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農地を宅地にしたいけれど、いくらかかるのか、どのくらいの期間がかかるのか、その費用は売主と買主のどちらが払うのか。調べても「ケースバイケース」としか書かれておらず、判断できないまま止まってしまう方が多いようです。結論からお伝えすると、農地転用の費用は「手続き費用」と「工事費用」の2階建てです。前者は数万〜数十万円に収まることが多い一方、後者は土地の条件しだいで桁が変わります。そして費用の負担者は法律ではなく、売買契約の特約で決まります(制度・数値は2026年8月時点)。

農地転用の費用は「手続き費用」と「工事費用」の2階建て
費用が分かりにくいのは、性質の違う2種類の費用が一言でまとめられているためです。書類まわりの費用と、宅地として使えるようにする工事の費用は桁が違います。

費用の全体像|目安を出せるもの・出せないもの
負担する側は実務での傾向で、法律の定めではありません(後述します)。
| 費用の項目 | 目安の出し方 | 負担が多い側 |
|---|---|---|
| 行政書士の報酬・書類の取得費 | 統計値あり(後述) | 転用する側(多くは買主) |
| 地目変更登記 | 登録免許税なし。調査士に頼めば報酬 | 転用後の所有者 |
| 土地改良区の決済金 | 改良区ごとに定めが違う(要問合せ) | 転用する側。売主負担の契約もある |
| 造成・整地・進入路・上下水道の引込 | 要見積 | 買主が多いが契約次第 |
| 伐採抜根・小屋の撤去 | 要見積 | 売主が負担する例が多い |
| 下水道の受益者負担金 | 自治体の条例による(要確認) | 土地の所有者 |
手続き費用の中身
中心は行政書士の報酬(次章)と、登記事項証明書などの取得費、そして転用後の地目変更登記です。地目変更登記は「表示に関する登記」にあたり、登録免許税はかかりません(2026年8月時点/法務局)。かかるのは土地家屋調査士に依頼した場合の報酬だけで、ご自身でも申請できます。
見落とされやすいのが土地改良区の決済金です。区域内の農地を転用して区域から外すとき、決済金(地区除外決済金などと呼ばれます)を求められることがあります。農地が減っても水路の維持管理費は減らないため、残る組合員に負担が偏らないよう精算する趣旨です。金額は改良区ごとの定めなので、所在地を管轄する土地改良区へお問い合わせください(国税庁の法令解釈通達・平成18年4月20日でも、転用許可を停止条件とする売買契約で転用者が支払った決済金の税務上の取扱いが示されています)。
工事費用は見積もりでしか出ない|確認したい項目
「100坪でいくら」を期待された方には申し訳ないのですが、造成・整地・引込・地盤改良に、出典を示せる公的な単価は存在しません。高低差や本管の有無で大きく動き、同じ100坪でも数十万円で済むことも、その何倍にもなることもあります。根拠のない目安より、見積もりで何を確認すべきかをお伝えします。
- 造成・整地・進入路……高低差、擁壁の要否、切土・盛土の量、残土の処分費、側溝の切り下げ
- 上下水道……本管の有無と口径、加入金、後述する受益者負担金の未納がないか
- 電気・地盤……引込柱の要否、水田だった土地は地盤調査と改良費(地盤は個別に調査すべき事項です)
- 撤去……立木の伐採抜根、農業用小屋、ビニールハウス、残置資材
この中で売主が最も驚かれやすいのが伐採抜根です。「木を切るだけでしょう」と思っていた方が、根を掘り起こして処分するところまで含む見積もりを見て考え込まれる、ということが何度もありました。
行政書士に頼むといくら?報酬の目安と依頼の範囲
手続き費用のうち、まとまった統計があるのは行政書士の報酬です。日行連が5年に1度実施する報酬額統計調査から抜き出します。

