定根拠」の欄に何が書いてあるか
    3. 3. その事例は「成約価格」か、それとも「売出価格」か
    4. 4. 査定価格に「幅」が示されているか
    5. 5. 算出に使った方法・マニュアルを言えるか
    6. チェックリストまとめ
  11. 査定額の差についてよくある質問
    1. 査定額に数百万円の差があるのは異常ですか?
    2. 訪問査定を受けたら金額が下がりました。だまされたのでしょうか?
    3. 査定書に根拠が書かれていません。要求してもいいですか?
    4. 高い査定の会社と契約してしまいました。もう変えられませんか?

なぜ不動産会社は高すぎる査定を出すのか?

結論から言うと、「まず契約を取りたいから」です。

もう少し詳しく、3つの理由を説明します。

理由1|媒介契約を取ることが最優先だから

不動産会社は、売主と「媒介契約」を結ばないと、そもそも販売活動ができません。つまり、契約を取れなければ売上はゼロ。

だから一部の会社は、こう考えます。

「まず高い金額を見せて契約を取ろう。売れなければ後から値下げしてもらえばいい」

これが釣り査定の正体です。最初に高い査定を出して専任媒介契約(※1社だけに任せる契約)を取り、その後「やっぱり反響が少ないので価格を下げましょう」と持ちかけるわけです。

理由2|一括査定では「他社に勝つ」必要がある

一括査定サイトでは、同時に3〜6社に査定を依頼するのが一般的です。不動産会社の側からすると、横並びで比較されることが分かっている。

そうなると、「正直な金額を出したら他社に負ける」と考える会社が出てきます。

実際、売主さんの多くは「一番高い金額を出してくれた会社」に好印象を持ちます。営業マンもそれを分かっているから、つい査定額を盛りたくなる。これが構造的な問題です。

理由3|売主は「高く言ってくれる会社」を選びがち

これは売主さん側の心理の話です。

3社の査定で「3,200万円」「3,300万円」「3,800万円」と出たら、3,800万円の会社に頼みたくなるのが人間です。

でも冷静に考えてみてください。

査定額は「この金額で売れます」という約束ではありません。

査定額はあくまで不動産会社の「意見」です。売れるかどうかは市場が決めます。高い査定=高く売れる、ではないんです。

釣り査定を見抜く3つのチェックポイント

では、どうすれば高すぎる査定を見抜けるのか? 現場にいた経験から、この3つを聞けばほぼ分かります。

チェック1|査定の根拠(成約事例)を具体的に聞く

「なぜこの金額なのか?」と聞いてみてください。

信頼できる会社は、近隣の成約事例(実際に売れた価格)を出して説明します。「同じマンションの○号室が半年前に○○万円で成約しました。お部屋の階数と向きを考慮して…」という感じです。

一方、根拠が曖昧な会社は「このエリアは人気なので」「今は売り時ですから」など、ふわっとした説明しかできません。ここで差が出ます。

チェック2|「この価格で何ヶ月で売れますか?」と聞く

この質問はかなり効きます。

高い査定を出した会社に「じゃあこの金額で、何ヶ月くらいで売れる見込みですか?」と聞いてみてください。

誠実な会社なら、「この価格だと3〜6ヶ月くらい。もう少し下げれば2〜3ヶ月で決まる可能性が高いです」と現実的な見通しを話してくれます。

歯切れが悪くなったり、「出してみないと分かりません」としか言えない場合は、その査定額に自信がない証拠です。

チェック3|査定額と売出価格の違いを説明できるか

意外と知られていませんが、「査定額」と「売出価格」は別物です。

  • 査定額 = 不動産会社が考える「おそらくこのくらいで売れる」金額
  • 売出価格 = 実際に市場に出す価格(交渉余地を見て、査定額より少し高くすることも多い)

この違いをきちんと説明してくれるかどうかで、その会社の誠実さが分かります。「査定額=売出価格」として話を進める会社は要注意です。

正しい査定額はどう判断すればいい?

