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「実家を片付けて手放したいけれど、そのための費用が手元にない」——実家じまいの相談で、もっとも多くいただくお悩みのひとつです。片付けに数十万円、解体には百万円単位のお金がかかると聞けば、動き出す前に足がすくんでしまうのも当然だと思います。ただ、実務の現場から見ると、実家じまいの費用のすべてを手元の現金で先払いしなければならないわけではありません。売却代金から精算できる費用もありますし、片付けや解体をしないまま手放せる場合もあります。この記事では、手元資金が少ない状況でも実家じまいを進めるための4つの方法と、見落としやすい注意点を、不動産仲介の実務目線で整理します(2026年7月時点の情報です)。

お金がなくても実家じまいを進められる場合があります
最初にお伝えしたいのは、「費用が用意できない=実家じまいができない」ではない、ということです。実家じまいでかかるお金には、着手する前に自分で払う必要があるものと、売却代金が入るタイミングでまとめて精算できるものがあります。この2つを分けて考えるだけで、手元から出ていく現金はかなり抑えられることがあります。

実家じまいでお金がかかる場面を整理する
実家じまいでまとまった費用が発生するのは、主に「家財の片付け・遺品整理」「建物の解体」「相続登記などの手続き」「売却時の諸費用」「保有中の税金」の5つの場面です。金額の目安は、片付け・遺品整理が一戸建て3LDKで17万〜50万円程度、木造住宅の解体が30坪で100万〜180万円程度とされています(2026年7月時点の目安。荷物の量・立地・構造で大きく変わります)。費用の内訳と総額のイメージは実家じまいの費用はいくら?内訳と総額目安を3ケースで解説で詳しくまとめていますので、全体像をつかみたい方はあわせてご覧ください。
「先に払う費用」と「あとから精算できる費用」に分ける
手元の現金が必要になりやすいのは、片付けや解体のように、売却より前に作業が終わってしまう費用です。逆に、仲介手数料・登記費用・司法書士報酬・印紙代などは、売買代金を受け取る決済の場で精算するのが一般的で、自分の預金から先に出す場面はほとんどありません。つまり、手出しを減らす鍵は「片付けと解体をどう扱うか」に集約されます。
現場での実感としては、不動産会社に相談する段階で「手元の資金を出さずに進めたいです」とはっきり伝えておくことが大切です。この一言があるかないかで、提案される段取りが変わります。言いにくいことでも、珍しいことでもありません。相続で実家を引き継いだ方の多くが、同じ状況に直面しています。
費用をかけずに実家じまいを進める4つの方法
ここからは、手元資金が少ない状況で取り得る4つの方法を、それぞれの弱点も含めて見ていきます。①②を軸にしつつ、③で使える制度がないかを確認し、どうしても引き受けられない場合に④を検討する、という順番で考えると整理しやすくなります。

①現状渡しで買取に出す
1つ目は、家財を残したまま、建物も解体せずに不動産会社へ直接買い取ってもらう方法です。いわゆる「現状渡し」で、残置物の処分や解体を買主側が行う前提のため、片付け費用や解体費用を用意せずに手放せる場合があります。買主が業者であれば内覧の準備も不要で、遠方に住んでいて何度も通えない方にとっては負担が小さい進め方です。
一方で、はっきりお伝えしておきたいデメリットがあります。買取価格は、仲介で一般の買主に売る場合と比べて低くなりやすいことです。目安として市場価格の6〜8割程度になるケースが多いとされています(2026年7月時点。物件の状態や地域によって幅があります)。買主は解体費や修繕費、再販までのリスクを見込んで価格を提示するため、片付け費用が浮いた金額よりも、売却価格の下がり幅のほうが大きくなることもあります。「費用が出せないから買取しかない」と決めつけず、仲介ならいくらで売れそうかと並べて比べたうえで判断してください。買取と仲介の違いや向き不向きは空き家は買取と仲介どちらで売る?判断基準と手順で詳しく整理しています。