日行連の報酬額統計調査(令和7年度)の数字
| 手続き | 回答者数 | 平均額 | 最頻値 |
|---|---|---|---|
| 農地法第5条許可申請(転用目的の売買など) | 501人 | 120,186円 | 100,000円 |
| 農地法第4条許可申請(自分の農地を自分で転用) | 273人 | 96,893円 | 80,000円 |
| 農地法第5条届出(市街化区域内) | 245人 | 54,226円 | 50,000円 |
| 農地法第3条の3の届出(相続したときの届出) | 174人 | 23,502円 | 11,000円 |
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(令和8年1月実施)。消費税込み・立替金は含みません。実勢の参考値であって料金表ではなく、報酬額は各事務所が自由に定めます。
第5条許可申請は回答の71.2%が5万円以上15万円未満に収まる一方、最大値は160万円超です。平均が最頻値(10万円)より高いのは一部に大きな案件が含まれるためで、多くは10万円前後と読むほうが実感に近いと思われます。許可申請と届出で平均額が2倍以上違う点にもご注目ください。
金額に差が出る理由
- 許可か届出か……市街化区域内なら届出、区域外なら許可(農地法第4条・第5条/出典:農林水産省「農地転用許可制度について」)
- 農振除外の要否……農用地区域(青地)なら転用の前に外す手続きが要ります
- 土地改良区の地区除外、造成計画の複雑さ、面積・筆数……説明資料が増えるほど手間がかかります
市街化区域の届出は、仲介会社が対応してくれる場合もあります
ここは実務の話です。筆者が売買仲介の現場で扱っていた市街化区域内の農地では、転用は届出で足りるため、仲介会社である筆者が届出書類を準備し、契約を結んだあとに農業委員会へ届け出るという進め方をしていました。この形なら、売主にも買主にも行政書士への報酬は発生しません。行政書士に依頼する運用の会社もあります。ただ、市街化区域内なのに手続き費用として数十万円を見込んでいる場合は、仲介会社に「届出は御社で対応してもらえますか」と確かめてみる価値はあります。
一方、市街化区域外の第5条許可は書類も判断も段違いで、転用に慣れた行政書士へ依頼するのが一般的です。制度の意味は農地転用(用語集)に、売り方の2つのルートは相続した農地を売る2つの方法にまとめています。
自分で申請できるのか、依頼先はどう探すのか
市街化区域内の届出は、書類がそろえばご自身で提出できるとしている自治体が一般的です。許可申請をご自身で進める場合は、平日の窓口往復と補正への対応が負担になります。なお、申請書の書き方や許可を得るための計画の組み立ては行政書士の業務領域ですので、本記事では扱いません。
農地転用は何年かかる?区分ごとの期間の目安
「農地から宅地 何年かかる」と検索されるのは、実際に年単位になるケースがあるからです。ただし、それは農地の区分によります。

