家や土地を売ろうとするとき、「売却でお金が入るはずなのに、その前に自分の現金がいくら必要になるの?」と不安になっていませんか。相談の現場では、「売却代金が入ってから払えばいい」と思っていたら、代金が入る前に現金の支払いが続いて慌てた、という声をよく聞きます。結論からお伝えすると、不動産売却でかかる費用の多くは売却代金から精算できますが、一部は代金が入る前に現金で立て替える必要があり、これが「持ち出し(自己資金)」です。この記事では、不動産売買仲介の現場で資金計画のご相談に応じてきた経験をもとに、売却で持ち出しになりやすい費用は何か、いくらくらい見込めばよいか、そして持ち出しを抑える方法までを整理します。なお、税制・制度の説明はいずれも2026年7月時点の一般的な内容です。

結論:費用の多くは代金から精算できるが、「持ち出し」がある
まず大事なのは、売却費用を「持ち出し(先に現金で払う)」と「代金から精算(決済時に売却代金から差し引く)」に分けて考えることです。この区別ができると、手元の現金がいくら要るのかが見えてきます。
| 区分 | 特徴 | 主な費用の例 |
|---|---|---|
| 持ち出し(現金で先払い) | 売却代金が入る前に自己資金から支出 | 測量費・解体費・遺品整理費・ハウスクリーニング・軽微な修繕・相続登記費用 |
| 代金から精算(決済時) | 売買代金の受け取りと同時に差し引き | 仲介手数料・印紙税・抵当権抹消の登記費用・ローン残債の返済 |
| 後日納税(翌年) | 売った翌年に別途納付 | 譲渡所得税・住民税(利益が出た場合) |
つまり、持ち出しになりやすいのは主に「売る前の準備費用」です。仲介手数料や税金など金額の大きいものは代金から精算できるため、必ずしも売却代金と同じだけの現金を用意する必要はありません。費用と支払時期を売却・購入・相続横断で押さえたい方は、自己資金と支払時期の全体像の記事もあわせてご覧ください。
持ち出しになりやすい費用

