いらない土地を国に返すには?国庫帰属制度の費用・要件と5つの手放し方

使い道がなく手放したい相続した空き地のイメージ 土地・農地の相続

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「親から相続した土地があるけれど、使う予定も買い手もない。いっそ国に返せないのか」。こうした声は、相続登記の義務化(2024年4月)以降さらに増えました。結論からお伝えすると、相続した土地は相続土地国庫帰属制度を使えば国に引き取ってもらえる可能性があります。ただし審査手数料と原則20万円の負担金がかかり、建物が残っている土地や境界があいまいな土地は申請しても通りません。この記事では、2026年10月時点の制度の運用状況と、売却・買取・寄付・相続放棄といったほかの手放し方を比べ、損をしにくい確認の順番をまとめました。

使い道がなく手放したい相続した空き地のイメージ

土地を国に返す方法は「相続土地国庫帰属制度」

「土地を国に寄付したい」と考えて役所に相談しても、以前は受け付けてもらえないのが普通でした。その受け皿として作られたのが相続土地国庫帰属制度です。所有者不明土地の発生を防ぐ目的で、令和5年(2023年)4月27日に始まりました(法務省)。背景にある所有者不明土地の問題は用語集で解説しています。

相続土地国庫帰属制度の申請書類と土地の図面のイメージ

対象は「相続・遺贈で取得した土地」

申請できるのは、相続や遺贈(相続人に対するもの)で土地を取得した人です。制度が始まる前に相続した土地も対象になります。一方、自分で買った土地は単独では申請できません。共有地の場合は、共有者の一人が相続で持分を取得していれば、共有者全員で申請することになります。申請先は土地を管轄する法務局で、相続放棄と違って期限はありません。

費用は審査手数料と負担金の2段階

まず申請時に、審査手数料として土地一筆あたり14,000円がかかります。不承認になっても戻りません。承認されると、10年分の管理費用に相当する負担金を納めます。宅地・田畑・雑種地などは原則20万円ですが、市街化区域や用途地域が定められた地域の宅地、農用地区域などの田畑は面積に応じて算定され、森林も面積で決まります(法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」・2026年10月時点)。たとえば市街化区域の宅地100㎡なら約54万円と、20万円を大きく上回ります。負担金は通知が届いた翌日から30日以内に納める必要があります。

2026年の運用状況:取下げの件数に注目

法務省の統計(令和8年9月30日現在・速報値)では、制度開始からの申請は6,125件、国に帰属したのは3,231件です。地目別の申請は田・畑2,372件、宅地2,135件、山林928件でした。却下86件・不承認103件と少なく見えますが、見落とせないのが取下げの1,162件です。このうち415件は却下・不承認になると分かったための取下げで、595件は隣接地の所有者が引き受けを申し出た、自治体が活用を決めたなど、有効活用の見込みが立ったことによるものでした。不承認の理由で最も多いのは「地上に工作物・車両・樹木などがある土地」(49件)、却下では「境界が明らかでない土地」(23件)です。申請に進む前の段階で、多くの土地がふるいにかけられていると読むのが自然です。

国に返せない土地の条件と、現場で多い引っかかり

この制度は「申請すれば何でも引き取ってくれる」ものではありません。国が管理に困る土地は、申請の段階か審査の段階で外されます。

境界があいまいで樹木が残る土地は国庫帰属の要件を満たさないことがあるイメージ

申請段階で却下される土地

  • 建物がある土地
  • 抵当権などの担保権や、賃借権などの使用収益権が設定されている土地
  • 通路・墓地・水路など、他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地

審査で不承認になる土地

一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用がかかる土地、管理や処分を妨げる工作物・車両・樹木が地上にある土地、除去が必要な物が地下にある土地、隣地との争いを解決しないと管理できない土地、そのほか通常の管理に過分な費用や労力がかかる土地は承認されません。

