「売れた金額」=「手取り」ではない
マンションを3,000万円で売却しても、手元に3,000万円が残るわけではありません。
私は不動産売買仲介の営業マンとして13年間働いてきました。売却相談の場で「え、こんなにかかるんですか?」と驚くお客さんを何十人も見てきました。
費用を把握していないと、住み替え資金が足りなくなったり、ローン残債が返せなくなるリスクがあります。
この記事では、マンション売却でかかる費用と税金を一つずつ解説し、最後に手取り額のシミュレーション方法をお伝えします。
マンション売却でかかる費用一覧

まず全体像を把握しましょう。かかる費用は大きく分けて5つです。
| 費用項目 | 目安金額 | 必須/場合による |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+税 | 必須 |
| 印紙税 | 1万〜3万円 | 必須 |
| 抵当権抹消費用 | 1〜2万円 | ローン残債ありの場合 |
| ローン一括返済手数料 | 0〜3万円 | ローン残債ありの場合 |
| 譲渡所得税 | 利益に対して約20〜39% | 利益が出た場合のみ |
それぞれ詳しく見ていきます。
① 仲介手数料|最も大きな費用
売却にかかる費用の中で最も大きいのが仲介手数料です。
計算式: 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
| 売買価格 | 仲介手数料(税込) |
|---|---|
| 2,000万円 | 約72.6万円 |
| 3,000万円 | 約105.6万円 |
| 4,000万円 | 約138.6万円 |
| 5,000万円 | 約171.6万円 |
支払いタイミングは、契約時に半額・決済時に半額が一般的です。
※仲介手数料の詳しい解説は「不動産の仲介手数料はいくら?相場と値引き交渉のコツ」で解説しています。
② 印紙税|契約書に貼る収入印紙
売買契約書に貼る印紙の税金です。契約金額によって変わります。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30,000円 |
※上記は軽減税率適用後の金額です。
金額は小さいですが、忘れると契約当日に慌てるので事前に用意しておきましょう。
③ 抵当権抹消費用|ローンが残っている場合
住宅ローンが残っているマンションを売る場合、抵当権(銀行の担保権)を外す手続きが必要です。
費用の内訳:
- 登録免許税:不動産1つにつき1,000円(土地+建物で2,000円)
- 司法書士報酬:1〜1.5万円
- 合計:約1〜2万円
手続きは司法書士が行うので、売主は特にやることはありません。決済日に自動的に処理されます。
④ ローン一括返済手数料
住宅ローンを途中で一括返済する際に、金融機関に支払う手数料です。
- ネット銀行: 無料〜数千円
- メガバンク: 1〜3万円
- 地方銀行: 1〜5万円
金融機関によって異なるので、事前に確認しておきましょう。ローン残高と返済予定日を伝えれば、金融機関が計算してくれます。
⑤ 譲渡所得税|利益が出たら確定申告が必要
マンションを売って「利益(譲渡所得)」が出た場合、税金がかかります。
譲渡所得の計算式:
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費: 購入価格 + 購入時の諸費用 − 減価償却費
- 譲渡費用: 仲介手数料 + 印紙税など
税率は所有期間で大きく変わります:

| 所有期間 | 区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 約39.63% |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 約20.315% |
※所有期間は「売却した年の1月1日時点」で計算。購入から5年経っていても、1月1日時点で5年以下なら短期扱いになるので注意。
マイホーム売却の「3,000万円特別控除」
自分が住んでいたマンション(マイホーム)を売る場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。
つまり、利益が3,000万円以下であれば税金はゼロです。
適用条件:
- 自分が住んでいた物件であること
- 住まなくなってから3年以内に売ること
- 前年・前々年にこの特例を使っていないこと
多くの方がこの特例で非課税になりますが、確定申告は必要です。確定申告をしないと特例が適用されません。
手取りシミュレーション|3,000万円で売却した場合

実際に計算してみましょう。
前提条件:
- 売却価格:3,000万円
- ローン残債:1,500万円
- 10年前に2,500万円で購入(マイホーム)
- 購入時の諸費用:200万円
かかる費用:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 仲介手数料(税込) | 105.6万円 |
| 印紙税 | 1万円 |
| 抵当権抹消費用 | 1.5万円 |
| ローン一括返済手数料 | 2万円 |
| 費用合計 | 約110万円 |
譲渡所得の計算:
- 取得費:2,500万円 + 200万円 − 減価償却費(約340万円)= 約2,360万円
- 譲渡費用:105.6万円 + 1万円 = 106.6万円
- 譲渡所得:3,000万円 − 2,360万円 − 106.6万円 = 約533万円
- 3,000万円特別控除を適用 → 課税なし
手取り額:
3,000万円 − 1,500万円(ローン返済)− 110万円(費用)= 約1,390万円
もし費用を把握せず「3,000万で売れたら1,500万残る」と思っていたら、110万円のギャップに驚くことになります。
売却前に必ずやるべき「手取り計算」
上のシミュレーションを自分のケースに当てはめてみてください。
手順:
- 一括査定で「いくらで売れそうか」を把握する
- ローン残高を確認する(ローン返済表or金融機関に問い合わせ)
- 各費用を概算で計算する
- 売却価格 − ローン残債 − 費用 = 手取り額
この計算を売却活動を始める前にやっておくことが大切です。「思ったより残らない」と分かれば、売り出し価格の戦略が変わります。
確定申告を忘れずに
利益が出ていなくても、3,000万円特別控除を使う場合は確定申告が必要です。
申告時期: 売却した翌年の2月16日〜3月15日
必要書類:
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書のコピー(売却時・購入時の両方)
- 登記事項証明書
- 各費用の領収書
売却時の書類は捨てずにすべて保管しておきましょう。特に購入時の売買契約書は、取得費の証明に必須です。紛失すると取得費が売却価格の5%とみなされ、税金が跳ね上がる可能性があります。
まとめ|マンション売却の費用と税金で損しないために
この記事のポイント:
- 仲介手数料が最大のコスト。3,000万の物件なら約105万円
- 印紙税・抵当権抹消・ローン返済手数料は合計数万円
- 譲渡所得税は所有5年超なら約20%、5年以下なら約40%
- マイホームなら3,000万円特別控除で非課税になるケースが多い
- 確定申告は利益の有無に関わらず必要(特例を使う場合)
- 売却前に「手取りシミュレーション」を必ずやる
売却で損しない第一歩は、まず自分のマンションの価値を正しく知ることからです。
この記事は不動産売買仲介13年の経験を持つ筆者が執筆しています。税金の詳細は税理士にご確認ください。個別の状況によって最適解は異なりますので、複数の専門家に相談されることをおすすめします。


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