「じゃあ結局、どの金額を信じればいいの?」という疑問が出てきますよね。

複数社の「中央値」を基準にする

一番シンプルな方法は、複数社の査定額の真ん中あたりを基準にすることです。

例えば4社で「3,100万円・3,200万円・3,300万円・3,800万円」なら、3,200万〜3,300万円あたりが相場感。3,800万円はやはり高すぎると判断できます。

成約事例を自分でも確認する

もう少し踏み込むなら、レインズ・マーケット・インフォメーション(国土交通省が運営)で、近隣の成約事例を自分で調べることもできます。無料で使えるので、査定額が妥当かどうかの参考になります。

「高い=悪」とは限らない

ひとつ補足しておくと、相場より高い査定が全部ダメというわけではありません。

「最初は強気で出して、反響を見ながら調整していきましょう」という戦略として高めに出すケースもあります。大事なのは、その理由と出口(いつまでに、いくらまで下げるか)を明確に説明してくれるかどうか。

根拠と戦略があるなら、高めの査定でも信頼してOKです。

高すぎる査定に飛びついて失敗するパターン

最後に、実際によくある失敗パターンをお伝えします。

「高い査定→専任契約→売れない→値下げ→また売れない→結局相場以下で成約」

この流れ、本当に多いんです。

最初に相場より500万円高く出して、3ヶ月売れない。200万円下げてまた2ヶ月。さらに200万円下げて…と繰り返すうちに、ポータルサイト上で「ずっと掲載されている物件」になってしまう。

買う側からすると、「何ヶ月も売れ残っている=何か問題があるのでは?」と思うのが自然です。結果として、最初から適正価格で出していれば3,300万円で売れたものが、3,000万円でしか売れなかった、ということが起きます。

高すぎる査定に飛びつくことで、かえって損をしてしまう。これが一番もったいないパターンです。

よくある質問

一番高い査定を出した会社に頼めば得ですか?

正直に言うと、そうとは限りません。本文でもお伝えしたとおり、査定額はあくまで会社の「意見」で、その金額で売れる保証ではないからです。私が現場にいた頃も、一番高い金額に飛びついた売主さんが、結局値下げを重ねて相場以下で決まる、というケースを何度も見てきました。金額の高さより、その根拠を成約事例つきで説明できるかで選んだほうが、失敗しにくいです。

査定額どおりに売れますか?

査定額は「このくらいで売れそう」という予測で、約束ではありません。本文で触れたとおり査定額と売出価格も別物で、最終的にいくらで売れるかは市場と買主との交渉で決まります。査定額を「確定した売却額」と思い込まないことが、後でがっかりしないコツです。

高い査定を出されると断りにくいです。

その場で返事をする必要はまったくありません。営業する側にいた立場から言っても、高い査定はむしろ「なぜその価格なのか」をじっくり質問していい場面です。「根拠を聞いて、他社の見立てと並べて比べてから決めます」と伝えれば十分。誠実な会社ほど、その場で急かさず待ってくれます。逆に即決を迫ってくる相手なら、一度距離を置いて考えたほうがいいくらいです。

安い査定を出す会社のほうが良心的ですか?

安い=良心的、とも言い切れません。早く売って手数料を確定させたいといった事情から、あえて低めに出す会社もあるからです。高いほうも安いほうも、見極め方は同じで、「なぜその金額なのか」を成約事例つきで説明できるかどうかを見ます。金額の大小そのものより、根拠の中身を確かめるクセをつけておくと安心です。

まとめ|査定額ではなく「根拠」で会社を選ぼう

不動産査定が高すぎる理由、そしてその見抜き方をお伝えしてきました。

ポイントをまとめると:

  • 高すぎる査定の多くは、媒介契約を取るための営業手法
  • 見抜くには「根拠」「期間」「査定額と売出価格の違い」の3つを聞く
  • 複数社の中央値を基準にして、相場感をつかむ
  • 高い査定=良い会社ではない。根拠と戦略で判断する

不動産会社を選ぶときは、一番高い査定を出してくれた会社ではなく、一番納得できる説明をしてくれた会社を選んでください。

そのほうが、結果的に高く・早く売れる可能性が高いです。


釣り査定に惑わされない一番の防御は、売主自身が相場観を持つことです。会社の査定を受ける前に、無料で資産価値の目安を確認しておきましょう。

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査定額は不動産会社によって差が出ることがあります

同じ物件でも、その会社が得意なエリアか、手元にどんな成約事例と購入希望者を持っているかによって、出てくる査定額は変わることがあります。1社の金額だけを見て「これが相場だ」と受け取ってしまうと、あとから「もっと条件のよい売り方があったのでは」と感じる原因になりがちです。金額そのものより、なぜその価格になるのかという根拠の説明を並べて比べてみてください。