「20万円で返せる」とは限らない理由

相続でよくあるのは、古い家が建ったままの土地です。建物があると申請すらできないため、先に解体が必要です。木造30坪程度でも解体費は100万円を超えることが珍しくありません。隣地との境界がはっきりしない土地では測量も必要になり、数十万円かかることがあります。負担金だけを見て「20万円で手放せる」と考えると、実際の総額との差に驚くことになります。費用をかけて解体・測量した結果、売れる土地に変わることもあるため、次の章の方法と比べてから決めるのがおすすめです。

国庫帰属以外の手放し方と比較

国に返す以外にも、土地を手放す方法はあります。お金になるかどうか、選べる土地かどうか、期限があるかで性格が大きく違います。

手放す前に土地の売却可能性を確かめるイメージ
方法 お金の流れ 土地を選べるか 主な注意点
仲介で売る 代金を受け取れる 選べる 買い手が付くまで時間がかかることがある
買取業者に売る 代金を受け取れる 選べる 価格は仲介より下がりやすい。対象外の土地もある
隣地・自治体への寄付・贈与 原則0円 選べる 受け手次第。自治体は受け付けないことが多い
国庫帰属制度 手数料・負担金を払う 選べる 要件が厳しく、解体・測量が先に必要なことがある
相続放棄 家裁の実費のみ 選べない(全財産) 知った時から3ヶ月の期限がある

まずは仲介で売れるかを確かめる

「どうせ売れない」と思われている土地でも、隣地の方が駐車場や庭として欲しがっていた、資材置場を探す事業者がいた、という話は仲介の現場では珍しくありません。国庫帰属の取下げ理由で最も多いのが「有効活用の見込みが生じた」だったのも、同じ構図です。地方の家や土地が売れにくい理由と打ち手は田舎の家が売れない理由と5つの処分方法にまとめています。

訳あり不動産の買取という選択肢

再建築不可、長く空き家になっている家付きの土地、共有持分など、一般の買い手が付きにくい不動産には専門の買取会社があります。価格は仲介で売る場合より下がりやすい一方、解体や測量の前でも現状のまま相談できる点が国庫帰属との大きな違いです。

「ワケガイ」(運営:株式会社ネクスウィル)は、共有持分・借地権・再建築不可・事故物件・長く空き家になっている家など、一般の市場では買い手を探しにくい不動産の買取を全国で扱っているサービスです。公式サイトでは、査定は無料で、条件が折り合わず買取に至らなかった場合も費用はかからないと案内されています(2026年8月時点)。

申し込む前に確認したいこと:同社は公式サイトで、山林・田・畑など宅地として利用できない土地や、賃貸需要がまったくないエリアの不動産は買取が難しい場合があると明示しています。宅地や家付きの土地向けの選択肢と考え、提示された金額は仲介で売れる可能性と並べて比べてください。

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寄付・相続放棄は「最後の手段」に近い

自治体への寄付は、公共の用途に使う予定がなければ受け付けていないところが多いのが実情です。隣地の方に無償で譲る場合も、受け取る側に贈与税や登記費用がかかることがあります。相続放棄は土地だけを選べず、預貯金や自宅を含む全財産が対象です。期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月(民法915条)で、放棄の時に土地を現に占有していた人には引き渡すまで保存義務が残ります(民法940条)。詳しくは相続放棄したら家はどうなる?を、手放したいのが農地ならいらない農地を手放す5つの方法をご覧ください。

損をしにくい「手放す順番」

選択肢が多いからこそ、確認する順番が大切です。おすすめは「期限のあるもの」と「お金になる可能性があるもの」を先に確かめ、お金を払って手放す方法を後に回す順番です。

  1. 相続放棄の期限を確認する:放棄を検討するなら3ヶ月以内。迷う段階で司法書士・弁護士へ
  2. 価格の目安を調べる:周辺の取引状況から、売れる余地があるかをつかむ
  3. 不動産会社に査定を依頼する:地元の会社を含め複数社の見立てを比べる
  4. 隣地の所有者に打診する:まとまるときは最も早い
  5. 買取会社に相談する:仲介で動かない場合の出口
  6. 国庫帰属の事前相談に行く:法務局で要件に当てはまるかを確認

