結論:乗降客数と地価は「素では」ほぼ連動しない
駅の利用者が多いほど、その街の地価は高い。多くの人がそう感じているのではないでしょうか。今回、京王線・相模原線・高尾線・競馬場線・動物園線のうち東京都多摩地域にある39駅について、京王電鉄公表の駅別一日平均乗降人員(2025年度)と、令和8年(2026年)地価公示の住宅地価格を突き合わせてみました。結果、乗降人員と住宅地地価の素の相関係数は0.34。関係はあるような気もするけれど弱い、というレベルで、予想は外れました。ただし外れた先に、もっと使える法則が見つかりました。多摩の住宅地価をまず左右していたのは、駅の賑わいではなく「新宿からの距離」だったのです。
この記事のデータと集計条件
乗降人員は京王電鉄公表の駅別一日平均乗降人員(2025年度)、地価は国土交通省の令和8年地価公示(国土数値情報L01、価格時点2026年1月1日)を使用しました。駅別の地価は、地価公示の属性に公式に入っている「最寄駅名」を使い、当該駅を最寄りとする住宅地標準地の公示価格の中央値としています。住宅地標準地がない高尾山口は地価分析の対象外、標準地1〜2地点の駅は参考値扱いです。なお地価公示は1月1日時点の標準的な土地の価格であり、実際の取引価格(実勢価格)や査定額そのものではありません。また本記事は特定の駅・エリアへの投資をおすすめするものではありません。
京王線・多摩39駅の乗降客数ランキングTOP10
1位 調布 122,398人/2位 分倍河原 88,516人/3位 府中 84,102人/4位 京王多摩センター 80,472人/5位 仙川 72,103人/6位 聖蹟桜ヶ丘 59,233人/7位 南大沢 53,823人/8位 高幡不動 50,998人/9位 京王八王子 48,378人/10位 つつじヶ丘 41,967人。注目は2位の分倍河原です。JR南武線との乗り換え駅で、多摩を代表する街・府中を乗降人員では上回ります。この駅があとで大事な伏線になります。

ところが地価ランキングは順位が入れ替わる
駅別の住宅地公示価格(中央値)で並べ直すと、1位は府中で1平米あたり59万5,000円。2位は国領45万9,000円、3位は仙川45万8,500円です。乗降客数1位の調布は39万1,500円で9位。10万人以上が使う調布より、3万人台の国領のほうが高いのです。乗降5万人台の南大沢は11万5,500円で下位圏でした(丘陵地の駅は駅から遠い標準地が中央値を引き下げる点に注意が必要です)。

住宅地価のばらつきの約79%は新宿からの距離で説明できた
横軸を乗降客数から「新宿からの距離」に差し替えると、点はきれいな右肩下がりに並びます。今回対象とした39駅では、住宅地価のばらつきの約79%を新宿からの距離だけで説明できました。目安として、新宿から1km遠ざかるごとにおよそ5%ずつ安くなる計算です。つまり多摩の住宅地の値段は、まず都心からの距離で大枠が形づくられ、駅の賑わいはその後の話でした。

