「実家が古い団地なのだけれど、この先どうなるのだろう」——築50年、60年を超えた集合住宅を持つ方から、よく聞く不安です。建替えられるのを待つべきなのか、それとも早めに手放すべきなのか。判断の材料がないまま、年月だけが過ぎてしまうこともあります。この記事では、東京・多摩地域で1950年代から70年代にかけて建てられた6つの団地が、60年後のいまどうなっているのかを、公的資料で確認できる範囲でたどります。数字を並べると、「建替えは起こりうるけれど、時間の桁が違う」という現実が見えてきます。ご自身の実家をどうするか考える、ひとつの物差しにしてみてください。

この記事から先の地図
団地の話は、読む方の立場によって知りたいことがかなり違います。ご自身に近いところから読み進めてください。
- 実家の団地をどうするか決めたい方:まず団地は誰が持っているかで話が変わるで権利のかたちを確かめ、「建替えを待つ」判断は妥当でしょうかへ進んでください。手続きの順番は実家の処分は何から始めるか、相続したあとの出口の比べ方は相続した不動産をどうするかで整理しています。
- 団地を買う・住むことを考えている方:買う側から見た団地へ。中古マンション一般の確認点は中古マンション購入の注意点と中古マンション内見チェックリスト、耐震の用語は旧耐震で確認できます。
- 特定の団地のいまを知りたい方:この記事では多摩地域の6団地を扱っています。団地ごとの記事は、確認できた公的資料がそろったものから順に追加していく予定です。
昭和の団地は、60年後に3つに分かれていた
最初に結論からお伝えします。同じころに、同じような規模で造られた団地でも、60年後の姿は一様ではありませんでした。多摩地域の6団地を公的資料でたどると、進み方が大きく3つに分かれます。
| いまの状態 | 団地 | 様子 |
|---|---|---|
| 建替えがほぼ終わった | 多摩平(日野市)/ひばりが丘(西東京市・東久留米市) | 古い住棟の大部分が建て替わり、UR賃貸は集約。空いた土地に民間住宅や商業施設が入った |
| 建替えの途中 | 都営村山(武蔵村山市)/多摩川住宅(調布市・狛江市) | 新しい棟と昭和の棟が同じ敷地に並ぶ。村山の後期計画は2030年度まで |
| これからの姿を描く段階 | 木曽山崎(町田市)/諏訪・永山(多摩市) | 街の将来像を描き直したところ。諏訪・永山は新旧の住棟が同居 |
つまり「昭和の団地はこうなる」と一括りにはできません。ご自身の実家がどの段階にあるかで、取れる選択肢も、残された時間も変わってきます。
団地は誰が持っているかで話が変わる(都営・公社・UR・分譲)
ここから先を読むうえで、最初に確かめておきたいことがあります。その団地が「賃貸」なのか「分譲」なのか、そして賃貸ならどこが運営しているのか、です。よく似た見た目の住棟でも、ここが違うと売買も相続も建替えも、まったく別の話になります。
| 種類 | 運営・所有 | 住戸の権利 | 名義人が亡くなったとき |
|---|---|---|---|
| 都営住宅 | 東京都 | 賃貸(借りている) | 所有権のように自動で引き継がれるわけではなく、同居していた親族が要件を満たす場合の「使用承継」か、契約終了の手続きの話になります |
| 公社住宅(JKK東京) | 東京都住宅供給公社 | 賃貸(過去に分譲された住戸もあります) | 賃貸なら上と同じ考え方です。分譲された住戸であれば、下の「分譲団地」に当たります |
| UR賃貸住宅 | UR都市機構 | 賃貸 | 賃貸借契約の承継または終了の手続きが必要になります |
| 分譲団地 | 各区分所有者(管理組合があります) | 所有(区分所有権) | 相続財産として、登記の名義変更などの手続きが必要になります |
間違えやすいのは、同じ地区のなかで運営主体が分かれているケースです。町田市の木曽山崎団地地区では、木曽側を東京都住宅供給公社(JKK東京)、山崎側をUR都市機構が運営しており、外から見ただけでは区別がつきません(町田市「木曽山崎団地地区 団地プロファイル」2026年8月確認)。「団地はぜんぶ都営だと思っていた」という思い違いは、実務でもよく出てきます。
建替えの決まり方も分かれます。分譲団地は区分所有者の合意(管理組合の決議)が必要で、この記事の後半で見る諏訪二丁目住宅のように、合意づくりに長い年月がかかることがあります。一方、賃貸の団地は運営主体が計画を立てて進めるため、住んでいる方は決議に加わるのではなく、案内を受け取る立場になります。どちらが良い悪いという話ではなく、関われる範囲と、待つ時間の性質が違うということです。
実家が賃貸なのか分譲なのかがはっきりしない場合は、手元にあるのが賃貸借契約書か、登記事項証明書かで見当がつきます。分譲であれば登記があり、賃貸であれば契約書があります。
※ 使用承継の要件(同居期間・収入・ほかに持ち家があるかなど)は、運営主体や自治体ごとに定めが異なり、改定されることもあります。ここでの説明は2026年9月時点で公表されている内容の一般的な整理です。ご自身のケースについては、契約先の窓口(東京都住宅供給公社・UR都市機構・お住まいの自治体の住宅担当課など)に必ずご確認ください。
建替えが終わると、戸数はどう変わるのか
