不動産を売って利益が出ると、「翌年に譲渡所得税がかかる」と聞いて、いくら払うのか、どう備えればいいのか不安になっていませんか。相談の現場で意外と多いのが、「売却代金が入って安心して使っていたら、翌年にまとまった納税が来て慌てた」というケースです。譲渡所得税は、売った年ではなく売った翌年にまとめて納めるため、代金を使い切ってしまうと納税資金が足りなくなることがあります。結論からお伝えすると、備え方の柱は、①税額の見当をつける、②納税分の資金を取り分ける、③特例で減らせないか確認する、④確定申告を準備する、の4つです。この記事では、不動産売買仲介の現場で売却後の資金計画のご相談に応じてきた経験をもとに、翌年の譲渡所得税への備え方を整理します。なお、税制の説明はいずれも2026年7月時点の一般的な内容です。

結論:譲渡所得税は翌年にまとめて来る。備えは4ステップ
譲渡所得税で慌てないための備え方は、次の4ステップで考えると整理しやすくなります。
- ①税額の見当をつける:利益がいくら出そうか、税率はどれくらいかを概算する
- ②資金を取り分ける:売却代金のうち納税分を別に確保しておく
- ③特例で減らせないか確認する:使える控除や特例がないかを早めに調べる
- ④確定申告を準備する:必要書類をそろえ、翌年の申告に備える
この4つを売却の段階から意識しておくと、翌年の納税で資金繰りに詰まることを避けられます。税金は「利益が出たとき」にだけかかるので、まずは利益が出るかどうかから確認しましょう。
そもそも譲渡所得税はどう計算されるのか

譲渡所得税は、売却額そのものにかかるわけではありません。課税されるのは、売却価格から取得費(買ったときの価格や取得にかかった費用)と譲渡費用(売るためにかかった費用)を差し引いた利益(譲渡所得)の部分です。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
この譲渡所得に税率をかけたものが税額です。税率は所有期間で変わり、2026年7月時点の目安は、売った年の1月1日時点で所有5年超の長期譲渡所得が合計約20.315%、5年以下の短期が合計約39.63%とされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211、2026年7月確認)。相続した不動産の場合は亡くなった方の所有期間を引き継げるとされ、長期の税率が目安になることが多くあります。
取得費が分からないときは「概算取得費」が使える
先祖代々の土地など、買ったときの価格が分からない場合もあります。その場合は、売った金額の5%相当額を取得費とすることができるとされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.3258、2026年7月確認)。ただし、実際の取得費のほうが5%より高ければ、そちらを使ったほうが税金は安くなります。購入時の契約書や領収書が残っていないか、まず探してみることをおすすめします。
いつ払うのか:納税のスケジュール
備えるうえで最も大事なのが、「いつ払うのか」を正確に知ることです。譲渡所得税と住民税では、納めるタイミングが違います。
| 税金 | 納めるタイミング |
|---|---|
| 所得税(譲渡所得税)・復興特別所得税 | 売った翌年の2月16日〜3月15日の確定申告で納付 |
| 住民税 | 確定申告後、翌年6月ごろから納付(給与天引きまたは納付書) |
譲渡所得の申告は、売った年の翌年2月16日から3月15日までに行うとされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.3102、2026年7月確認)。つまり、例えば2026年中に売った場合、所得税の申告・納付は2027年の2月16日〜3月15日、住民税はその後の2027年6月ごろから、という流れになります。売却から納税まで1年近く空くため、その間に代金を使い切らないよう注意が必要です。
この「1年近い時間差」が、譲渡所得税でつまずく最大の原因です。売却直後は手元に大きな現金があるため、住宅ローンの完済や新居の購入、生活費などに充てているうちに、納税のことを忘れてしまいがちです。特に住民税は、所得税を納めた後の6月ごろから改めて請求が来るため、「所得税を払ったのにまた税金が来た」と感じる方もいます。所得税と住民税は別のタイミングで来る、と最初から見込んでおくと、二段構えで慌てずに済みます。
備え方①②:税額の見当をつけ、資金を取り分ける

