「実家じまいを進めたいけれど、仏壇や神棚をどうすればいいのか分からない」。実家の片付けで最後まで手を付けられずに残りやすいのが、仏壇・神棚・位牌といった品々です。ごみとして出してよいものなのか、誰に相談すればよいのか、費用はどれくらいかかるのか。判断材料がないまま手が止まってしまう方は少なくありません。結論からお伝えすると、最初の相談先は処分業者ではなく、菩提寺(先祖代々お世話になっているお寺)や地元の神社です。作法や考え方は宗派・地域・ご家庭によって異なり、全国共通の正解があるわけではないからです。この記事では、仏壇・神棚・位牌・遺影・人形それぞれの扱い方と、閉眼供養から引き取りまでの流れを4段階に整理し、費用の目安と気をつけたい点をまとめました。

実家じまいで仏壇・神棚を「そのまま」にできない理由
仏壇や神棚は、片付けの中でも心理的なハードルが高く、「とりあえず後で」と後回しになりやすい品です。ただ、実家を売る・解体するといった予定があるなら、早めに向き合っておいたほうが結果として穏やかに進みます。理由は大きく2つあります。

売却・解体の前に残すと「残置物」になってしまう
不動産の売買では、原則として家財を撤去した状態で買主に引き渡します。仏壇や神棚を残したまま話を進めると、「この残置物をどちらが処理するのか」という条件交渉が生じ、価格の減額を求められたり、引き渡し直前に慌てて手配することになったりします。実務の現場でも、他の家財は片付いているのに仏壇だけが残っていて、決済日が近づいてからご相談を受けるケースは珍しくありません。買主側にとっても、宗教的な意味を持つ品が残っていることは心理的な負担になりやすく、購入を見送る理由になることもあります。残置物の取り扱いの考え方は家の売却で残置物はそのままでいい?で詳しくまとめています。解体の場合も事情は同じで、供養を済ませないまま建物ごと壊すことに抵抗を感じるご家族は多く、後から悔いが残りやすい進め方です。
供養は「思い立ってすぐ」とはいかない
閉眼供養(へいがんくよう)をお願いする場合、お寺や神社のご都合に合わせて日程を調整することになります。お盆やお彼岸の時期はとくに混み合い、依頼から実施まで数週間かかることもあります。さらに、供養のあとに仏壇本体の引き取りを手配する時間も必要です。売却の決済日や解体工事の着工日から逆算すると、少なくとも1〜2か月の余裕をみておくと安心です。実家じまい全体の段取りは実家じまいは何から始める?手順を7ステップで解説にまとめていますので、全体像を確認したい方はあわせてご覧ください。
仏壇・神棚・位牌・遺影・人形の扱い方【種類別に整理】
ひとくちに「仏壇まわり」といっても、品によって考え方も相談先も変わります。ここでは代表的なものを整理します。なお以下はあくまで一般的に見られる進め方であり、宗派やご家庭の慣習によって異なる場合がある点はご承知おきください。

