ハザードマップで色がない場所も浸水する理由|内水ハザードマップと多摩26市一覧

ハザードマップで色がない場所も浸水する(調布・狛江の土地の高さの地図) 不動産の基礎知識

2019年の台風19号で、調布市では214件の住宅が、床上・床下まで浸水しました。

でも、このとき多摩川の堤防は切れていません。浸水は、川の水があふれる「洪水」とは別の仕組みで起きました。

地図には、何の水害を計算したものかという「前提」があります。では、ハザードマップで色がついていない家は、安心していいのでしょうか。この記事では、調布市・狛江市の公的な記録と、国や市のハザードマップに書かれている注意書きをもとに、その理由を整理します。最後に、多摩26市の洪水と内水の地図の一覧も載せています。

先に結論です。

  • 水害のハザードマップには「洪水」と「内水」の地図があり、それぞれ何の水害を、どんな雨で計算したかが決まっています
  • 色がないのは「その地図の条件では、浸水する区域として示されていない」という意味です。色だけで、安全かどうかは決まりません
  • 洪水と内水の両方の地図、土地の高さ、家の造り。この3つをあわせて見ておけば、備えられます

同じ内容を動画でも解説しています(約8分)。

同じ内容を、断面図とアニメーションで解説した動画(約8分)です。

1. 水害ハザードマップは「洪水(外水)」と「内水」を分けて見る

水害には、洪水・内水のほかにも高潮や土砂災害などいろいろな種類があります。この記事では、多摩で家を考えるときに押さえておきたい「洪水」と「内水」の2つを取り上げます。

洪水(外水):川の水が、堤防を越える・壊す

川の水が堤防を越えたり、堤防を壊したりして、街に流れ込む水害です。専門の言葉では「外水(がいすい)」と呼びます。堤防のない区間からあふれるのも、外水です。2019年の台風19号では、世田谷区の二子玉川で、堤防のない区間から多摩川の水があふれました。

洪水(外水)の断面図。川の水が堤防を越えて街に流れ込む
洪水(外水)は、川の水が堤防を越える・壊す水害

内水:街に降った雨を、流しきれない

街に降った雨は、下水道や水路を通って、最後は川に流れていきます。その量が流せる量を超えると、川から離れた場所でも水があふれます。これが「内水(ないすい)」です。法律では「雨水出水(うすいしゅっすい)」と呼ばれています。

内水の断面図。街に降った雨が流しきれず、低い所にたまる
内水は、街の雨を流しきれずに起きる。川から離れた場所でも起きる

川の水位が高いと、街の雨が出ていけない

もうひとつ大事なのが、2つの水害のつながりです。川の水位が高くなると、街の雨は川に出ていきにくくなります。排水の出口から、川の水が逆に入ってくることもあります。堤防を越えていなくても、低い所が水につかります。

川の水位が高いとき、排水の出口(樋管)から川の水が逆流する断面図
堤防を越えていなくても、排水の出口から逆流して低い所が水につかる

2019年の調布と狛江でも、多摩川の水位が上がったことが、街の排水に影響しました(3章で詳しく見ます)。

2. ハザードマップで色がない場所も浸水する3つの理由

理由①【見る地図の違い】多摩川の洪水の地図は、内水を計算に入れていない

国が作った多摩川の洪水浸水想定区域図(市の洪水ハザードマップのもとになる地図)には、国土交通省の京浜河川事務所が、こんな注意書きを付けています。

このシミュレーションの実施にあたっては、支川の決壊による氾濫、シミュレーションの前提となる降雨を超える規模の降雨による氾濫、高潮及び内水による氾濫等を考慮していませんので、この洪水浸水想定区域に指定されていない区域においても浸水が発生する場合や、想定される水深が実際の浸水深と異なる場合があります。

出典: 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所「多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域図」注意事項

つまり、この地図で色がないのは「この地図の条件では、浸水する区域として示されていない」ということです。市のハザードマップには、この区域図に内水の情報を重ねたものもありますが、重ねていないなら、内水は別の地図で確認する必要があります。

理由②【計算の前提】内水ハザードマップも、「1つの降り方」で計算した結果

調布市は2026年4月3日、法律(水防法)にもとづく内水の浸水想定区域を指定・公表しました。想定した雨は、1時間に153ミリ、24時間で690ミリ。1,000年に1回くらいの雨です。