複数社へまとめて査定を依頼できるのが一括査定サービスです。利用は無料ですが、申し込むと複数の会社から連絡が来る点は先に知っておきたいところです。電話のやり取りが負担なら、申込時の要望欄に「メール希望」と書き添えておく方法があります。また、査定額はあくまで各社の売却予想価格であり、その金額での成約を保証するものではありません。

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この記事は不動産売買仲介15年の経験を持つ筆者が執筆しています。仲介手数料は個別の交渉によって異なります。複数の不動産会社を比較されることをおすすめします。


高すぎる査定に迷ったら、あわせて読みたい記事

査定額が妥当かどうかを見極めるには、査定そのものだけでなく、その後の契約や販売活動の仕組みまで知っておくと判断しやすくなります。この記事の内容と関わりの深いテーマを、次の記事でも解説しています。

くり返しになりますが、大切なのは査定額の高さそのものではなく、その金額に成約事例つきの根拠があるかです。金額の大小で会社を選ぶより、根拠を確かめるクセをつけておくと、後悔しにくくなります。


査定額の差が大きいのはなぜ?金額がばらつく4つの理由

「1社だけ高い」というより、そもそも各社の金額がバラバラで、どれを信じていいか分からない。一括査定を使った方から、これが一番多い相談です。

差が出ること自体は、実はおかしなことではありません。査定額は測定値ではなく、各社の判断だからです。ただ、差が生まれる理由は4種類あって、そのうち1つだけが「注意したほうがいい差」です。ここを分けて考えられると、金額の並びの見え方が変わります。

理由1|査定方法そのものが違う(机上査定と訪問査定)

一括査定の初回で返ってくる金額の多くは机上査定(簡易査定)です。住所・面積・築年数といった数字だけで算出するので、実物は見ていません。

一方の訪問査定は、日当たり、眺望、水回りの傷み具合、道路との高低差、越境の有無などを現地で確認したうえで出します。同じ物件でも、机上と訪問で金額が動くのはこのためです。

なので、机上査定の金額と訪問査定の金額を横に並べて比べても、条件がそろっていません。比べるなら、査定の種類をそろえてから。ここを揃えるだけで、意味のない差はかなり消えます。

理由2|会社ごとに、手元にある成約事例と買主が違う

査定でよく使われるのは取引事例比較法——近隣で実際に売れた事例を選び、面積・築年・階数・向きなどの違いを補正して金額を出す方法です。

ここで効いてくるのが、「どの事例を選ぶか」は担当者の判断だという点です。同じエリアでも、高く決まった事例を軸にするか、安く決まった事例を軸にするかで、結論は変わります。そのエリアでの取扱いが多い会社ほど手持ちの事例が細かく、補正の精度も上がりやすい、という差も出ます。

さらに、「今この価格帯で探している買主を自社で抱えているか」も金額に反映されます。具体的な購入希望者に心当たりがある会社は、その分だけ強気の数字を出せます。これは根拠のある高さなので、聞けばちゃんと説明が返ってきます。

理由3|想定している「売り方」が違う(仲介か、買取か)

意外と見落とされがちなのが、そもそも前提にしている売り方が各社で違うケースです。

買主を探して売る仲介と、不動産会社自身が買い取る買取では、金額の性質がまったく違います。買取は会社が転売リスクとリフォーム費用を負うぶん、一般に仲介で売れる価格より低くなる傾向があります。その代わり、買主を待たずに現金化しやすい、というのが買取の利点です。

つまり、極端に低い1社は「不誠実」なのではなく、買取価格を答えているだけかもしれない。逆も同じで、リフォーム後の再販を前提にした強気の数字が混ざることもあります。金額を並べる前に、「これは仲介の想定価格ですか、買取価格ですか」と一言確認しておくと、差の意味がはっきりします。

理由4|受注のための「上乗せ」が混ざっている

そして4つめが、記事の前半でお伝えした釣り査定——契約を取るための上乗せです。

理由1〜3の差には、それぞれ説明のつく根拠があります。注意したいのは、根拠を尋ねたときに理由1〜3のどれにも当てはまらない差です。「なぜ他社より高いのですか」に対して、事例でも買主でも売り方でもなく、意気込みの話が返ってくるとき——そこは慎重に見たほうがいい場面です。

