確定申告が必要なケース・不要なケースを表で確認
家を売却したときに確定申告が必要かどうかは、「利益が出たか」「特例を使うか」の2つの軸で決まります。感覚的に「儲かっていなければ申告しなくていい」と思われがちですが、特例を使う場合はこの限りではありません。まずは自分がどのケースに当てはまるのか、大きな枠組みから確認していきましょう。譲渡所得税の仕組み全体については、譲渡所得税の仕組みと備え方でも詳しく解説しています。

利益(譲渡所得)が出た場合は原則申告が必要
譲渡所得とは、売却価格から取得費(購入時の価格や諸費用)と譲渡費用(仲介手数料や印紙代など)を差し引いた利益のことです。この譲渡所得がプラスになった場合は、原則として売却した翌年に確定申告をする必要があります(国税庁タックスアンサーNo.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」)。給与所得者で年末調整を受けている方でも、不動産の譲渡所得は分離課税として別途申告が必要になる点に注意しましょう。
特例を使うなら、利益がゼロでも申告が必要
マイホーム(居住用財産)を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特別控除など、さまざまな特例が用意されています(国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」)。ただし、これらの特例は確定申告をすることが適用の条件です。特例を使った結果、納める税金がゼロになる場合でも、申告そのものは必要になります。「税金がかからないなら申告しなくていい」と誤解して申告を省略すると、特例が適用されず、本来ゼロだったはずの税額が発生してしまう可能性があるため注意が必要です。
損失で特例も使わないなら原則不要(ただし届け出た方が得なケースも)
売却価格が取得費・譲渡費用の合計を下回り、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)になった場合は、原則として確定申告の義務はありません。ただし、一定の要件を満たすマイホームの買い替えなどでは、譲渡損失をほかの所得と損益通算し、控除しきれない分を翌年以降に繰り越せる特例もあります。この特例を使うと給与所得などにかかる税金の還付を受けられる場合があるため、赤字だからと申告不要と決めつける前に、自分のケースで特例が使えないか一度確認しておくと安心です。
| ケース | 申告の要否 |
|---|---|
| 売却で利益(譲渡所得)が出た | 必要 |
| 利益がゼロ・少額でも特例(3,000万円控除など)を使いたい | 必要 |
| 売却が赤字で、特例も使わない | 原則不要 |
| 売却が赤字だが、損益通算・繰越控除の特例を使いたい | 必要 |
あくまで一般的な整理であり、実際の要否はご自身の売却状況によって変わります。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認しましょう。
申告の時期・方法・流れ
確定申告が必要と分かったら、次に気になるのが「いつ」「どこで」「どう進めるか」でしょう。ここでは申告の時期と方法、そして申告書ができあがるまでの流れを整理します。

申告期間は売った翌年の2月16日〜3月15日が原則
不動産を売却した年の翌年、原則として2月16日から3月15日までが確定申告の期間です。3月15日が土日にあたる場合は、翌平日が期限になります。たとえば令和7年分(2025年分)の確定申告は、令和8年(2026年)2月16日(月)から3月16日(月)までとされています(3月15日が日曜のため翌営業日にずれています)。今年家を売却した方は、翌年の申告期間を早めにカレンダーに入れておくと安心です(2026年7月時点の情報)。
申告方法はe-Tax・郵送・税務署窓口の3通り
申告方法は主に3通りあります。ひとつはマイナンバーカードを使ってオンラインで完結できる「e-Tax」、ふたつめは申告書を印刷して税務署へ郵送する方法、三つめは税務署の窓口へ直接持参する方法です。e-Taxは24時間受け付けており、還付も比較的早く処理される傾向があるとされています。窓口での相談を希望する場合は、確定申告期間中は混み合いやすいため、早めの来署予約をおすすめします。
計算→内訳書作成→申告書への転記という流れで進める
譲渡所得の申告は、次の順番で書類を組み立てていきます。①売却価格・取得費・譲渡費用をもとに譲渡所得の金額を計算する、②その内容を「譲渡所得の内訳書(土地・建物用)」にまとめる、③内訳書の内容を確定申告書の「第三表(分離課税用)」に転記する、④第三表の内容を踏まえて申告書の第一表・第二表を作成する、という流れです。順番を意識しておくと、必要書類を集める段階でも迷いにくくなります。
確定申告書等作成コーナーを使うと迷いにくい
初めて譲渡所得の申告をする方には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の利用がおすすめです。画面の案内に沿って売却価格や取得費などの金額を入力していくだけで、譲渡所得の内訳書から申告書第三表・第一表・第二表まで作成でき、そのままe-Taxで提出することもできます。手書きで一から作成するより、入力ミスや計算間違いを防ぎやすいというメリットがあります。
確定申告の準備を進める前に、そもそも今の家がどのくらいの資産価値なのか、売却価格の見立てが合っているか気になる方もいらっしゃるでしょう。無料で資産価値の目安を確認できるサービスもありますので、申告書を作成する前の参考情報としてご活用ください。
必要書類チェックリスト
譲渡所得の申告では、集める書類が多く、直前になって慌てがちです。ここでは基本の書類と、特例を使う場合に追加で必要になる書類を整理します。