駅からの距離は約3倍効く
標準地単位の分析では、新宿から1km遠ざかると約5%、最寄駅から1km遠ざかると約16%の下落。2つの距離だけで83.5%を説明できました。係数を割り算すると、駅から1km離れることは、新宿からさらに約3.4km遠ざかるのと同程度、価格を下げる方向に効きます。さらに駅から2km以内の徒歩圏に限ると、駅距離の効きはいっそう強まります。駅徒歩10分と20分の差は、徒歩30分と40分の差よりずっと高くつく。駅近物件が強気に売れる理由は、公的データにもはっきり表れていました。なお、新宿距離は直線距離・駅距離は道路距離で物差しが異なる点、今回の対象範囲外への当てはめはできない点はご留意ください。
立地を揃えると「駅力」が見える
では駅の利用者数は地価に関係ないのかというと、実はあります。新宿からの距離と駅からの距離という2つの立地条件から予測される価格と、実際の価格との差(立地調整後プレミアム。当分析の推計値で、公的指標ではありません)を駅ごとに見ると、利用者が多い駅ほど予測より高い傾向がはっきり出ました。相関係数は0.52。「まず立地で大枠が決まり、同じ立地条件なら駅力の分だけ上乗せされる」——これが今回のいちばんの結論です。上乗せの筆頭は府中で、立地から予測される価格より+80%。駅前再開発とけやき並木の商業集積が住宅地の価格に乗っている形です(府中を除いて計算し直しても傾向は変わりませんでした)。一方、乗降人員で府中を上回る分倍河原は、地価公示の商業地の調査地点(標準地)が0地点。府中駅周辺の5地点(中央値76万円/m2)と対照的です。誤解のないように補足すると、これは分倍河原に商業地が存在しないという意味ではなく、国が商業地の代表として調査する地点が選ばれていない、という意味です。それでも、乗降人員ではわずか5%差の2駅で駅前の評価がここまで違う。分倍河原の利用者の多くは改札の外に出ない乗り換えの人であり、「駅の利用者数=街の力」ではないことを示す好例と言えます。