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売れる土地かどうかは、会社によって見立てが分かれます

地方の土地や古家付きの土地は、取引事例が少ないぶん、不動産会社によって「売れる・売れない」の判断が分かれやすい分野です。1社に断られただけで国庫帰属や有料の引き取りを考える前に、複数社の見立てを並べてみると判断材料が増えます。

一括査定サービスを使うと、複数社へまとめて査定を依頼できます。利用は無料ですが、申し込むと複数の会社から連絡が来る点は先に知っておきたいところです。電話が負担なら、要望欄に「メール希望」と書き添える方法があります。査定額は各社の売却予想価格で、その金額での成約を保証するものではありません。また、農地や山林は対応できる会社が限られます。

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「お金を払えば引き取ります」型の勧誘に注意

売れない土地を持っている人に、高額な調査費や整備費を払わせる勧誘があります。国民生活センターは、過去に原野などを買わされた人を狙う「原野商法の二次被害」について繰り返し注意を呼びかけています。先にお金を払う話が出たら、その場で契約せず家族や第三者に相談してください(消費者ホットライン188)。お金を払って手放すなら、手数料と負担金が法令で決まっている国庫帰属制度のほうが見通しは立てやすいでしょう。

よくある質問

売買で買った土地も国に返せますか?

原則として返せません。相続土地国庫帰属制度の対象は、相続や遺贈(相続人に対するもの)で取得した土地です。ただし共有地で、共有者の一人が相続で持分を取得している場合は、売買で持分を取得した共有者も含めて全員で申請できます(法務省・2026年10月時点)。

審査に落ちたら手数料は戻りますか?

戻りません。審査手数料(一筆14,000円)は審査の対価のため、却下・不承認になっても返還されません。申請前に法務局の事前相談で、建物・境界・樹木などの条件に当てはまらないかを確認しておくと、無駄な出費を避けやすくなります。

固定資産税がかからない土地なら放っておいても大丈夫ですか?

税額が低くても、管理責任は所有者に残ります。草木の越境や不法投棄、崖崩れで近隣に損害が出れば責任を問われることがあります。また2024年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。

まとめ:国に返す前に「売れる可能性」を確かめましょう

  • 土地を国に返す公的な方法は相続土地国庫帰属制度。相続・遺贈で取得した土地が対象で、期限はない
  • 審査手数料は一筆14,000円、負担金は原則20万円。市街化区域の宅地などは面積に応じて高くなる(2026年10月時点)
  • 建物・担保権・境界不明の土地は却下。解体や測量が先に必要になり、総額は20万円を大きく超えることがある
  • 2026年9月末時点で帰属は3,231件。取下げの多くは「有効活用の見込み」か「通らないと判明」によるもの
  • 相続放棄の期限→価格の目安→査定・隣地・買取→国庫帰属、の順に確認すると損をしにくい

「いらない土地」と感じていても、調べてみると買い手の候補が見つかることは少なくありません。お金を払って手放す方法は、売れる可能性を確かめてからでも遅くありません。

手放し方を決める前に、その土地の価格の目安を知っておくと家族での話し合いが進めやすくなります。匿名・無料で、その場で結果を確認できます。

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※本記事は2026年10月時点の公開情報にもとづく一般的な説明であり、個別の事案について結論を保証するものではありません。国庫帰属制度の要件・負担金は法務省および管轄の法務局、相続放棄や登記の手続きは司法書士・弁護士、税務は税理士や税務署へご確認ください。

この記事を書いた人

鈴木 悠平(宅地建物取引士・2級FP技能士)

銀行系不動産会社で13年、不動産エージェントとして2年、通算15年以上売買仲介に携わり、新潟・八王子/府中・池袋など特性の異なるエリアで、売主・買主双方の立場から半期100件以上のご相談に対応してきました。「知らないだけで損をしてしまう」ケースを現場で数多く見てきた経験から、不動産売買で損をする人を一人でも減らすことを目指し、当サイト「イエノミカタ」を運営しています。

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