地震保険は戸建てに必要か?補償額30〜50%と4つの判断軸

夕方の光に照らされる戸建て住宅街の風景 お金・費用

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地震保険の基本の仕組みと、実際どのくらいの世帯が入っているか

戸建てを持つと、「地震保険は本当に必要なのだろうか」と一度は考える方が多いのではないでしょうか。損害保険料率算出機構の統計によると、2024年度に契約された火災保険(住宅物件)のうち地震保険が付帯された割合は全国平均70.4%で、統計開始以来はじめて7割を超えました。一方で、全世帯を分母にした地震保険の世帯加入率は3割台半ば程度とされており、「火災保険に入るときについでに付ける人は多いが、そもそも入っていない世帯もまだ一定数ある」というのが実態です。まずは地震保険がどういう仕組みの保険なのか、基本から整理しておきましょう。

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地震保険は火災保険とセットでなければ入れない

地震保険には、単独で契約するという選択肢がありません。火災保険とセットでなければ契約できない仕組みになっており、火災保険の契約時に一緒に付ける方法のほか、すでに火災保険に加入している場合でも、契約期間の途中から地震保険だけを追加することも可能です(用語の詳しい説明は地震保険の用語集ページもあわせてご覧ください)。「地震保険だけ欲しい」という希望には応えられない点は、まず押さえておきたい基本です。

政府と民間の共同運営という公共性の高い保険

地震保険は、「地震保険に関する法律」に基づいて政府と民間の損害保険会社が共同で運営している、公共性の高い保険です。大地震が発生すると、通常の民間保険だけでは支払いきれないほどの保険金が一度に必要になる可能性があります。そこで、巨大災害時には政府が再保険という形で保険会社を支える仕組みが用意されており、契約者への保険金の支払いが滞りにくいよう設計されています。この仕組みのため、地震保険の補償内容や保険料は法律で決まっており、どの保険会社で契約しても内容に差はありません。「どの会社の地震保険がお得か」を比較する必要がない、という点は他の保険とは異なる特徴です。

火災保険だけでは「地震が原因の火災・損壊」は補償されない

ここで誤解しやすいのが、「火災保険に入っていれば、地震で家が燃えても壊れても補償される」という思い込みです。実際には、地震・噴火・津波を原因とする火災や損壊は、地震保険をセットしていない限り、通常の火災保険では補償の対象外とされています。地震によって発生した火災で全焼しても、地震保険がなければ火災保険からの保険金は原則として支払われません。これから中古住宅の購入を控えている方で、そもそも火災保険にいくら入ればよいのか迷っている場合は、中古住宅の購入と火災保険の入り方を整理した記事もあわせてご覧ください。

補償額はどのくらい?「建て直し費用の全額」ではない理由

地震保険を検討するうえで、最も誤解が生じやすいのが補償額の考え方です。「地震保険に入っていれば、全壊しても同じ家を建て直せる」とイメージされがちですが、実際の仕組みはそうなっていません。

火災保険金額に対して地震保険金額が30から50パーセントの範囲であることを示すイメージ

保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で設定する

地震保険の保険金額は、セットする火災保険の保険金額に対して30%〜50%の範囲内で契約者が設定する仕組みです。たとえば火災保険の建物金額を2,000万円で契約している場合、地震保険の保険金額は600万円〜1,000万円の範囲で選ぶことになります。つまり、制度としてはじめから「火災保険金額と同額」には設定できないという点が、必要性を考えるうえでの出発点になります。

上限は建物5,000万円・家財1,000万円

さらに、地震保険の保険金額には上限があります。建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度額と定められており、火災保険の金額がどれだけ大きくても、地震保険の保険金額はこの上限を超えて設定することはできません(2026年7月時点)。都心の戸建てなど建物の評価額が高いケースほど、火災保険金額に対する地震保険のカバー割合は相対的に小さくなりやすい点にも注意が必要です。

全壊しても建て直し費用の全額は出ない=「生活再建のための保険」

ここまでの仕組みからも分かる通り、地震保険は「被災前と同じ家を建て直すための保険」ではありません。国の制度としても、地震保険は被災者の当面の生活を立て直すための資金を確保することを目的として設計されています。全壊という認定を受けても、受け取れる保険金は建て直し費用の全額には及ばないのが一般的です。「地震保険さえあれば建て直せる」と考えるのではなく、「当面の生活を支えるための備え」と捉えたうえで、不足分をどう準備するかをあわせて考えることが、戸建て所有者にとって現実的な向き合い方といえます。