仏壇:引き継ぐ・小さくする・手放すの3つ
仏壇の選択肢は大きく3つです。1つ目は、どなたかのお住まいに移して引き継ぐ方法。2つ目は、現代の住宅に合う小型の仏壇に買い替えて引き継ぐ方法。3つ目は、供養をしたうえで手放す方法です。近年は集合住宅や洋室に合わせた小型のものを選ぶご家庭も増えています。どれが正しいということはなく、住まいの事情やご家族の気持ちに合わせて決めて差し支えありません。ただし、移動させる場合も手放す場合も、多くの宗派では動かす前に閉眼供養を行うのが一般的とされています。
神棚・神具:お札と本体を分けて考える
神棚は、中に納めてあるお札(神札)と、宮形や棚板といった本体とを分けて考えると整理しやすくなります。お札は、いただいた神社や地元の神社に納める(お返しする)のが一般的です。本体については、引き取りの可否や方法が神社によって異なるため、まずは近くの神社に問い合わせてみましょう。取り外す前にお祓いを受ける方もいますが、この点も地域や神社の考え方によって差があります。自己判断で進めず、確認してから動くほうが安心です。
位牌・過去帳:仏壇よりも慎重に
位牌はご先祖のお名前が記された品で、ご家族の思いが強く結びついていることの多いものです。引き継ぐ場合は、そのまま移すほか、複数の位牌をまとめた形にする、菩提寺に預けて永代供養をお願いする、といった方法が取られることがあります。手放す場合も、閉眼供養のうえでお焚き上げを依頼する流れが一般的です。過去帳や法名軸なども同様に、菩提寺に相談してから扱いを決めましょう。位牌の考え方は宗派による違いが大きい領域ですので、インターネット上の情報だけで判断しないほうが安心です。
遺影・人形・その他の品:納得できる形を優先して
遺影や写真、雛人形・日本人形、掛け軸などは、宗教的な手続きが決まっているわけではありません。自治体のルールに沿って処分して差し支えないとされることが多い一方、「そのまま捨てるのは気が引ける」というお気持ちから、お寺や神社、供養を扱うサービスにお焚き上げを依頼される方もいます。遺影は写真データとして残し、額だけを手放すという選択もあります。ここは正解を探すよりも、ご家族が納得できる形を選ぶことを優先してよい部分です。
供養から処分までの手順4段階と費用の目安
ここからは、実際の進め方を4段階に整理します。金額はいずれも2026年7月時点の一般的な目安で、宗派・地域・仏壇の大きさ・依頼先によって幅があります。実際の費用は見積もりや相談のうえでご確認ください。