逆に言えば、差そのものを怖がる必要はありません。差の理由を1社ずつ言葉にしてもらえば、残った1社だけが浮き上がってきます。金額の並びを見て混乱するより、この聞き分けのほうが早いです。

高い査定の会社をそのまま選ばないほうがいい、契約上の理由

ここまでは金額の話でしたが、実務でもう一つ知っておいてほしいのが、査定のあとに結ぶ「媒介契約」の仕組みです。高い査定に飛びつくリスクは、この契約の作りとセットで理解すると腹落ちしやすくなります。

媒介契約は、法律で期間と義務が決まっている

宅地建物取引業法は、媒介契約についていくつかのルールを定めています(以下は2026年8月時点の内容です)。

  • 有効期間は3か月以内(専任媒介・専属専任媒介/宅建業法34条の2第3項)。更新は売主からの申出があれば可能です。
  • レインズ(指定流通機構)への登録期限——専任媒介は契約日の翌日から7日以内、専属専任媒介は5日以内(いずれも会社の休業日を除く/宅建業法34条の2第5項、同施行規則15条の10)。
  • 業務状況の報告義務——専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上(宅建業法34条の2第9項)。

条文はe-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で誰でも確認できます。

「3か月」という単位が、高い査定と組み合わさるとどうなるか

ここで、前半の失敗パターンを思い出してください。相場より高い価格で売り出して反響がなく、下げて、また下げて——という流れです。

専任媒介・専属専任媒介を結ぶと、その期間は1社に販売活動を任せることになります。高すぎる価格でスタートすると、この3か月がほぼ丸ごと「反応を見る期間」で終わってしまうことがあります。相場感をつかむための時間としては、決して短くありません。

しかも、売り出しから時間が経つほどポータルサイト上での掲載期間は長くなり、買主側からは「売れ残り」に見えやすくなります。高い査定額そのものより、それによって失われる初動の数か月のほうが、結果に響きやすいというのが実務での感覚です。

ただし、専任媒介が悪いわけではありません

誤解のないように補足すると、専任媒介そのものは不利な契約ではありません。1社に任せるからこそ広告費をかけてもらいやすく、定期的な報告義務があるぶん進捗も見えやすい。一般媒介にはこの報告義務がありません。

問題なのは契約の種類ではなく、「根拠のない高値」と「1社専任」と「3か月」が重なることです。逆に言えば、価格に納得できていれば専任は有力な選択肢になります。

高すぎる査定を受け取ったときのチェックリスト

前半では「担当者に何を聞くか」を3つ挙げました。ここでは角度を変えて、受け取った査定書のどこを見ればいいかを整理します。口頭のやり取りより、書面のほうが差が出ます。

1. そもそも「査定書」が出てくるか

電話やメールで金額だけを伝えてくる会社もあります。まずは書面(PDFでも構いません)で出してもらえるかを確認してください。書面にすると根拠を書かざるをえないので、それだけでも精度が上がります。

2. 「査定根拠」の欄に何が書いてあるか

知っておいて損がないのが、宅建業法34条の2第2項です。宅建業者が価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定められています(2026年8月時点)。つまり、根拠を尋ねるのは遠慮すべきお願いではなく、法律が前提にしている手続きです。

査定書の根拠欄に、比較した事例の所在・面積・成約時期・成約価格と、そこからの補正内容が書かれていれば十分です。「エリアの人気」「相場上昇」といった一般論しかない場合は、「この金額の根拠になった事例を3件教えてください」と具体的に頼んでみてください。

3. その事例は「成約価格」か、それとも「売出価格」か

ここが実は一番の落とし穴です。

  • 成約価格 = 実際に売買が成立した価格。レインズなどで確認できます。
  • 売出価格 = ポータルサイトに今出ている「希望価格」。売れた価格ではありません。

売出価格をそのまま並べれば、査定額はいくらでも高く見せられます。しかも売主側からは、根拠が並んでいるように見えてしまう。「この事例は成約価格ですか、売出価格ですか」——この一問は、高すぎる査定の見分けにかなり効きます。

4. 査定価格に「幅」が示されているか

査定は予測なので、本来は幅を持ちます。「3,800万円」とピンポイントで書かれているより、「3,450万〜3,650万円、成約想定は3,500万円前後」と幅で示されているほうが、実務的には誠実です。