老朽化が進んでいる、再建築不可、共有持分がある、家財が大量に残っているなど、一般の買取会社では判断が難しい実家をお持ちの場合は、訳あり物件を専門に扱う買取サービスに相談してみるのも一つの方法です。「訳あり物件買取センター」は空き家・再建築不可・共有持分・残置物ありといった物件の買取を専門にしており、相談・現地調査・査定は無料です。対象は東京都で、住宅ローンを完済している(残っていない)物件が申込の対象となります。申込後にかかってくる電話で物件の状況を伝え、現地査定の日程まで決めておくとスムーズです。提示された金額が納得できるものかどうかは、他の会社の査定とも見比べたうえで判断されることをおすすめします。
②売却代金から諸費用を精算する仲介の組み方
2つ目は、仲介で売りながら、費用の支払いを売却代金が入るタイミングに寄せる方法です。仲介手数料(成約価格が400万円超の場合は「成約価格×3%+6万円+消費税」が上限の目安)、抵当権抹消や住所変更の登記費用、司法書士報酬、印紙代は、いずれも決済日に売買代金から差し引く形で精算するのが一般的です。
問題になりやすい片付けと解体についても、段取りしだいで手出しを抑えられることがあります。たとえば、残置物を残したまま引き渡す条件で買主を探す、建物を解体せず古家付き土地として売り出し解体は買主に委ねる、どうしても解体が必要な場合は工事代金の支払いを決済日以降にできないか業者に相談する、といった方法です。すべてが通るわけではなく、その分が売却価格に反映されることもありますが、「先に払えないので売れない」と諦める前に、担当者と一緒に組み立ててみる価値はあります。
なお、検討の前に「手残りがいくらになりそうか」の見当をつけておくと話が早くなります。おおまかな試算は売却シミュレーターで行えますので、諸費用を差し引いた金額をイメージしてから相談に臨むと安心です。
③自治体の補助金・支援制度を確認する
3つ目は、実家のある自治体が用意している補助金や支援制度を使う方法です。老朽化した空き家の解体費用の一部を補助する制度、家財の処分費用を補助する制度、空き家バンクへの登録に伴う片付け・改修の支援など、自治体によって内容はさまざまです。
ただし、期待しすぎるのは禁物です。補助金には予算枠があり、年度の途中で受付が終了することがあります。着工前の申請が条件になっていることが多く、先に工事を始めてしまうと対象外になります。さらに、工事完了後に実績報告をしてから振り込まれる「後払い(精算払い)」の制度が大半で、いったんは自分で工事代金を立て替える必要がある点は、手元資金が少ない場合にとくに注意したいところです。制度の探し方や具体的な確認手順は実家じまいで使える補助金・もらえるお金まとめ【2026年版】にまとめています。まずは実家のある自治体の窓口に、制度の有無と申請の順番を確認してみてください。
④相続放棄を検討する(注意点は多くあります)
4つ目は、相続そのものを引き受けない、つまり相続放棄という選択です。売っても値が付きにくく、維持費や解体費だけが残るような不動産では、現実的な選択肢になることがあります。ただし、次の点は正確に理解しておく必要があります。
まず、相続放棄は原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。そして、放棄すると預貯金など他のプラスの財産も一切受け取れません。実家だけを放棄する、といった選び方はできません。
そして最も誤解されやすいのが、放棄すれば家の管理から即座に解放されるとは限らない、という点です。2023年4月1日に施行された改正民法940条では、相続放棄をした人は、放棄の時にその財産を「現に占有している」場合、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定められています。改正前の「管理を継続する義務」より対象は明確になりましたが、実家を現に占有していた方は、引き渡すまで一定の責任を負います。相続人全員が放棄した場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があり、その際の予納金として数十万円〜100万円程度が必要になることもあります(2026年7月時点の目安。事案により異なります)。「お金がかからない方法」のつもりが、費用と手間が生じることもあるわけです。相続放棄後の家の扱いは相続放棄したら家はどうなる?で詳しく解説しています。判断にあたっては、弁護士や司法書士など専門家への相談をおすすめします。
判断を誤らないための順番と注意点