誰にでも必要な基本書類
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
- 今回の売買契約書の写し(売却時)
- 購入時の売買契約書の写し(取得費を証明するため)
- 仲介手数料・印紙代・測量費など譲渡費用の領収書
- 売却した不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- マイナンバーが分かる書類・本人確認書類
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
取得費が分かる書類がないときの対応
実家を相続した場合など、購入当時の売買契約書が見つからず、取得費が分からないケースは珍しくありません。この場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」という考え方を使うことができます(国税庁タックスアンサーNo.3258「取得費が分からないとき」)。ただし概算取得費を使うと、実際の取得費より低く計算され、税負担が重くなりやすい点には注意が必要です。取得費が不明な場合の考え方は、取得費が分からないときの概算取得費の考え方で詳しく解説しています。
特例を使う場合に追加で必要になる書類
3,000万円特別控除など居住用財産の特例を使う場合は、上記の基本書類に加えて、売却した不動産の所在地の市区町村が発行する「戸籍の附票の写し」や、住民票の除票(転居してから売却するケースなど)が必要になることがあります。これらは特例の種類や個別の状況によって求められる書類が異なるため、確定申告書等作成コーナーの案内や、税務署の窓口で事前に確認しておくと二度手間になりません。
申告しないとどうなるか/税理士に依頼する場合の費用目安
「申告が必要なのは分かったけれど、忙しくてつい後回しにしてしまった」という場合、どうなるのでしょうか。ここでは申告をしなかった場合に起こりうることと、自分で対応するのが難しいと感じたときの相談先について整理します。

無申告加算税が課される場合がある
申告が必要な状態のまま期限を過ぎてしまうと、期限後申告として扱われ、無申告加算税が課される場合があります(国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」)。税務署からの調査の事前通知よりも前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額のおおむね5%相当が目安とされていますが、通知を受けたあとの申告や、税務署の調査によって申告した場合は、より高い税率が適用されることがあります。なお、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、期限内申告と同様に税額を全額納付するなど一定の要件を満たせば、無申告加算税がかからない場合もあるとされています。
延滞税も別途発生し得る
無申告加算税とは別に、納付が遅れた期間に応じて延滞税もかかる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.9205「延滞税について」)。延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて計算されるため、申告や納付が遅れるほど負担が増えていく仕組みです。「申告を忘れていた」と気づいた時点で、できるだけ早く申告・納付を済ませることが、負担を抑えるうえで大切です。
税理士に依頼する場合の費用目安
譲渡所得の計算や特例の適用要件は複雑になりやすく、「自分で申告するのは不安」と感じる方も少なくありません。不動産の譲渡所得に関する確定申告を税理士に依頼する場合、報酬の目安は数万円台から十数万円程度とされることが多いですが、売却額や特例の有無、必要な計算の複雑さによって幅があります。正確な費用は税理士事務所によって異なるため、複数の事務所に見積もりを確認することをおすすめします。用語の意味から確認したい方は、不動産用語集もあわせてご活用ください。
※本記事の申告期限・必要書類・加算税などの内容は2026年7月時点の国税庁の一般的な情報に基づくものです。税制は改正されることがあり、個別の申告要否・税額・必要書類は売却状況によって異なります。正確な内容は国税庁のウェブサイトや、お近くの税務署、税理士にご確認ください。
まとめ:家の売却後は「利益が出たか」「特例を使うか」で確定申告の要否を判断
最後に、この記事の要点を整理します。
- 家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、原則として売却した翌年に確定申告が必要(2026年7月時点)
- 3,000万円特別控除などの特例を使う場合は、税額がゼロになっても確定申告をしないと特例が適用されない
- 売却が赤字で特例も使わない場合は原則申告不要だが、損益通算・繰越控除の特例を使えば還付を受けられる場合もある
- 申告期間は原則、翌年の2月16日〜3月15日。譲渡所得の内訳書・売買契約書の写し・登記事項証明書などを早めに準備しておくと安心
- 申告をしないと無申告加算税・延滞税が課される場合があるため、期限内の申告が難しそうな場合は早めに税務署や税理士に相談を
確定申告は複雑に感じられるかもしれませんが、必要書類を早めに揃え、国税庁の確定申告書等作成コーナーなどを活用すれば、一つずつ手順を追って準備を進められます。個別の税額や特例の適用可否について不安がある場合は、税理士や税務署への相談も検討してみてください。
確定申告の準備とあわせて、いま所有している家や実家の資産価値がどのくらいか、一度目安を確認しておくと今後の判断材料になります。


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