それでも、調布市自身がこう書いています。

着色のない場所でも、雨の降り方によっては浸水が発生する可能性がありますのでご注意ください。

出典: 調布市「雨水出水浸水想定区域の指定及び公表」

雨の量を、1時間あたりで並べてみます。

調布市の1時間あたりの雨の量 ミリ
下水道の整備の基準 50
新しい計画(2026年3月)の目標 65
市内で過去に降った最大の雨(2005年9月) 91
内水の地図の前提 153

出典: 調布市雨水管理総合計画 概要版(令和8年3月)、調布市「雨水出水浸水想定区域の指定及び公表」

ただし、1時間の量だけで浸水するかどうかが決まるわけではありません。降り続く時間、降る場所、そのときの川の水位でも変わります。

理由③【家ごとの違い】水の入りやすさは、地図に出ない

ハザードマップは「その場所に、どれくらいの深さの水が来るか」を示す地図です。家ごとの造りは出てきません。道路に少し水がたまっただけでも、家の造りによっては、家の中に水が入ります。

道路より低い玄関、半地下の駐車場、地下室の3つの家の断面図
同じ深さの水でも、家の造りで被害は大きく変わる
  • 道路より低い玄関
  • 半地下の駐車場
  • 地下室

同じ深さの水でも、出入口の高さや、水を止める備えがあるかどうかで、被害は変わります。

3. 2019年、調布と狛江で起きたこと

2019年10月12日。台風19号は、夜9時ごろ、狛江市の近くを通りました。多摩川の水位は、どんどん上がっていきます。

水路の水位が上がり、低い場所からあふれた

川の水位が上がると、そこにつながる水路の水が川へ出ていけず、水路の水位も高くなります。これを「バックウォーター」と呼びます。川の水そのものが入ってくるのではなく、水路の水が押し上げられるイメージです。そして、低い場所から水があふれ始めました。

多摩川の水位が上がると、つながる水路の水面も上がり、低い所からあふれる縦断面図
川の水位が上がると、つながる水路の水面も上がる(バックウォーター)

さらに、水が逆向きに流れ込む「逆流」も起きました。

  • 調布市: 大きな水路(調布幹線)の水位が上がり、そこに流れ込む小さな水路へ水が逆流して、低い場所からあふれました
  • 狛江市: 雨を流しきれなかったことと、多摩川からの逆流が重なって、浸水が広がったとされています

被害の数字

被害
調布市 床上・床下浸水 214件(うち染地3丁目 床上120件・床下79件)
狛江市 駒井町・猪方・和泉などで 448世帯が浸水

出典: 調布市「令和元年東日本台風(台風第19号)調布市の記録」(2020年3月25日時点)、狛江市「令和元年東日本台風に伴う浸水被害対策 最終報告(令和2年9月)」

※調布市の「住家被害246件」という数字を見かけることがありますが、これは屋根の破損や雨漏りなども含めた合計です。床上・床下浸水は214件です。

浸水が多かったのは、多摩川に近い、まわりより低い土地でした。

樋管(ひかん)の難しさ

川と街の境目には、堤防を横切って街の雨水を川へ流す「樋管(ひかん)」という施設があります。

樋管のゲートが開いていて、街の雨水が川へ流れ出る断面図
川の水位が低いうちは、樋管から自然に川へ流れ出る
樋管のゲートを閉め、ポンプで街の水をくみ出す断面図
ゲートを閉めると逆流は防げるが、自然には排水できなくなる

川の水位が高いとき、ゲートを開けたままだと、川の水が逆流するおそれがあります。ゲートを閉めれば逆流は防げますが、そこから自然に排水することはできなくなります。雨が続いていれば、ポンプでくみ出したり、水を一時的にためたりする対策が必要です。雨と川の水位と設備を見ながら操作しなければならない、難しい施設です。

2019年のあと、調布市と狛江市は、樋管の操作のルールを決め、2022年5月には離れた場所から操作できるようにしました。水路には逆流を防ぐゲートも付けています。国も、多摩川の川底を掘って水を流れやすくする工事を進めてきました。

同じ年、多摩川の対岸の川崎市・武蔵小杉でも、排水の出口から多摩川の水が逆流して、街が水につかりました。地下に電気設備があった高層マンションでは、停電してエレベーターも使えなくなっています。浸水の経路は場所ごとに違いますが、川の水位が上がると街の排水に影響する点は、川のどちら側でも同じです。

4. 家で確認しておきたい3つのこと+避難(チェックリスト)