納税で慌てないための最も確実な備えは、売却代金が入った時点で納税分を別に取り分けておくことです。おおよその流れは次のとおりです。
- 利益が出るかを確認する:売却価格から取得費・譲渡費用を引いて、プラスになりそうかを見積もる。
- 税率の目安をかける:長期なら約20.315%、短期なら約39.63%が目安。特例が使えそうなら後述のとおり差し引く。
- 納税分を別口座などに取り分ける:概算の税額を、生活費や他の用途と混ぜず、翌年の納税用に確保しておく。
正確な税額は特例の適用などで変わりますが、「多めに見積もって取り分けておく」ほうが安全です。取り分けが足りず、翌年に慌てて資金を工面する事態を避けられます。売却全体の費用と手取りの考え方は売却にかかる費用と税金・手取りの記事に、費用と支払時期を横断的に押さえたい方は自己資金と支払時期の全体像の記事にまとめています。
例えば、こう見積もる
考え方をつかむために、仮定の例で整理します(金額は説明のための仮のもので、実際は物件・特例の適用で変わります)。例えば、長く保有していた土地を売り、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益(譲渡所得)が出たとします。所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得にあたり、税率の目安は合計約20.315%です。この場合、譲渡所得におおよそ2割強をかけた金額が、翌年に納める税金の目安になります。特例(マイホームや相続空き家の3,000万円特別控除など)が使えれば、譲渡所得からその分を差し引いてから税率をかけるため、税額はさらに小さくなります。
実務でお伝えしているのは、「特例が使えるかどうかがはっきりするまでは、特例なしの金額で多めに取り分けておく」という考え方です。特例が使えれば取り分けた分が余るだけで済みますが、逆に特例を当てにして取り分けが少ないと、適用外だったときに納税資金が足りなくなります。安全側に倒しておくのがおすすめです。
備え方③:特例で税金を減らせないか確認する
譲渡所得税は、要件を満たす特例を使うと大きく減らせることがあります。使える可能性のある主な特例を知り、早めに確認しておきましょう。いずれも要件が細かいため、適用の可否は必ず税理士や税務署で確認してください。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
自分が住んでいた家(マイホーム)を売った場合、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があるとされています(出典:国税庁タックスアンサーNo.3302、2026年7月確認)。この控除を使うと、利益が3,000万円以内なら譲渡所得税がかからない計算になる場合があります。ただし、過去にこの特例を受けていないことや、親族など特別な関係にある人への売却でないことなどの要件があります。
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除
相続した空き家を売る場合は、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は一人あたり2,000万円)を差し引ける特例を検討できます。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、令和9年(2027年)12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなど、要件が細かいのが特徴です(出典:国税庁タックスアンサーNo.3306、2026年7月確認)。要件のチェックリストは相続した家の売却にかかる税金と3,000万円特別控除の記事で詳しく解説しています。
相続財産を売ったときの取得費加算の特例
相続した不動産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限(通常は相続開始から10か月)の翌日以後3年以内に売ると、支払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を減らせる「取得費加算の特例」を検討できる場合があります(出典:国税庁タックスアンサーNo.3267、2026年7月確認)。相続税を納めた方は、この期限を意識して売却時期を考えると、税負担を抑えられることがあります。売却タイミングと税制の関係は実家の売却タイミングの記事も参考になります。
※これらの特例は、複数を同時に使えない場合や、住宅ローン控除など他の制度と併用できない場合があります。どの特例が有利かは個別の事情で変わるため、本記事は一般的な説明にとどめます。実際の適用可否と税額は、最新の制度を国税庁や税理士・お近くの税務署でご確認ください。
備え方④:確定申告を準備する

譲渡所得があった場合、たとえ特例で税額がゼロになるときでも、確定申告が必要になるのが一般的です(特例の適用を受けるために申告が要件になっているものが多いため)。翌年の申告に向けて、次のような書類を早めにそろえておくとスムーズです。
- 売買契約書:売ったときと、買ったとき両方の契約書のコピー
- 取得費・譲渡費用が分かる領収書:仲介手数料、測量費、解体費などの領収書
- 特例に必要な書類:住民票、登記事項証明書、被相続人居住用家屋等確認書(相続空き家特例の場合)など
特に取得費を証明する購入時の契約書は、なくすと概算取得費(売った金額の5%)しか使えず、税金が高くなることがあります。売却を決めたら、早めに探しておきましょう。相続した不動産の場合は、亡くなった方が購入したときの資料が家のどこかに残っていることもあるため、遺品整理の際にあわせて確認しておくと安心です。相続した家を売る全体の流れは相続した家を売る流れの記事にまとめています。
申告そのものは、国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Taxを使って自分で行うこともできますが、譲渡所得の計算や特例の適用は間違えると税額が大きく変わります。利益が大きい場合や複数の特例が絡む場合は、税理士に依頼するほうが結果的に安心なことも多くあります。費用をかけてでも正確に申告するか、自分で行うかは、譲渡所得の大きさと特例の複雑さで判断するとよいでしょう。
専門家に確認したいこと
譲渡所得税は、特例の適用や取得費の扱いで税額が大きく変わります。早めに専門家へ確認しておくと、備えの精度が上がります。
- 税理士・税務署:譲渡所得税の概算、使える特例の組み合わせ、確定申告の進め方
- 不動産会社:譲渡費用に含められる費用、取得費の資料の探し方
- 司法書士:相続物件の場合の登記関係の書類
特例には期限のあるものが多く、売却時期の選び方で使えるかどうかが変わることもあります。売却を具体的に検討する段階で、早めに相談しておくと選択肢が狭まらずに済みます。
迷ったら、まず売却額の目安から税額を見積もる
翌年の税金に備える出発点は、「その不動産がいくらで売れそうか」を知ることです。売却額の目安が分かると、利益がどれくらい出そうか、税率をかけるといくらの納税になりそうかの見当がつき、取り分けておくべき金額が見えてきます。「まだ売っていないから」と後回しにしがちですが、目安があるからこそ、余裕をもって納税に備えられます。
翌年の納税に備えるうえで、まず知っておきたいのが売却額の目安です。当サイトの宅建士による無料の資産価値チェックで、税額を見積もる出発点となる目安を確認してみてください。
まとめ:4ステップで翌年の納税に備える
売却翌年の譲渡所得税への備えは、①税額の見当をつける → ②納税分を取り分ける → ③特例で減らせないか確認する → ④確定申告を準備する、の4ステップが基本です。譲渡所得税は売った翌年の2月16日〜3月15日に確定申告で納め、住民税はその後の6月ごろから納めるため、売却代金を使い切らず、納税分を別に確保しておくことが何より大切です。マイホームや相続空き家の3,000万円特別控除、取得費加算の特例など、税額を減らせる制度は期限や要件があるため、早めに税理士へ確認しておきましょう。まずは売却額の目安を知り、余裕をもって翌年の納税に備えてください。
次に読む記事として、相続不動産全体の出口を整理したいなら相続した不動産をどうするかの記事、相続した家を売る流れを知りたいなら相続した家を売る流れの記事、仲介手数料など譲渡費用の相場を知りたいなら仲介手数料の相場の記事もあわせてご覧ください。


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