- 第1段階:現状を確認し、相談先(菩提寺・神社)を確かめる
- 第2段階:引き継ぐか手放すかを家族で決める
- 第3段階:閉眼供養(魂抜き)を依頼する
- 第4段階:供養後の引き取り・処分を手配する
第1段階:現状を確認し、相談先を確かめる
最初にやるのは業者探しではなく、「わが家の宗派はどこか、お付き合いのあるお寺はどこか」の確認です。年忌法要をお願いしてきたお寺、お墓のある寺院、仏壇の中の位牌や仏具の形などが手がかりになります。親御さんがご存命であれば、ご本人に聞いておくのがいちばん確実です。菩提寺が分かったら、実家じまいを予定していることと時期を伝え、供養が必要かどうか、どのような手順になるかを相談します。菩提寺が遠方の場合や心当たりがない場合は、同じ宗派の近隣寺院や、仏壇店・霊園に相談窓口を紹介してもらう方法もあります。
第2段階:引き継ぐか手放すかを家族で決める
相談先が分かったら、ご家族で方針を決めます。話し合っておきたいのは、「誰が引き継ぐのか」「引き継いだ人の住まいに置けるのか」「今後の法要をどうするのか」の3点です。引き取り手が決まらないまま「とりあえず誰かの家に運ぶ」と、置き場所に困って結局あとで手放すことになりがちです。逆に、一人の判断で手放してしまい、あとから別のご家族が「相談してほしかった」と感じるケースもあります。少し時間はかかっても、関係するご家族には一度声をかけておくことをおすすめします。
第3段階:閉眼供養(魂抜き)を依頼する
仏壇や位牌を移動・処分する前に行うのが閉眼供養です。宗派によって「魂抜き」「お性根抜き」「遷座法要」など呼び方が異なり、そもそも同じ考え方をとらない宗派もあります。どのような形が適切かは、菩提寺に確認するのが確実です。お布施は1万〜5万円程度とされることが多いようですが、地域やお寺とのお付き合いの深さ、僧侶に出向いていただくかどうかでも変わります。金額に迷ったら「どのくらいお包みすればよいでしょうか」と率直にお尋ねして差し支えありません。神棚のお祓いを神社に依頼する場合は、数千円〜1万円程度の初穂料が一つの目安とされています(いずれも2026年7月時点)。
第4段階:供養後の引き取り・処分を手配する
供養を終えたら、仏壇本体や仏具の引き取りを手配します。主な依頼先は、①菩提寺(引き取りに対応している場合)②仏壇店(買い替え時の下取りや引き取り)③遺品整理・不用品回収の業者 ④自治体の粗大ごみ、の4つです。費用の目安は、業者に依頼する場合で2万〜8万円程度、自治体の粗大ごみとして出せる場合は数百円〜数千円程度とされています(2026年7月時点)。ただし受け入れの可否や区分は自治体ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。他の家財とまとめて遺品整理業者に頼む場合の相場観は遺品整理の費用相場で、片付けから売却・解体までを含めた実家じまい全体の費用は実家じまいの費用はいくら?内訳と総額の目安で整理しています。
仏壇や神棚の整理にめどが立つと、次に決めるのは「この家を今後どうするか」です。売る・貸す・解体するのどれを選ぶにしても、判断の土台になるのは実家の資産価値の目安です。おおよその数字が分かると、ご家族での話し合いも具体的になります。急いで決める必要はありませんので、情報を集める一つの手段としてご利用ください。
実家じまいの仏壇整理で気をつけたいこと
最後に、現場でよく見かけるつまずきと、その避け方をお伝えします。
宗派・地域による違いを前提に考える
ここまで一般的な流れをご紹介してきましたが、供養の必要性や作法は宗派によって考え方が異なります。閉眼供養にあたる儀式を行わない宗派もありますし、同じ宗派でも寺院や地域の慣習によって運用が変わることもあります。インターネット上の情報や本記事の内容だけで結論を出さず、最終的にはご自身の菩提寺・神社にご確認ください。どの宗派が、どの業者が良いという優劣の話ではなく、ご家庭の事情に合う形を選ぶことが何より大切です。
独断で進めない・写真と中身の確認を先に
仏壇まわりは、ご家族の気持ちがもっとも表れやすい部分です。片付けを担当する方が良かれと思って進めたことが、後から不満につながることもあります。処分の前に写真を撮っておく、仏壇の引き出しにある位牌や過去帳、通帳・権利証などの重要な品を確認しておく、決めたことを家族に共有する。この3つを意識するだけで、行き違いはかなり減らせます。実際、仏壇の引き出しから権利証や現金、古い保険証券が出てくることもありますので、中身の確認は忘れずに行ってください。
業者に依頼するときの確認ポイント
引き取りを業者に依頼する場合は、①見積もりの内訳(供養料・運搬費・処分費が別か込みか)②供養を伴う場合の実施方法 ③一般廃棄物の収集運搬に関する許可や提携先の有無 ④追加費用が発生する条件、を事前に確認しておくと安心です。可能であれば訪問見積もりを取り、内容を書面で残しておくとより確実です。見積書や売却の手続きで見慣れない不動産用語が出てきたときは、当サイトの不動産用語集もあわせてご活用ください。費用や手続きで個別の判断に迷う場合は、菩提寺や自治体の窓口、専門家に早めに相談されることをおすすめします。
まとめ:まずは菩提寺・神社への相談から始めましょう
最後に、この記事の要点を整理します。
- 仏壇・神棚の最初の相談先は業者ではなく、菩提寺や地元の神社。作法や考え方は宗派・地域で異なるため、自己判断は避ける
- 売却・解体の前に残すと残置物としてトラブルになりやすい。供養と引き取りには1〜2か月の余裕をみておくと安心
- 仏壇は「引き継ぐ・小型に買い替える・供養して手放す」の3つ。神棚はお札と本体を分けて考え、位牌・過去帳はとくに慎重に
- 手順は①現状確認と相談先の確認 ②家族で方針を決める ③閉眼供養 ④引き取り・処分の4段階。目安はお布施1万〜5万円程度、引き取り2万〜8万円程度(2026年7月時点)
- 独断で進めず、写真を残し、仏壇の中の貴重品を確認してから動く
仏壇や神棚の整理は、実家じまいの中でもとくに気持ちの負担が大きい部分です。一度に片づけようとせず、まずは相談先を確かめるところから、少しずつ進めてみてください。
仏壇まわりの整理にめどが立ったら、実家という不動産そのものの今後を考える段階に入ります。「売ったらどのくらいか」という目安が分かると、ご家族での話し合いの土台ができます。判断を急かすものではありませんので、材料の一つとしてご覧ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の宗派・寺院・神社・事業者を推奨するものではありません。供養の作法や費用、制度は宗派・地域・時期によって異なり、変動する場合があります(2026年7月時点の情報です)。個別の作法については菩提寺や地元の神社へ、税務・法律・不動産取引に関する判断は税理士・司法書士・弁護士や自治体の窓口へご確認ください。


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