① 洪水と内水、両方の地図を見る

  • □ 洪水のハザードマップで、家の場所の色(浸水の深さ)を見た
  • □ 内水のハザードマップ(または、洪水と内水を1枚に表示した地図)を見た
  • □ 色の意味を、地図の凡例で確かめた
  • □ 洪水の地図で、浸水が続く時間と「家屋倒壊等氾濫想定区域」(家が壊れたり流されたりするおそれのある区域)も見た

洪水の地図は、当サイトの「ハザードマップ&法令まるわかりチェッカー」で、住所から国の地図を重ねて見られます。内水は、各市の地図で確認してください(5章の一覧)。

注意したいのは、国の「重ねるハザードマップ」にも内水の表示はありますが、載っているのはデータの提供を許可した一部の市町村だけだということです。2026年10月11日に確認したところ、東京都で載っていたのは昭島市と福生市の2市だけでした。重ねるハザードマップで内水が表示されない=内水の心配がない、ではありません。

② 色がなくても、土地を見る

  • □ 家が、まわりより低い土地にないか(国土地理院の地理院地図の「色別標高図」で見られます)
  • □ 過去に浸水した場所かどうか(市の浸水実績の一覧。5章の一覧に載せています)
  • □ 玄関と道路の段差を、現地で見た

③ 家の造りを見る

戸建て

  • □ 半地下の駐車場・地下室はないか
  • □ 道路より低い玄関になっていないか

マンション

  • □ 電気の設備(電気室)やポンプが、地下にないか
  • □ 水を止める板(止水板)や、水のう・土のうが用意されているか

マンションのことは、管理組合や管理会社に聞けば教えてもらえます。内見のときに見るところは「中古マンション内見チェックリスト完全版」にもまとめています。

+ 避難先と、そこまでの道

  • □ 避難先は、市が「洪水のときに使える」と案内している避難所か(市のハザードマップや防災ページで確認)
  • □ そこまでの道が、低い土地や浸水が想定される場所を通っていないか(ハザードマップと土地の高さの地図で確認)

実際に避難所が開いているかどうかは、そのときの市の情報で確認してください。

5. 多摩26市の水害ハザードマップ一覧(洪水・内水・浸水実績)

多摩26市の公式ページを、2026年10月11日に1つずつ確認しました(小平市は、確認した日にホームページがシステム障害で見られなかったため、過去に公開されていたページの内容です)。

一覧を作ってわかったこと

  • 内水の地図や情報を何らかの形で出している市は、26市のうち25市
  • そのうち15市で、法律(水防法)にもとづく内水の浸水想定区域の指定を確認しました。日付がわかる市の多くは、2026年2〜6月に指定・公表したばかりです。立川市にも内水の地図がありますが、指定の日付は確認できていません
  • 新しく指定した内水の地図が、市が配っている冊子のハザードマップにはまだ入っていない市もあります(武蔵野市・清瀬市・武蔵村山市など)。冊子だけでなく、市のホームページの「下水道」のページも見てください
  • 東京都が2026年3月に法律にもとづいて指定した内水の区域は、23区の下水道の区域です。多摩は、それぞれの市が指定・公表しています(多摩の市のハザードマップに使われている都の「浸水予想区域図」とは別のものです)