建替えと聞くと「同じ場所に同じ規模で建て直す」と想像しがちですが、実際は違うことが多いようです。完了した2つの団地を見てみましょう。
多摩平団地(日野市・1958年入居開始)の場合
UR都市機構の資料では、建替え前の管理戸数2,725戸に対して、建替え後の「多摩平の森」は1,528戸とされています。敷地の使い方も変わり、29ヘクタールに247棟あった建物を高層化して、11ヘクタール・30棟に集約したと説明されています。空いた土地には民間の住宅や商業施設が入り、2014年には商業施設が開業しました。
なお、昭和33年の建設時点はおよそ250棟・2,792戸とされています。「当初の戸数」と「建替え直前の管理戸数」は基準が違うため、比べるときは注意が必要です。
ひばりが丘団地(西東京市・東久留米市・1959年入居開始)の場合
2,714戸・約180棟だった団地が、1999年着手・2012年完成で「ひばりが丘パークヒルズ」になりました。URの管理戸数は2026年3月末時点で1,504戸とされています。
両団地に共通するのは、壊さずに残した棟があることです。多摩平では旧住棟5棟が民間の手で再生され、ひばりが丘では旧118号棟が地域の拠点に、旧53号棟がサービス付き高齢者向け住宅として使われています。建替え=すべて更地にして建て直す、とは限らないわけです。
建替えは「何年」かかるのか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。多摩ニュータウンで初めての大規模な分譲住宅の建替えとされる、諏訪二丁目住宅(多摩市)の経過を、東京都都市整備局の発表資料をもとに時系列にしてみます。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1971年 | 入居開始(640戸・23棟、全戸48.85㎡の3DK) |
| 1988年 | 建替えの話が持ち上がる |
| 1991年 | 建替え委員会が発足 |
| 2010年 | 一括建替えの決議が成立 |
| 2013年10月 | 竣工(1,249戸・7棟/総事業費 約230億円) |
話が出てから竣工まで25年、決議までで22年です。建物を建てる工事そのものより、合意をつくる時間のほうがはるかに長い、という構造がここに表れています。
決議のあとにも、手続きの段階がある
同じ資料には、決議の時点で640世帯のうち54世帯が賛同していなかったこと、その後の催告を経て6世帯まで絞られ、1世帯が自主的に売却、3世帯が売渡し請求に応じ、最後の2世帯をめぐって明渡しを求める訴訟に至ったことが記録されています。
これは特別に揉めた事例という話ではなく、大規模な建替えでは制度上こうした段階が用意されている、ということです。実家が区分所有の集合住宅にある方は、こうした過程を経るものだと知っておくだけでも、心の準備が変わってくると思います。
※ 区分所有法上の手続きや、ご自身のケースで何が起こりうるかは個別事情によって異なります。管理組合の資料を確認したうえで、弁護士・司法書士など専門家にご相談ください。
売るとしたら、築古の団地では何が起きるか
「待つ」の反対側にある「売る」についても、先に知っておいたほうがよいことがあります。築50年、60年の区分所有の住宅には、新しいマンションにはない事情があるためです。ここでは、実務でとくに影響が出やすい2つを挙げます。
買主の住宅ローン控除に、建築年が効いてくる
中古住宅を買った人が住宅ローン控除を受けるには、その家屋が昭和57年(1982年)1月1日以後に建築されたものであることが要件のひとつになっています。それ以前に建てられた家屋の場合は、取得の日前2年以内に耐震基準に適合することが証明されたものであるなど、別の要件を満たす必要があります(国税庁 タックスアンサー No.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」/令和7年4月1日現在法令等)。
昭和30年代から40年代に建てられた団地は、この基準日より前の建物です。買主の側から見ると、耐震基準適合証明書などが用意できなければ住宅ローン控除を使えない可能性がある物件、ということになります。旧耐震基準の建物では、耐震改修を行わないと証明が取れないこともあります。
これは、買える人・買いたい人の幅が狭くなる要素で、価格にも影響します。ただし、立地・管理状態・管理組合の運営状況によって評価は大きく変わるため、築古だから売れないという話ではありません。現金で購入する方や、リフォーム前提で探している方が買主になることもあります。
※ 住宅ローン控除の要件は2026年8月時点の情報です。税制は改正されることがあるため、実際の適用にあたっては国税庁の最新の案内を確認するか、税理士にご相談ください。
管理費・修繕積立金の滞納は、次の所有者に引き継がれる
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)第8条は、「前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」と定めています。かみ砕くと、前の所有者が滞納していた管理費や修繕積立金は、買った人が請求されうるということです。