4つの方法を挙げましたが、選ぶ順番を間違えると、かえって費用や後悔が増えることがあります。現場で見てきた注意点をお伝えします。

まず実家の価値を知ってから、かける費用を決める
手元資金が少ないときほど、最初にやっていただきたいのは「実家にどれくらいの値が付きそうか」を確かめることです。見込み額が分かれば、片付けや解体にお金をかけて売るほうがよいのか、現状渡しで早く手放すほうが合っているのかを、数字で比べられます。値が付く家なのに、資金がないという理由だけで安く手放してしまうのは、もったいない進め方です。
費用をどこまでかけるかを決める前に、実家の資産価値の目安を確認しておくと、判断の土台ができます。売れる見込みの金額が分かれば、売却代金から精算できる費用の範囲も見えてきます。無料で数分あれば確認できますので、動き出す前の一歩としてお試しください。
手元資金がないときにやりがちな3つの失敗
1つ目は、「売れやすくするために」と先に解体してしまうことです。解体費用の手出しが発生するうえ、更地にすると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がり、相続した空き家の3,000万円特別控除の適用要件にも影響する場合があります(2026年7月時点。要件は国税庁の情報や税理士にご確認ください)。
2つ目は、判断を先送りして空き家のまま放置することです。固定資産税や火災保険料、草木の管理費は毎年かかり続けます。管理不全のまま放置されて特定空家等に指定されると、住宅用地特例が解除されて税負担が増える可能性もあります。
3つ目は、相続放棄を検討している段階で、家財を売却したり処分したりしてしまうことです。財産の処分にあたる行為をすると、相続を承認したもの(単純承認)とみなされ、放棄ができなくなる可能性があります。放棄の可能性が少しでもあるうちは、片付けに手をつける前に専門家へ相談してください。
住宅ローンが残っている場合は道筋が変わります
ここまでは、住宅ローンを完済した実家を前提にお話ししてきました。もし返済中のローンが残っていて、売却代金でも完済できない見込みであれば、話の組み立て方は変わります。金融機関との調整が前提になるため、まずは返済状況を確認し、早い段階で金融機関や専門家に相談することが大切です。返済が難しくなったときの選択肢は住宅ローンが払えないとどうなる?で整理していますので、該当する方はそちらをご覧ください。
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報をもとに、費用や制度の目安をまとめたものです。実際の費用・税制・補助金・法制度の適用は、物件の状態や地域、その時点の制度によって異なります。個別の判断にあたっては、不動産会社・税理士・司法書士・弁護士・自治体窓口など専門家にご確認ください。
まとめ:手出しを減らす順番で考えれば、実家じまいは動き出せます
最後に、この記事の要点を整理します。
- 実家じまいの費用は、手元から先に払うもの(片付け・解体)と、売却代金から精算できるもの(仲介手数料・登記費用など)に分けて考える
- 手出しを抑える方法は4つ。①現状渡しで買取に出す ②売却代金から諸費用を精算する仲介の組み方にする ③自治体の補助金を確認する ④相続放棄を検討する
- 買取は片付け・解体の費用を抑えやすい一方、価格は仲介より低くなりやすい。補助金は後払いが多く立て替えが必要な場合がある。相続放棄は3か月の期限があり、現に占有していた財産には引き渡しまでの保存義務が残る(2023年4月施行の改正民法940条)
- 最初にやるべきは、実家にどれくらいの値が付きそうかを知ること。数字が分かれば、費用をかけて売るか、そのまま手放すかを比べて選べる
お金がないから何もできない、と抱え込む必要はありません。順番を整えれば、手元の現金を大きく減らさずに進められる道が見つかることもあります。まずは現状の把握から始めていきましょう。
実家じまいの進め方を決める土台になるのが、その家の価値です。売却した場合の目安が分かれば、どこまで費用をかけられるか、現状渡しで手放すべきかの判断がしやすくなります。無料で確認できますので、最初の一歩としてお使いください。
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