内水の欄の見方

  • 指定(年月): 法律にもとづく内水の浸水想定区域を指定済み。年月は、市のページで指定日・公表日が確認できたものだけ載せています
  • 市の内水図: 市が作った内水の地図(法律にもとづかないもの)
  • 1枚に表示: 東京都の「浸水予想区域図」をもとに、洪水と内水を1枚の地図に表示
  • 見つからず: 市のホームページで内水の地図が見つからなかった(「ない」と断定するものではありません)
市 洪水の地図 内水 浸水実績
八王子市 洪水ハザードマップ 市の内水図(洪水と1枚に表示) 浸水実績
立川市 外水ハザードマップ 内水の地図(水防法にもとづくと明記・指定日は未確認) —
武蔵野市 浸水ハザードマップ 指定(2026年3月)・冊子は未反映 浸水実績
三鷹市 浸水ハザードマップ 1枚に表示 浸水実績
青梅市 防災マップ 見つからず —
府中市 水害ハザードマップ 市の内水図(同じページ) 浸水実績
昭島市 洪水ハザードマップ 指定 —
調布市 洪水・内水ハザードマップ 指定(2026年4月) 浸水実績
町田市 洪水ハザードマップ 指定(2026年3月) —
小金井市 防災マップ 1枚に表示 浸水実績
小平市 ホームページ障害中(復旧後に掲載) 過去の公開ページでは1枚に表示 ホームページ障害中
日野市 防災ガイドブック 指定(2026年2月) 災害履歴マップ
東村山市 洪水ハザードマップ 1枚に表示 浸水実績
国分寺市 防災・ハザードマップ 指定 浸水実績
国立市 洪水ハザードマップ 指定(2025年11月) —
福生市 多摩川洪水・内水ハザードマップ 指定 道路冠水箇所
狛江市 ハザードマップ 指定 浸水実績
東大和市 浸水ハザードマップ 1枚に表示 —
清瀬市 洪水ハザードマップ 指定 洪水ハザードマップに道路冠水箇所
東久留米市 洪水ハザードマップ 指定 浸水実績の案内
武蔵村山市 浸水ハザードマップ 指定(2026年3月) —
多摩市 ハザードマップ 指定(2026年3月) 浸水実績
稲城市 洪水ハザードマップ 指定(2026年4月公表) 浸水実績
羽村市 洪水ハザードマップ 指定(2026年6月) 洪水ハザードマップの裏面
あきる野市 ハザードマップ 1枚に表示 浸水実績
西東京市 浸水ハザードマップ 1枚に表示 市に問い合わせ

※2026年10月11日時点で、各市のホームページを確認した内容です。地図は見直されることがあるため、最新の地図は各市のページで確認してください。「—」は、市のホームページで一覧が見つからなかったものです。
※小平市は、確認した時点でホームページがシステム障害で見られなかったため、復旧後に更新します。

6. 家を買う・借りる方へ(宅建士の現場から)

2020年8月28日から、不動産の取引では、水防法にもとづいて市町村が作った水害ハザードマップ(洪水・内水・高潮)の上で、物件がおおむねどこにあるかを、重要事項説明で説明することになりました(国土交通省)。あわせて、浸水想定区域の外にあっても、水害の心配がないと誤解させないよう配慮することも求められています。

ただ、私の現場の感覚では、重要事項説明の場で初めてハザードマップの話をすることは、まずありません。物件を紹介する時点で、伝えています。

そして正直に書くと、水害について、現場でそこまで細かく見てきたわけではありません。半地下や、完全な地下がある物件なら少し気にする。浸水した履歴を聞いて、あれば少し気にする。なければ、そこまで気にしない。私が見てきた範囲では、不動産会社も、お客さんも、まだ水害への関心は高くないと感じています。

だからこそ、この記事の3つの確認は、自分でやっておく価値があります。内水の地図も、法律にもとづくハザードマップなら説明の対象です。ただ多摩では、内水の区域を指定したばかりで、まだ冊子のハザードマップに入っていない市や、法律にもとづかない参考の地図しかない市もあります(5章)。紙の地図で色がないと言われても、

  • 洪水だけでなく、内水の地図も見たか
  • まわりより低い土地ではないか、浸水の実績はないか
  • 半地下・地下室・道路より低い玄関など、家の造りはどうか

この3つは、自分の目で確かめておきましょう。気になることがあれば、不動産会社に「浸水の実績はありますか」と聞いてみてください。私なら、内水の地図と浸水実績の一覧を、市のホームページで自分でも見ておきます。

水害への備えは、火災保険の水災補償にも関わります。保険のタイミングについては「火災保険はいつ入る?決済当日に震災が起きた話」も参考にしてください。

まとめ

  • 水害のハザードマップには、洪水と内水の地図があります。それぞれ、何の水害を、どんな雨で計算したかが決まっています
  • 地図は、備えを考える大切な手がかりです。色がついている場所が、住めない場所ではありません
  • そして、色だけで、安全かどうかは決まりません
  • 洪水と内水の地図、土地の高さ、家の造り。この3つをあわせて確認しておけば、備えられます

2019年の台風を経験された方は、差し支えなければ、当時役に立った備えを、動画のコメント欄で教えてください。

出典

ご注意

この記事は、2026年10月11日時点の公表資料をもとにしています。被害の件数や対策の内容は、各市の公表資料の時点のものです。ハザードマップは見直されることがあるため、最新の地図は各市のホームページでご確認ください。この記事は、特定の地域や物件の安全性・危険性を判断するものではありません。住まいの判断は、自治体や専門家にご確認ください。

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