親から相続した実家を売ることになったけれど、どの不動産会社に相談すればいいのか分からない——。実家の売却は多くの方にとって初めての経験で、しかも家族の気持ちが絡むだけに、最初の相談先選びで迷うのは自然なことです。結論から言うと、相続した実家の売却は、「物件の価格帯と状況」によって相談先のタイプが変わります。都市部の高額な物件や権利関係が複雑な相続なら信託・銀行系の仲介会社、地方や標準的な価格帯の実家なら地場の有力店と大手の地元店舗を比べる、というのが現実的な考え方です。この記事では、大手仲介各社の公開データを手がかりにこの「すみ分け」を整理し、相続物件ならではの確認ポイント、会社選びの実践ステップまでを落ち着いて解説していきます。

結論:実家の売却は「価格帯と状況」で頼み先が変わる
最初に全体像からお伝えします。不動産仲介と一口に言っても、各社には得意分野があり、「どの会社に頼んでも同じ」ではありません。会社や担当者によって、提案の中身や販売力に差が出やすいのが実情です。相続した実家の場合、目安になる軸は「物件の価格帯」と「相続の複雑さ」の2つです。
都市部の高額物件・複雑な相続なら「信託・銀行系」が選択肢に
実家が都市部にあり価格帯が高い場合や、相続人が多い・資産の全体整理が必要といった複雑な事情がある場合は、信託銀行や銀行グループを母体とする仲介会社(信託・銀行系)が選択肢に入ります。このタイプの会社は、母体の銀行・信託銀行が持つ相続手続きや資産整理の相談窓口と連携した紹介チャネルを持つことが多いとされ、富裕層の資産整理や相続がらみの高額案件に接する機会が多い傾向があります。相続の段取りを踏まえた提案に慣れている担当者に出会いやすい環境、と言い換えてもよいでしょう。
標準的な価格帯なら「地場有力店+大手の地元店舗」の比較が現実的
一方、地方の実家や標準的な価格帯の物件であれば、地域の売買事情に通じた地場の有力店と、全国展開する大手の地元店舗を並べて比較するのが現実的です。地場の会社にはその地域ならではの買い手のつかみ方があり、大手には広告力や顧客基盤という強みがあります。どちらが合うかは物件次第なので、両方の話を聞いて見比べるのがおすすめです。大手と地元の違いや使い分けの考え方は、大手と地元どっちに頼むべきかの記事で詳しく整理しています。
データで見る各社の「主戦場」——1件あたり平均手数料
この「すみ分け」は、公開データからもある程度読み取れます。ここでは、不動産流通推進センター「2025不動産業統計集」ほかをもとにした、2024年度(2025年3月期)の大手仲介各社の「1件あたり平均手数料」を見てみましょう。仲介手数料は売買価格におおむね連動するため、1件あたりの手数料が大きい会社ほど、高額な物件を多く扱っていると考えられます。
信託・銀行系4社は「高額帯・相続案件」が主戦場と読み取れる
信託・銀行系の主要4社の1件あたり平均手数料は、野村の仲介+(野村不動産ソリューションズ)が約535万円、三菱地所ハウスネットが約618万円、みずほ不動産販売が約664万円、三菱UFJ不動産販売が約627万円です。この水準の手数料になるのは、相応に高額な物件が取扱いの中心にあるからだと考えられます。銀行・信託銀行の相続手続きと連携した紹介チャネルを持つことが多いという特徴とあわせると、高額物件・富裕層・相続案件がこのグループの主戦場と読み取れます。都市部の高額な実家や、資産全体の整理を伴う相続であれば、こうした会社に相談する価値は十分にあるでしょう。

件数型の大手3社は幅広い価格帯・標準的な実家が主戦場
一方、三井のリハウス・東急リバブル・住友不動産販売という件数型の大手3社の1件あたり平均手数料は、平均230〜297万円です。信託・銀行系と比べると単価が低く、その分、より幅広い価格帯の物件を数多く扱っていることがうかがえます。3,000万円前後以下の標準的な実家であれば、こうした件数型の大手の地元店舗や、地場の有力店が主戦場になります。各社の取扱高・件数・手数料収入といった詳しいデータは、大手仲介TOP10の詳細データの記事でまとめて比較しています。
数字を見るときの注意点——平均値であり、結果は担当者次第
ここで大切な注意点が2つあります。1つ目は、この数字はあくまで各社の「平均値」であり、中央値ではないということです。信託・銀行系でも標準的な価格帯の物件は扱っていますし、件数型の大手にも高額物件の実績は豊富にあります。平均値は「その会社の主戦場がどのあたりか」を推し量る目安にとどめてください。2つ目は、「信託・銀行系に頼めば安心」と言い切れるものではない、ということです。実際の売却の結果は、担当者の力量や物件との相性に左右される部分が大きく、どのタイプの会社でも担当者次第・物件次第という前提は変わりません。だからこそ、次にお伝えする「複数社を比較する」姿勢が重要になります。
相続した実家ならではの確認ポイント
相談先のタイプを考えるのと並行して、相続物件ならではの前提条件も確認しておきましょう。ここを飛ばすと、会社選び以前のところで手続きが止まってしまうことがあります。
名義変更(相続登記)を済ませてから売却するのが基本
相続した不動産は、名義が亡くなった方のままでは売却できません。相続人を確定し、遺産分割の合意をまとめ、名義変更(相続登記)を済ませてから売却に進むのが基本の流れです。相続登記は2024年4月から義務化されており、原則3年以内という期限も設けられています。戸籍の収集など書類集めに時間がかかることもあるため、売却を考え始めた段階で司法書士に相談しておくとスムーズです。義務化の内容や期限の考え方は、相続登記の義務化の記事で詳しく解説しています。