売却を有利に進めるための準備費用は、多くが売却前の先払い、つまり持ち出しになります。物件の状態によって、次のような費用が発生します。
境界確定測量:土地を売るときに必要になりやすい
土地や戸建てを売るとき、隣地との境界がはっきりしていないと、買い手が付きにくかったり値引きの理由にされたりします。そのため売却前に境界を確定させる測量を行うことがあり、これは売却前の先払いになるのが一般的です。費用の目安と期間は境界確定測量の費用の記事で解説しています。
解体費:更地にして売る場合
古家を壊して更地で売る場合の解体費も、原則は自己資金での先払いになりやすい費用です。ただし、売買契約の組み方によっては売却代金からの精算が可能な場合もあるため、不動産会社に相談する価値があります。相場は解体費用の相場の記事で確認できます。
遺品整理・残置物撤去:相続物件や家財が残る場合
相続した家や、家財が残ったままの家を売る場合、遺品整理や残置物の撤去費用がかかります。これも売却前の先払いになりやすい費用です。費用の目安は遺品整理の費用相場の記事にまとめています。残置物を残したまま売れるかどうかの判断は家の売却と残置物の記事を参考にしてください。
ハウスクリーニング・軽微な修繕
内覧の印象をよくするためのハウスクリーニングや、目立つ傷の補修などを行う場合、これらも売却前の持ち出しになります。ただし、これらは必須ではなく、費用対効果を見て判断する費用です。かけすぎると回収できないこともあるため、不動産会社と相談しながら「どこまでやるか」を決めるのがおすすめです。
相続登記の費用:相続物件を売る前に
相続した不動産を売るには、まず名義を相続人へ変更する相続登記が必要で、登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)と司法書士報酬がかかります。これは売却より前の持ち出しです。手続きと費用は相続不動産の名義変更の流れと費用の記事で解説しています。
ここまで見た費用は、いずれも「売る前」に発生しやすいのが共通点です。売り出す前の段階で、自分の物件にどの準備費用がかかるのかを不動産会社と洗い出しておくと、必要な現金の見当がつきます。逆に言えば、これらの準備をあまりせず現況のまま売る場合は、持ち出しをかなり小さく抑えられます。どこまで準備するかは、かけた費用が売却価格の上乗せや売れやすさで回収できるかを見ながら判断するのが基本です。
代金から精算できる費用
一方、次の費用は決済時に売却代金から精算できるため、原則として現金の持ち出しにはなりません。ここを知っておくと、必要な現金を過大に見積もらずに済みます。
- 仲介手数料:売却を仲介した会社への報酬。売買価格が400万円を超える部分は3%が上限で、「売買価格×3%+6万円+消費税」の速算式で上限を計算できます(出典:宅地建物取引業法・国土交通省告示)。一般的に契約時と決済時に分けて支払い、代金から精算できます。相場は仲介手数料の相場の記事で解説しています。
- 印紙税:売買契約書に貼る税金。軽減措置により、令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書は、契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円が目安とされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.7108、2026年7月確認)。
- 抵当権抹消の登記費用:住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消する登記費用がかかりますが、決済時にまとめて精算するのが一般的です。
- ローン残債の返済:住宅ローンが残っている場合、売却代金でローンを一括返済します。売却代金が残債を上回れば、その差額が手元に残ります。
※売却代金がローン残債を下回る(オーバーローン)の場合は、不足分を自己資金で補う必要があり、これも持ち出しになります。残債がある場合は、売却前に金融機関へ残高を確認しておきましょう。
持ち出しを抑える3つの考え方
持ち出しはゼロにはできませんが、工夫で抑えられる部分があります。現場でお伝えしてきた考え方を3つ紹介します。
- 契約の組み方で代金精算にできないか相談する:解体費などは、契約条件によっては売却代金からの精算が可能な場合があります。「先に現金で払うしかないのか」を不動産会社に確認してみましょう。
- 現況のまま売る選択肢を検討する:解体や大がかりな修繕をせず、現況(今のまま)で売れば、その分の持ち出しを抑えられます。更地にすべきか現況で売るかは、費用と売れやすさのバランスで判断します。
- 買取という選択肢もある:不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」なら、残置物や現況のまま引き取ってもらえることが多く、準備費用を抑えられる場合があります。ただし価格は仲介より下がりやすいため、手取り全体で比べることが大切です。
ケース別・持ち出しの目安の考え方

持ち出しの額は物件の状態で大きく変わります。金額は物件・地域で異なるため、ここでは「どの費用が持ち出しになりやすいか」の考え方を整理します。
| ケース | 持ち出しになりやすい費用 |
|---|---|
| マンションを現況で売る | ハウスクリーニング程度。持ち出しは比較的小さい |
| 戸建て・土地を売る | 境界確定測量が加わることが多い |
| 古家を更地にして売る | 解体費が加わり、持ち出しが大きくなりやすい |
| 相続物件を売る | 相続登記費用・遺品整理費が加わる |
| ローン残債があり売却額が下回る | 不足分の自己資金が必要になる |
物件価格以外にかかるお金の全体像は不動産の見えない費用の記事に、売却の費用と税金を差し引いた手取りの考え方は売却にかかる費用と税金・手取りの記事にまとめています。
例えば、持ち出しをこう見積もる
考え方をつかみやすいよう、仮定の例で整理してみます(金額は説明のための仮のもので、実際は物件・地域で変わります)。例えば、相続した築古の戸建てを更地にして売るケースを考えます。この場合、持ち出しになりやすいのは、相続登記の費用、境界確定測量の費用、解体費、家財の遺品整理費です。これらは売却代金が入る前に現金で立て替える必要があるため、あらかじめ自己資金として見込んでおきます。一方、仲介手数料や印紙税は決済時に売却代金から精算でき、譲渡所得税は売った翌年に納めます。
この例で大切なのは、「売却代金が入るのは最後」という順番です。準備費用を先に払い、買い手が見つかって決済してはじめて代金が入ります。つまり、決済までの数か月は持ち出しの状態が続きます。だからこそ、売り出す前に「どの費用を、いつ、いくら立て替えるのか」を不動産会社と一緒に洗い出しておくことが、資金繰りで慌てないコツになります。解体費のように、契約の組み方によっては代金精算にできる費用もあるため、「これは必ず現金で先払いですか」と一つずつ確認していくとよいでしょう。
住み替えでは売りと買いが重なって立替が大きくなりやすい
今の家を売って新居を買う住み替えでは、買いが先行すると、今の家が売れる前に新居の資金が必要になり、一時的な立替が大きくなりがちです。売却代金を新居の購入に充てる予定でも、タイミングがずれると「つなぎ融資」を検討する場面が出てきます。住み替えの資金計画は住み替えの流れと資金計画の記事で詳しく解説しています。売り先行か買い先行かで必要な自己資金が変わるため、早めに全体のスケジュールを立てておきましょう。
持ち出しではないが備えたい「翌年の税金」