市街化区域内の農地|届出だけで足りる
市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会へ届け出れば、許可を受けなくても転用できます(出典:農林水産省「農地転用許可制度について」)。書類が整っていれば比較的短い期間で受理通知が出るとしている自治体が多いものの、日数は運用により異なります。売買の予定を組む前に処理期間を確かめておくと安心です。
市街化区域外の農地|第5条許可は月単位
市街化区域外の農地を転用目的で売買する場合は、第5条の許可が要ります。事前相談、書類作成、農業委員会での審議、都道府県知事等による許可、という順です。期間を左右するのが農業委員会の総会が月1回の開催であることが多い点で、締切に1日間に合わないだけで1か月動きます。書類がそろってからでも数か月と見ておくと安心です。
農用地区域(青地)の農地|年単位になりやすい
農業振興地域の農用地区域、いわゆる青地の農地は、転用の前に農用地区域から外す手続き(農振除外)が要ります(出典:農林水産省「農業振興地域制度の概要」)。受付を年に数回に限る自治体もあり、除外の決定を経て第5条許可へ進むため、1年以上を見込むケースが少なくありません。しかも要件を満たさなければ認められません。
市街化調整区域の農地は、転用そのものが難しい部類
市街化調整区域の農地は、農地法に加えて都市計画法の制約も重なります。売れないと決まったわけではありませんが、進め方も出口も違います。詳しくは市街化調整区域の土地を相続したらと市街化調整区域(用語集)をご覧ください。
転用して売るルートが見えている農地なら、宅地として見たときの価値に当たりを付けておくと、工事費用の見積もりが見合うかを判断しやすくなります。材料の一つとしてご覧ください。
転用費用は誰が払う?契約実務での決まり方
「農地転用費用 誰が払う」と検索すると「買主が払うのが一般的」という答えが並びます。実務でもそのとおりのことが多いのですが、大切なのはそれが法律で決まっているわけではない点です。
法律ではなく、売買契約の特約で決まる
農地法は転用の許可や届出を定めた法律で、費用を誰が負担するかまでは定めていません。実際の負担者は、売買契約書の特約条項に「農地転用に要する費用は買主の負担とする」といった形で書き込むことで決まります。つまり、契約前であれば話し合いの対象です。
買主負担が多い理由と、「結局は価格に反映される」という現実
買主が負担することが多いのは、転用後の土地を使い、造成や建物の計画を持っているのも買主だからです。
ただ、筆者の実感では、この「誰が払うか」は最終的な手取りで見るとあまり変わりません。現地に樹木や農業用小屋が残っている場合、筆者が扱った案件では撤去を売主側の費用で対応していただくことが多かったのですが、買主側で撤去してもよく、その場合は撤去費用の分だけ売買価格が下がるだけです。費用の負担は、突き詰めれば価格の一部です。
だからこそ大事なのは、どちらが払うかではなく、負担の取り決めをあいまいにしたまま契約しないことです。口頭の了解だけで進めると、決済の直前に「これは聞いていない」となりがちです。見積もりで金額と範囲を確定させてから契約書に落とし込んでください。
停止条件付契約という形
転用を伴う農地の売買では、許可が下りることを条件に契約を結ぶのが通例です(停止条件付契約(用語集))。許可が下りなければ白紙解除となり手付金を返還するのが一般的ですが、支出済みの費用の扱いは契約条項によります。
売主側に出てくる費用を見落とさない
転用費用は買主負担という前提でも、売主側に費用が出る項目はあります。境界の明示や測量、伐採抜根や残置物の撤去、土地改良区の決済金などです。手取り額はこれらを差し引いて考えてください。
もう一つ、驚かれることが多いのが下水道の受益者負担金です。下水道は整備で利益を受ける土地の所有者などから負担金を集める仕組みですが、供用開始の時点でその土地が農地だった場合、申請により農地として使われている間は徴収を猶予する運用を設けている自治体があります。猶予の理由は「農地であること」ですから、転用して農地でなくなった時点で猶予が解け、あらためて請求される場合があるということです。筆者も、転用をきっかけに請求が届いて売主が驚かれたケースに立ち会いました。扱いは自治体の条例により異なり、制度がない自治体もあります。売却を考え始めた段階で下水道の担当課に確かめておくと安心です。
相続で取得した農地は、登記と届出を先に済ませる
相続で取得した農地には順番があります。まず相続登記で名義を相続人に移し、あわせて農地法第3条の3の届出を農業委員会へ提出します。名義が被相続人のままでは売買契約も転用申請も進みません。詳しくは相続した農地の農業委員会への届出と農地を相続したらどうする?農業をしない人の手続きと5つの選択肢をご覧ください。
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相続の手続きが重なって手が回らないときの選択肢
相続アシストは、税理士・司法書士・弁護士が連携し、相続税の申告や戸籍の収集、不動産・預貯金の名義変更をまとめて代行するサービスです。全国対応です。
- 料金の目安:基本料金は68万円(税込)からとされています(2026年8月時点)。範囲と費用が見合うかを確かめてから判断してください。
- 向くケース:相続人が多忙・遠方・高齢で動きづらい、人数が多い、財産の構成が複雑、といった場合です。
- 代行範囲は事前に確認を:農地法3条の3の届出や農地転用が含まれるかは相談の段階で確かめてください。届出はご自身で出せる自治体が一般的で、相続登記だけを司法書士へ単発で頼む方法もあります。
区分は調べたけれど、この農地をどう動かせばよいのか分からない、という段階でもご相談いただけます。売却を急かすことはありません。
多摩地域を中心に、相続した土地の売却相談を受け付けています。地域・物件の状況により対応できない場合があります。
まとめ:見積もりの前に「自分の農地がどの区分か」を確かめる
最後に、この記事の要点を整理します。
- 費用は「手続き費用」と「工事費用」の2階建て。目安を示せるのは手続き費用のほうで、工事費用は見積もりでしか出ない
- 行政書士報酬は農地法第5条許可申請の平均120,186円、市街化区域内の第5条届出の平均54,226円(日行連「令和7年度報酬額統計調査の結果」)
- 期間は区分しだい。市街化区域内は届出のみ、区域外の許可は月単位、青地は農振除外から始まるため年単位になりやすい
- 負担者は法律ではなく売買契約の特約で決まる。実務では買主負担が多いが、その分は価格に反映されるため、範囲をあいまいにしないことが大切
- 売主側にも費用は出る。伐採抜根、残置物の撤去、土地改良区の決済金、転用を機に請求されうる下水道の受益者負担金に注意(自治体により異なります)
農地は「どの区分にあるのか」で手続きも期間も変わり、見積もりの前提そのものが変わります。まずは自治体の都市計画課と農業委員会で区分を確かめるところから始めてみてください。
転用の見通しが立ったら、宅地として見たときの資産価値の目安も知っておくと、工事費用をかける判断がしやすくなります。
※本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく一般的な説明です。農地法・農業振興地域制度・都市計画法の運用や、下水道の受益者負担金・土地改良区の決済金の扱いは自治体・団体によって異なり、制度も改正される場合があります。転用の可否や期間は農業委員会・自治体の窓口へ、申請の代行は行政書士へ、登記は司法書士や土地家屋調査士へ、税金は税理士や税務署へご確認ください。


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