共有名義なら相続人全員の同意が必要
実家を兄弟などの共有名義で相続した場合、共有不動産の全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すると売却は進められないため、動き出す前に家族の意向をそろえておくことが欠かせません。窓口になる代表者を決めて不動産会社とのやり取りを一本化し、進捗を全員に共有する形にすると、すれ違いを防ぎやすくなります。兄弟間の話し合いの進め方は、実家売却で兄弟と揉めないための対策の記事も参考にしてください。
※相続が関わる売却は、相続人の確定・遺産分割・名義変更(相続登記)などの手続きが前提になります。手続きや必要書類は個別事情で変わるため、司法書士や弁護士への相談をおすすめします。
税制特例は「期限・要件あり」——早めに税理士へ確認を
相続した実家の売却では、要件を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」のような税制上の特例が使える場合があります。ただし、こうした特例には適用の期限や細かい要件が設けられており、使えるかどうかは物件の状況や売却の進め方など個別の事情で変わります。売却を進める前に税理士やお近くの税務署へ確認しておくと、「使えたはずの特例を逃してしまった」という事態を避けやすくなります。相続案件に慣れた不動産会社であれば、特例の期限を踏まえた売却スケジュールを一緒に考えてくれることもあります(適用の最終判断は税理士へ)。
※税金の取り扱いは、物件の所有期間・利用状況・他の控除との併用などで変わります。本記事は一般的な説明です。実際の課税については、最新の制度を国税庁や税理士・お近くの税務署でご確認ください。
不動産会社選びの実践ステップ
前提条件を確認できたら、いよいよ会社選びです。相続した実家ならではの事情を踏まえて、進め方を3つのステップに整理します。
①遠方に住んでいても「複数社比較」が基本
実家が遠方にあってなかなか現地に行けない場合でも、1社だけの話で決めず、複数社を比較するのが基本です。会社によって査定額もその根拠も、販売戦略も異なります。1社の言うことだけを判断材料にすると、その提案が妥当かどうかを確かめる物差しがありません。最近はオンラインや電話・メールでのやり取りに対応する会社も増えており、遠方からでも比較は十分に可能です。見るべきは査定額の高さではなく、根拠を成約事例つきで説明できるか、販売の進め方が具体的か、デメリットやリスクも正直に話すか、連絡が早く丁寧か——といった対応の質です。

②まず資産価値の目安を「家族の共通の土台」にする
不動産会社に相談する前の準備として効果的なのが、実家の資産価値の目安を把握しておくことです。相続では、売却の判断に関わる家族が複数いることがほとんどです。誰か一人が聞いてきた数字だけを土台にすると、その数字が妥当でも「本当にそうなの?」という疑問が残りやすくなります。客観的な目安を家族全員で共有しておくと、「売る・売らない」「どの会社に頼むか」という話し合いが進めやすくなり、各社の査定額の妥当性を見極める物差しにもなります。
家族で話し合う前の最初の材料として、実家の資産価値の目安をそろえておくのがおすすめです。当サイトの無料診断なら、物件情報を入力するだけで目安を確認でき、家族に共有する共通の土台として使えます。
③相談時に「相続案件の経験」を確かめる
実際に会社へ相談する際は、相続物件の取り扱い経験を確かめてみてください。たとえば「相続登記がまだの場合の段取り」「税制特例の期限を踏まえたスケジュール」「司法書士や税理士との連携」について質問したとき、具体的な進め方が返ってくるかどうかは、相続案件への慣れを推し量る手がかりになります。逆に、専任契約を急かす、他社の悪口が多い、メリットしか言わない、といった対応が見えたら慎重になったほうがよいでしょう。なお、会社選びの前に「そもそも実家をどうするか」から整理したい方は、実家の処分は何から始めるかの記事から読み進めるのがおすすめです。
実家の売却は、金額の大きさだけでなく家族の気持ちも動く、簡単ではないテーマです。それでも、「価格帯と状況で相談先のタイプを絞る」「相続ならではの前提を整える」「複数社を比較する」という順番で進めれば、迷いはずいぶん減らせます。まずは判断材料をそろえるところから始めてみてください。大手各社のサービス内容を横並びで比べたい場合は、大手仲介8社のサービス比較も参考になります。
まとめ:実家の売却は「価格帯と状況」で相談先を選ぶ
最後に、この記事の要点を整理します。
- 相続した実家の相談先は「物件の価格帯と相続の複雑さ」で変わる。都市部の高額物件・複雑な相続なら信託・銀行系、標準的な価格帯なら件数型大手の地元店舗+地場有力店の比較が現実的
- 1件あたり平均手数料(2024年度)を見ると、信託・銀行系4社は約535万〜約664万円、件数型大手3社は平均230〜297万円。各社の主戦場の違いが読み取れる
- ただし数字は平均値であり、実際の結果は担当者次第・物件次第。どのタイプでも複数社比較が基本
- 相続物件は名義変更(相続登記)が前提で、共有名義なら原則相続人全員の同意が必要。税制特例は期限・要件があるため税理士に確認を
判断に迷ったら、「自分の実家はどの価格帯か」「相続の手続きはどこまで進んでいるか」の2点から考えてみてください。相談先のタイプが絞れたら、あとは複数社の提案を見比べて、根拠を丁寧に説明してくれる担当者を選ぶ——この順番で進めれば大きく外しにくくなります。
その最初の一歩としておすすめなのが、実家の資産価値の目安を知っておくことです。無料で数分あれば確認でき、家族との話し合いや各社の査定額を見極める共通の土台になります。


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