もうひとつ、駅の数字だけでは見えないものがあります。多摩ニュータウンの諏訪・永山地区のように、昭和に大規模団地として造られた街は、その後の建替えで住戸数も街の姿も変わりました。6団地の60年を追った記事が昭和の団地は60年後どうなった?多摩6団地の建替えから考える実家の選択です。
全39駅データ一覧(乗降人員×住宅地公示地価)
乗降人員は2025年度の1日平均(京王電鉄公表)、地価は令和8年地価公示の住宅地標準地(最寄駅別)の中央値です。標準地数が少ない駅の地価は参考値としてご覧ください(高尾山口は住宅地標準地がないため地価は「—」)。
| 駅名 | 乗降人員(人/日) | 前年比 | 住宅地価中央値 | 5年変動 | 標準地数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 仙川 | 72,103 | +2.0% | 45.9万円 | +28.1% | 6 |
| つつじヶ丘 | 41,967 | +3.3% | 37.8万円 | +17.8% | 7 |
| 柴崎 | 16,557 | +1.5% | 41.4万円 | +20.2% | 6 |
| 国領 | 32,704 | -0.9% | 45.9万円 | +21.3% | 3 |
| 布田 | 13,741 | +1.8% | 36.5万円 | +14.5% | 4 |
| 調布 | 122,398 | +3.2% | 39.1万円 | +27.3% | 14 |
| 西調布 | 16,839 | +1.1% | 38.5万円 | +28.5% | 4 |
| 飛田給 | 28,350 | +6.2% | 42.1万円 | +24.9% | 3 |
| 武蔵野台 | 22,711 | +1.6% | 35.4万円 | +18.3% | 2 |
| 多磨霊園 | 13,050 | +1.6% | 40.5万円 | +25.6% | 2 |
| 東府中 | 21,804 | +9.3% | 35.6万円 | +25.9% | 4 |
| 府中 | 84,102 | +3.2% | 59.5万円 | +30.9% | 4 |
| 分倍河原 | 88,516 | +3.0% | 39.0万円 | +22.2% | 4 |
| 中河原 | 25,748 | +3.8% | 31.7万円 | +14.1% | 5 |
| 聖蹟桜ヶ丘 | 59,233 | +1.7% | 16.8万円 | +5.2% | 15 |
| 百草園 | 7,741 | +4.1% | 22.2万円 | +12.2% | 3 |
| 高幡不動 | 50,998 | +2.3% | 24.7万円 | +14.9% | 3 |
| 南平 | 9,842 | +0.8% | 20.1万円 | +14.0% | 4 |
| 平山城址公園 | 7,821 | +1.1% | 16.1万円 | +11.3% | 4 |
| 長沼 | 3,928 | +2.3% | 16.9万円 | +10.5% | 4 |
| 北野 | 20,810 | +1.6% | 13.7万円 | +11.2% | 6 |
| 京王八王子 | 48,378 | +1.2% | 18.9万円 | +20.6% | 4 |
| 京王片倉 | 5,208 | +1.3% | 14.2万円 | +7.9% | 2 |
| 山田 | 5,331 | +2.6% | 14.3万円 | +8.4% | 2 |
| めじろ台 | 14,326 | +1.0% | 12.0万円 | +9.3% | 7 |
| 狭間 | 8,284 | +5.9% | 13.3万円 | +9.9% | 1 |
| 高尾 | 23,171 | -0.3% | 8.2万円 | +6.5% | 21 |
| 高尾山口 | 11,031 | +3.2% | — | — | 0 |
| 府中競馬正門前 | 2,578 | +5.6% | 44.7万円 | +29.2% | 1 |
| 多摩動物公園 | 3,930 | -1.9% | 11.0万円 | +5.8% | 1 |
| 京王多摩川 | 15,400 | +2.8% | 34.9万円 | +18.7% | 1 |
| 京王よみうりランド | 15,373 | +3.7% | 29.4万円 | +16.5% | 2 |
| 稲城 | 19,637 | +2.0% | 24.7万円 | +14.9% | 9 |
| 若葉台 | 23,616 | -1.2% | 24.9万円 | +18.2% | 2 |
| 京王永山 | 40,430 | +0.8% | 19.1万円 | +2.3% | 8 |
| 京王多摩センター | 80,472 | +2.1% | 20.7万円 | +11.3% | 5 |
| 京王堀之内 | 29,491 | +1.8% | 19.8万円 | +16.7% | 7 |
| 南大沢 | 53,823 | -0.2% | 11.6万円 | +11.2% | 4 |
| 多摩境 | 20,691 | +1.2% | 12.8万円 | +10.3% | 3 |
よくある質問
京王線の多摩地域で乗降客数が最も多い駅はどこですか?
京王電鉄公表の2025年度駅別一日平均乗降人員では、調布が122,398人で1位です。2位は分倍河原(88,516人)、3位は府中(84,102人)。分倍河原はJR南武線との乗り換え駅で、乗換流動を含む点に注意が必要です。
乗降客数が多い駅ほど地価は高いのですか?
素の相関は弱く(相関係数0.34)、そのままでは連動するとは言えません。今回の39駅では住宅地価のばらつきの約79%を新宿からの距離だけで説明できました。ただし立地条件(新宿距離・駅距離)を揃えて比べると、利用者の多い駅ほど地価に上乗せがある傾向が確認できました(相関係数0.52)。
分倍河原の「商業地の調査地点ゼロ」とはどういう意味ですか?
今回使用した地価公示データで、最寄駅が分倍河原駅となる商業地の標準地(調査地点)が確認できなかった、という意味です。分倍河原に商業地が存在しない、商業力がないという意味ではありません。国が商業地の代表として調査する地点が選ばれていない、ということです。
この分析は駅選びや投資の参考にしていいですか?
本記事は公的データに基づく情報提供であり、特定の駅・エリアへの投資や購入・売却を推奨するものではありません。地価公示は実際の取引価格そのものではなく、相関は因果を意味しません。個別の判断は不動産や税務の専門家にご相談ください。
ご自身の最寄り駅の数字が気になった方は、全39駅のデータと出典を本記事の一覧表でご確認ください。住みたい街・売りたい家の周辺環境を調べたい方は、無料の「まちかどレポート」(check.ienomikata.jp)もご利用いただけます。
本記事の数値はすべて公表データに基づく2026年8月時点の集計であり、将来の地価動向を保証するものではありません。売却や購入など個別の判断は、専門家にご相談ください。
出典・調査方法
- 京王電鉄「駅別一日平均乗降人員」(2025年度)
- 国土交通省「令和8年地価公示」(国土数値情報L01・価格時点2026年1月1日)
- 国土数値情報N02(鉄道・駅位置)
駅別の地価は、地価公示の「最寄駅名」属性が当該駅である住宅地標準地の公示価格中央値です。相関・回帰分析は住宅地標準地3地点以上の28駅を対象としています。


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