持ち出しとは別に、忘れてはいけないのが売却益への税金です。売って利益(譲渡所得)が出た場合、売った翌年の確定申告で譲渡所得税・住民税を納めます。これは持ち出し(先払い)ではありませんが、売却代金を使い切ってしまうと翌年の納税資金が足りなくなることがあります。売却益が見込まれる場合は、納税分を別に取り分けておくと安心です。税率は所有期間で変わり、2026年7月時点の目安は、売った年の1月1日時点で所有5年超の長期が合計約20.315%、5年以下の短期が合計約39.63%とされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211、2026年7月確認)。
※費用や税金の取り扱いは、物件の種類・所有期間・契約条件で変わります。本記事は一般的な説明です。実際の費用や税額は不動産会社・司法書士・税理士・お近くの税務署でご確認ください。
専門家・不動産会社に確認したいこと
持ち出しを正確に見積もるには、早めに確認しておきたいことがあります。「誰に何を聞くか」を整理しておきましょう。
- 不動産会社:売却前に必要な準備費用の見積もり、どの費用を代金から精算できるか、支払いスケジュール
- 司法書士:相続登記・抵当権抹消の登記費用の見積もり
- 金融機関:住宅ローンの残高、売却代金で完済できるか
- 税理士・税務署:譲渡所得税の概算、特例の適用可否
迷ったら、まず売却額の目安=手取りの出発点を知る
持ち出しがいくら必要かを見積もる出発点は、「その不動産がいくらで売れそうか」を知ることです。売却額の目安が分かってはじめて、持ち出しを差し引いても手元にいくら残るのか、ローン残債を完済できるのかが見えてきます。金額の目安があると、資金計画の全体像が一気にはっきりします。
売却の資金計画を立てるうえで、まず知っておきたいのが売却額の目安です。当サイトの宅建士による無料の資産価値チェックで、手取りを考える出発点となる目安を確認してみてください。
まとめ:持ち出しは「売る前の準備費用」が中心
不動産売却の費用は、その多くが売却代金から精算できますが、測量・解体・遺品整理・ハウスクリーニング・相続登記といった「売る前の準備費用」は現金での持ち出しになりやすい費用です。持ち出しの額は物件の状態で変わり、マンションの現況売却なら小さく、古家の更地化や相続物件では大きくなりやすい傾向があります。持ち出しは、契約の組み方や現況売却・買取の検討で抑えられる部分もあります。まずは売却額の目安を知って手取りの見当をつけ、どの費用が持ち出しになるかを不動産会社に確認しながら、無理のない資金計画を立てていきましょう。個別費用の相場は、売却の費用と税金の記事や自己資金と支払時期の全体像の記事もあわせてご覧ください。


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