※本記事で紹介した補償割合・上限額は2026年7月時点の制度に基づく一般的な内容です。実際の契約可能な保険金額や条件は、加入している火災保険の内容によって変わるため、正確な金額は契約中・検討中の保険会社や代理店にご確認ください。

保険料の決まり方と使える割引・控除制度

地震保険は法律で内容が決まっている保険ですが、保険料は一律ではありません。住んでいる地域や建物の条件によって金額が変わり、複数の割引制度や税制上の控除もあります。順番に見ていきましょう。

建物の耐震性能を確認しながら地震保険の割引制度を点検するイメージ

保険料は都道府県・建物の構造で異なる

地震保険の保険料は、地震の発生リスクを踏まえて都道府県ごとに区分されているほか、建物が「木造(イ構造・ロ構造)」か「非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)」かによっても異なります。一般的に、地震の発生リスクが高いとされる地域や、木造建物のほうが保険料は高めに設定される傾向があります。前述の通り、地震保険の保険料は法律に基づいて算出されるため、同じ都道府県・同じ建物構造・同じ補償内容であれば、どの保険会社で契約しても保険料に差は出ません。

4つの割引制度(重複はできず、最も有利な割引が適用される)

建物の耐震性能に応じて、保険料の割引を受けられる制度が4種類用意されています。

  • 建築年割引:1981年6月1日以降の耐震基準で新築された建物が対象。割引率は10%程度
  • 耐震等級割引:住宅性能表示制度などによる耐震等級に応じた割引。等級1で10%程度、等級2で30%程度、等級3で50%程度
  • 免震建築物割引:免震建築物の基準に該当する場合の割引で、割引率は50%程度
  • 耐震診断割引:自治体等による耐震診断や耐震改修の結果、現行の耐震基準を満たすと確認された場合の割引で、10%程度

これらの割引は重複して適用することができず、複数の条件に当てはまる場合は、最も割引率の高い制度が適用される仕組みです。割引を受けるには、建築年や耐震性能を示す確認書類の提出が必要になるため、対象になりそうな場合は保険会社や代理店に相談してみるとよいでしょう。

地震保険料控除で所得税・住民税が軽減される

地震保険料を支払っている場合、確定申告や年末調整で「地震保険料控除」を申告すると、所得税・住民税の負担が軽くなる仕組みがあります。控除額の上限は、所得税で最大5万円、個人住民税で最大2万5千円です(2026年7月時点)。会社員の場合は年末調整の保険料控除申告書に、保険会社から届く控除証明書の内容を記入するだけで手続きができます。控除額の計算方法や申告の具体的な手順は年度によって細部が変わることもあるため、最新の内容は国税庁や税務署、加入先の保険会社の証明書に記載の案内で確認することをおすすめします。

戸建てで地震保険の必要性を判断する4つの軸

ここまで見てきたように、地震保険は建て直し費用の全額をまかなう保険ではありません。だからこそ「入るべきか」は、世帯ごとの状況によって答えが変わります。戸建て所有者が判断する際に軸にしたいポイントを4つに整理しました。

住宅ローンの残高と資産価値のバランスを考える戸建て所有者のイメージ

1. 住宅ローンの残高(被災してもローンは残る)

戸建てを住宅ローンで購入している場合、まず考えたいのがローンの残高です。地震で自宅が全壊・半壊しても、金融機関への返済義務が自動的になくなるわけではありません。地震保険は建て直し費用の全額をカバーしないため、被災後は「住めなくなった家のローンを返しながら、新しい住まいの費用も工面する」という二重の負担が生じる可能性があります。ローンの残高が大きいほど、この負担を和らげる備えとしての地震保険の役割は大きくなりやすいといえます。

ローンの残高と、今の住まいの資産価値のバランスを把握しておくと、地震保険にどこまで備えるかを判断しやすくなります。査定の申し込みなど個人情報の入力は不要で、簡単な情報からご自宅の資産価値の目安を確認できます。

