損益通算とは、ある所得で出た赤字を、ほかの所得の黒字と相殺して、課税される所得を減らす仕組みです。
ただし、土地・建物を売って出た譲渡損失は申告分離課税のため、原則として給与など他の所得とは損益通算できません。例外は、居住用財産(マイホーム)を売却して一定の要件を満たす特例に限られます。
損益通算をわかりやすく解説
損益通算は、簡単にいうと「赤字と黒字を合算して税金を計算し直すこと」です。ただし、不動産の分野では大原則としてまず押さえておきたい点があります。土地や建物を売って損失(譲渡損失)が出ても、それは申告分離課税の所得なので、原則として給与所得や事業所得などほかの所得とは損益通算できません。「不動産で損をしたから、その分ほかの税金が軽くなる」と考えるのは基本的に誤りです。
例外として給与などと損益通算できるのは、居住用財産(マイホーム)を売却して、買換えの場合や住宅ローンが残っている場合など一定の要件を満たし、特定の特例(マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例)を適用できるケースに限られます。投資用物件や別荘、更地などの譲渡損失は、この特例の対象外で、原則どおり損益通算できません。
なお、これとは別枠で、賃貸不動産の経営で生じる「不動産所得」の赤字は、給与所得などと損益通算できます(総合課税)。ただし、赤字のうち土地取得のために借り入れた借入金の利子に相当する部分は損益通算の対象から除かれます。売却時の「譲渡損失」と、賃貸経営の「不動産所得の赤字」はまったく別の話なので、混同しないことが大切です。
実務での注意点・よくあるケース
損益通算を考えるときは、「赤字が出たから必ず節税できる」と思い込まないことが大切です。売主・買主それぞれの立場で、次のような点を押さえておくと安心です。
- 売主の場合:不動産を売って損失が出ても、それが自宅(居住用財産)でマイホームの特例要件を満たさない限り、給与など他の所得とは損益通算できないのが原則です。投資用物件や更地の売却損はとくに通算できないため、「損が出れば税金が戻る」とは考えないほうが安全です。売却前に、税理士や不動産会社へ確認しておくと見通しを立てやすいです。
- 買主の場合:購入した物件を将来売却する可能性があるなら、取得費や諸費用の記録を残しておくことが重要です。後で売却損益を計算する際に役立ちます。
- 賃貸オーナーの場合:賃貸経営で生じる不動産所得の赤字は、売却損とは別枠で給与所得などと損益通算できます。ただし、赤字のうち土地取得のための借入金利子に相当する部分は対象外です。修繕費と資本的支出の区分、減価償却費の計上、ローン利息の扱いなどで所得計算が変わります。
- 会社員が副業で不動産収入を得ている場合:給与所得と通算できるかは、所得区分や赤字の内容がポイントです。帳簿や領収書を整えておくと、確定申告がスムーズです。
よくあるのは、「売却で大きな損が出たから、今年の税金はゼロになるはず」と考えてしまうケースです。実際には、土地・建物の譲渡損失は原則として給与などと損益通算できず、マイホームの特例に当てはまらなければ税額は下がりません。「損=節税」という思い込みは避け、自分のケースが特例に該当するかを、売却前に税理士や不動産会社へ早めに確認しておくのがおすすめです。
よくある質問
Q. 不動産を売って損をしたら、必ず損益通算できますか?
いいえ、原則としてできません。土地・建物の譲渡損失は申告分離課税で、給与など他の所得とは損益通算できないのが基本です。例外は、居住用財産(マイホーム)を売却して一定の要件を満たし、マイホームの譲渡損失の特例を適用できる場合に限られます。投資用物件や更地の売却損は通算できないため、売却前に自分のケースが特例に当てはまるか確認しておくと安心です。
Q. 賃貸経営の赤字も損益通算の対象になりますか?
賃貸で生じる不動産所得の赤字は、売却損とは別枠で給与所得などと損益通算できます。ただし、赤字のうち土地取得のための借入金利子に相当する部分は対象外です。帳簿づけや経費の整理をきちんとしておくと、確定申告のときに判断しやすくなります。