実家を相続したケースでは、親の代の滞納がそのまま残っていることがあります。売るにしても住み続けるにしても、まず管理組合に残高を確認するのが出発点です。売却の場面では、管理会社が発行する重要事項調査報告書で滞納額が明らかになるため、伏せたまま進めることはできません。
何から手をつければよいか分からないという方は、実家の処分は何から始めるかから読んでいただくと順番を整理しやすいと思います。買主が絞られる物件では、仲介ではなく買取という選択肢が現実的になることもあります。その違いは空き家売却で仲介と買取のどちらを選ぶかで整理しています。
買う側から見た団地
ここまでは主に「持っている側」から見た話でしたが、売ることを考えるなら、買う人がどこを見ているかを知っておくと材料が増えます。いま団地を買おうか迷っている方にとっては、同じ論点がそのまま確認事項になります。
- 住宅ローンが組めるか、借入期間が短くならないか。旧耐震の建物は取り扱わない金融機関があったり、建物の年数から借入期間が短くなったりすることがあります。
- 減税が使えるか。前の章で見たとおり、住宅ローン控除は建築年で要件が変わります。耐震基準適合証明書が用意できる建物かどうかで、買主が使える制度の幅が変わることがあります。
- 管理の状態。修繕積立金の水準、長期修繕計画があるか、エレベーターの有無など、いわゆる「管理を買う」部分です。
売主の立場から見ると、これは買主がどこで止まりやすいかの一覧でもあります。現金で購入できる方に買主が絞られる物件では、売却期間が長くなったり、価格の交渉が入りやすくなったりすることがあります。一方で、耐震基準適合証明書が用意できる建物であれば、買主が使える減税が増えるぶん、検討できる層が広がる可能性もあります。どちらに当てはまるかは建物ごとに違うため、まずはご自身の団地がどの状態かを確かめるところからになります。
中古マンション全般の確認点は中古マンション購入の注意点と中古マンション内見チェックリストで整理しています。団地に固有の論点(旧耐震の住宅ローン審査、分譲と賃貸の見分け、管理の水準)は、あらためて別の記事で扱う予定です。
「建替えを待つ」判断は妥当でしょうか
ここまでの内容をふまえて、判断材料を3つに整理します。
1. 建替えの話が、いまどの段階にあるか
先ほどの年表のとおり、段階によって残り時間の桁が変わります。目安として、次のように考えると整理しやすくなります。
- 話も出ていない → 数十年単位、あるいは実現しない可能性もある
- 建替え委員会などが動いている → それでも十数年かかることがある
- 決議が成立している → 数年で形になる段階
多摩の例でも、木曽山崎団地地区(町田市)は地区としての建替え事業が確認できず、町田市が街の将来像を2026年3月に改定した段階です。一方で多摩川住宅(調布市・狛江市)は、ホ号棟が2025年10月に竣工し、ニ号棟は2028年6月竣工予定と、街区ごとに順番が進んでいます。
2. 待つあいだの費用と手間を負担できるか
建替えを待つあいだも、管理費・修繕積立金・固定資産税はかかり続けます。空き家にしたまま待つ場合は、管理の手間や近隣への影響も考える必要があります(空き家を放置したときに何が起きるかで詳しく整理しています)。「待つ」という選択にも、続けるためのコストがあるということです。
3. いま売った場合の価値を把握しているか
「建替えを待ったほうがよいか」は、いまの価値が分からないと比較できません。築年数が古いから価値がないと決めつけて動かないまま、年月が過ぎてしまうケースは少なくありません。価値の目安を知ることは、売ると決めることではなく、比べるための材料をそろえる作業です。
古い団地に、人が戻り始めている例もあります
最後に、ひとつだけ数字を挙げます。
多摩ニュータウンで最初に人が入った諏訪地区で、2025年11月に入居が始まったUR「コンフォール諏訪」は、104戸の募集に573件の応募がありました。倍率5.5倍です。
これは1棟の募集結果であり、この数字だけで地域全体の評価を語ることはできません。ただ、半世紀以上前に生まれた街で、新しく暮らしを始めたいと考えた人がこれだけいたことは事実です。
「古い団地だから価値がない」と単純に考える前に、ご自身の物件がどう評価されるのかを、一度確かめてみてはいかがでしょうか。
まとめ:時間の桁を知ってから、待つか動くかを決める
この記事の要点を整理します。
- 同じ時期の団地でも、60年後の姿は「建替え済み」「途中」「これから」に分かれる
- 建替え後は戸数が減ることが多く、同じ規模で建て直されるとは限らない
- 合意形成には時間がかかり、話が出てから竣工まで25年かかった例がある
- 「待つ」にも管理費・修繕積立金・固定資産税などの負担が続く
- 待つか動くかを比べるには、いまの価値を把握することが出発点になる
本記事は2026年8月時点で公表されている資料にもとづく、一般的な情報の整理です。制度や税金の取り扱いは個別事情や時点によって変わります。
ご自身のケースについては、管理組合の資料を確認のうえ、市区町村の窓口や、弁護士・司法書士・税理士など専門家にご相談ください。
売るか迷っている段階でも、LINEで整理できます
イエノミカタ公式LINEを友だち追加すると、メニューから「売却相談」「相続相談」などを選ぶだけで、宅建士に無料で相談できます。営業目的の連絡は行いません。

コメント