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2. 貯蓄でどこまで備えられるか

一方で、当面の生活費や仮住まいの費用をまかなえるだけの貯蓄が十分にある場合は、地震保険への依存度を下げて考えることもできます。地震保険はあくまで「当面の生活再建」を支える保険ですので、貯蓄で同等の備えができているなら、保険料と天秤にかけて判断するのも一つの考え方です。ただし、地震はいつ起きるか予測できない災害である以上、貯蓄を他の目的に使う予定がある場合は、その分を差し引いて考える必要があります。

3. 地盤・ハザードリスク

お住まいの土地の地盤の強さや、周辺のハザードリスクも重要な判断材料です。揺れやすい地盤や、液状化・土砂災害のリスクが指摘されているエリアでは、建物の被害が大きくなりやすいとされています。逆に、比較的安定した地盤のエリアであっても、リスクがゼロになるわけではない点には留意が必要です。ご自宅周辺の地盤や災害リスクの傾向を確認したい場合は、当サイトのハザードチェッカーで、住所を入力するだけで目安を確認できます。判断の材料のひとつとして活用してみてください。

4. 建物の耐震性・築年

前章で紹介した割引制度からも分かる通り、建物の耐震性は地震保険と切り離せないテーマです。1981年6月以降の新耐震基準で建てられているか、耐震等級を取得しているかによって、被災時の損害の程度も、保険料の割引も変わってきます。築年数が古く耐震性に不安がある建物ほど、被災時の損害が大きくなりやすい一方で、割引の適用有無を含めて保険料の面でも確認しておきたいポイントが多くなります。

迷ったときは、火災保険の契約更新や見直しのタイミングで、地震保険もあわせて検討し直すのがおすすめです。保険料や補償内容は保険会社によって細部が異なるため、複数社を比較しながら、ご自身の住宅ローンの残高・貯蓄・地盤・建物の耐震性に合った内容を選ぶと判断しやすくなります。火災保険そのものの見直しポイントは火災保険の見直しタイミングを整理した記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

地震保険は火災保険とセットでしか契約できないため、見直すなら火災保険ごと複数社を比較しておくと効率的です。契約内容を手元に用意したうえで、同じ条件で各社の保険料と補償内容を見比べてみてください。

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まとめ:地震保険は「建て直し費用」でなく「生活再建の備え」として考える

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 地震保険は火災保険とセットでのみ加入でき、政府と民間が共同運営する公共性の高い保険。火災保険だけでは地震が原因の火災・損壊は補償されない
  • 保険金額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定し、建物5,000万円・家財1,000万円が上限(2026年7月時点)。全壊しても建て直し費用の全額は出ず、生活再建のための保険という位置づけ
  • 保険料は都道府県・建物の構造で異なり、建築年割引・耐震等級割引・免震建築物割引・耐震診断割引などの割引制度や、地震保険料控除(所得税最大5万円・住民税最大2万5千円)もある
  • 必要性の判断軸は「住宅ローンの残高」「貯蓄でどこまで備えられるか」「地盤・ハザードリスク」「建物の耐震性・築年」の4つ
  • 迷ったら、火災保険の契約更新・見直しのタイミングで地震保険もセットで比較検討するのがおすすめ

地震保険は「入れば安心」という単純な話ではなく、ご自身の住宅ローンの状況や貯蓄、地盤、建物の耐震性によって、必要な備え方が変わってくる保険です。本記事で紹介した割引率・控除額・上限額は2026年7月時点の一般的な内容であり、地域や建物構造、契約内容によって条件は異なります。正式な保険料や補償内容、割引の適用可否については、損害保険料率算出機構の公表資料や、加入中・検討中の保険会社・代理店に確認することをおすすめします。まずはご自身の状況を整理するところから始めてみてください。

地震保険の必要性を考えるヒントとして、まずはご自宅の資産価値とローン残高のバランスを把握しておくと、判断がしやすくなります。無料で目安を確認できますので、保険の見直しとあわせて活用してみてください。

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この記事を書いた人

鈴木 悠平(宅地建物取引士・2級FP技能士)

銀行系不動産会社で売買仲介に15年以上携わり、新潟・八王子/府中・池袋など特性の異なるエリアで、売主・買主双方の立場から半期100件以上のご相談に対応してきました。「知らないだけで損をしてしまう」ケースを現場で数多く見てきた経験から、不動産売買で損をする人を一人でも減らすことを目指し、当サイト「イエノミカタ」を運営しています。

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