1点の数字しか出てこないときは、「下限はいくらまで見ていますか」と聞いてみてください。ここで急に金額が下がるなら、その上限は営業上の数字だったということになります。

5. 算出に使った方法・マニュアルを言えるか

多くの不動産会社は、公益財団法人不動産流通推進センターが提供する価格査定マニュアル(マンション・戸建て・土地)や、それに準じた社内基準を使って査定額を算出しています。

「どんな方法で出した金額ですか」と聞いて、取引事例比較法、原価法、収益還元法といった手法名や、使ったマニュアル名がすっと出てくるか。ここは担当者の実務レベルがそのまま出るところです。マニュアルを使っていること自体が正解というわけではありませんが、算出の道筋を説明できない金額は、信頼の置きどころがありません。

チェックリストまとめ

  • 査定書が書面(PDF可)で出てくるか
  • 査定根拠の欄に、比較事例と補正内容が具体的に書かれているか
  • その事例は成約価格か(売出価格を根拠にしていないか)
  • 査定価格が上限・下限の幅で示されているか
  • 算出方法・使用したマニュアルを説明できるか
  • その金額は仲介の想定価格か、買取価格か

全部そろっている必要はありません。ただ、金額が突出して高いのに、このうち3つ以上が曖昧——という会社があれば、契約を急がずに一度持ち帰る場面だと思います。

査定額の差についてよくある質問

査定額に数百万円の差があるのは異常ですか?

金額の大きさだけでは判断できません。上でお伝えしたとおり、机上査定と訪問査定が混ざっている、仲介価格と買取価格が混ざっている、というだけで差は簡単に開きます。まず条件をそろえてから比べ直すのが先です。そのうえで、条件をそろえてもなお1社だけが離れていて、その理由を事例で説明できないなら、そこは慎重に見る場面だと考えています。差の幅そのものより、説明がつくかどうかで見てください。

訪問査定を受けたら金額が下がりました。だまされたのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。机上査定は数字だけで出すので、現地を見て設備の劣化や周辺環境が分かった結果、下方修正されること自体はよくあります。大事なのは、下がった理由を具体的に説明できるかです。「水回りの交換が必要で、その分を見ました」のように項目で示されるなら納得できる話です。逆に、理由が語られないまま契約直前で下がるようなら、最初の金額の出し方に疑問を持っていいと思います。

査定書に根拠が書かれていません。要求してもいいですか?

問題ありません。宅建業法34条の2第2項で、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにすることが業者側に求められています(2026年8月時点)。遠慮する必要はまったくなく、「根拠になった成約事例を見せてください」と伝えるだけで大丈夫です。営業していた立場から言うと、この質問をされて困る担当者は、そもそも根拠を持っていません。聞きにくい質問ではなく、当たり前の確認だと思ってください。

高い査定の会社と契約してしまいました。もう変えられませんか?

変更の余地はあります。専任媒介・専属専任媒介の有効期間は3か月以内と定められており(宅建業法34条の2第3項、2026年8月時点)、更新は売主からの申出が前提です。つまり期間満了のタイミングで、他社に切り替えることも、契約形態を見直すこともできます。期間の途中でも、契約書に定められた解除の条件を確認したうえで相談は可能です。ただし、広告費などの実費を請求されるケースもあるため、まずは手元の媒介契約書の条項を読み、必要なら宅建業免許を出している自治体の相談窓口に確認するのが安全です。

査定額の差は、それ自体が悪いものではありません。差の理由を一つずつ言葉にしてもらえるかどうか——結局はそこに行き着きます。高い金額を出した会社を疑うためではなく、納得して任せる相手を選ぶために、根拠を確かめてみてください。

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この記事を書いた人

鈴木 悠平(宅地建物取引士・2級FP技能士)

銀行系不動産会社で13年、不動産エージェントとして2年、通算15年以上売買仲介に携わり、新潟・八王子/府中・池袋など特性の異なるエリアで、売主・買主双方の立場から半期100件以上のご相談に対応してきました。「知らないだけで損をしてしまう」ケースを現場で数多く見てきた経験から、不動産売買で損をする人を一人でも減らすことを目指し、当サイト「イエノミカタ」を運営しています。

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