生産緑地とは、市街化区域内にある農地のうち、都市の中の緑地として保全するために「生産緑地地区」に都市計画で指定された農地のことです。固定資産税が農地並みに評価され、相続税の納税猶予の対象にもなる一方で、農地として管理する義務があり、建築物を建てるなどの行為には市町村長の許可が必要になります。
生産緑地をわかりやすく解説
生産緑地は生産緑地法(1974年/昭和49年制定)に基づく制度です。1991年(平成3年)の改正を受け、三大都市圏の特定市にある市街化区域内農地は「宅地化する農地」と「保全する農地」のどちらかを選ぶことになり、1992年(平成4年)に多くの農地が生産緑地地区に指定されました。面積要件は原則500平方メートル以上ですが、2017年(平成29年)の改正で、市町村が条例を定めれば300平方メートルまで引き下げられるようになっています(国土交通省「生産緑地制度」/2026年8月時点)。
指定されると、その土地は農地等として管理する義務を負い(生産緑地法第7条)、建築物の建築や宅地造成などを行うには市町村長の許可が必要になります(同法第8条)。制限を受ける代わりに、固定資産税は宅地並み課税ではなく農地としての評価になり、相続税・贈与税の納税猶予の対象にもなります。「税金が安い代わりに、自由に使えない土地」と整理すると分かりやすいでしょう。
制限を外す入口になるのが買取申出です。生産緑地地区の都市計画の告示日から30年が経過したとき、または主たる従事者が死亡した/農林漁業に従事することを不可能にさせる故障を負ったときに、市町村へ買取りを申し出ることができます(同法第10条。故障の内容は同法施行規則第5条に定めがあります)。申出の日から3か月以内に所有権の移転が行われなかった場合、生産緑地地区内の行為制限が解除されます(同法第14条)。1992年に指定された農地が2022年(令和4年)に一斉に30年を迎えることが「生産緑地の2022年問題」と呼ばれました。これに対応して2017年(平成29年)の改正で特定生産緑地制度が創設され、30年経過前に指定を受ければ買取申出ができる時期を10年延期でき、その後も10年ごとに繰り返し延長できるようになっています。
実務での注意点・よくあるケース
相続の現場で最も注意が必要なのは税金との関係です。前の相続で農地等の相続税の納税猶予を受けている場合、買取申出をすると猶予が打ち切られ、猶予されていた税額に利子税を加えて納付することになり得ます(国税庁「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」等/2026年8月時点)。制度は要件が細かく、面積の割合や免除される場合の取扱いなど個別判断が必要なため、必ず税理士や所轄の税務署に確認してください。
- 納税猶予を受けている生産緑地は、買取申出が猶予の打ち切りにつながることがある(税額と利子税の負担が生じ得る)
- 特定生産緑地の指定を受けなかった生産緑地は、次の相続では納税猶予の対象から外れる取扱いとなっている(2018年/平成30年度税制改正。現に受けている猶予は営農継続で続く経過措置あり)
- 特定生産緑地の指定を受けなかった場合、固定資産税は激変緩和措置により数年かけて宅地並みの水準へ移行する
- 買取申出をしても市町村が実際に買い取る例は多くなく、3か月の経過を経て制限が解除される流れになることが多い
- 宅地として売る場合は造成費や上下水道の引込み費用がかかり、手取りが想定より小さくなることがある
まずは「指定の告示日はいつか」「特定生産緑地の指定を受けているか」「前の相続で納税猶予を使っているか」の3点を確認するところから始めると、取り得る選択肢が整理しやすくなります。告示日や指定の状況は、市町村の都市計画担当課で確認できます。
よくある質問
Q. 生産緑地はすぐに売れますか?
A. 指定されたままの状態では建築などが制限されるため、宅地として売りに出すことは難しいのが実情です。買取申出ができる要件を満たしているか、申出から制限が解除されるまでに3か月かかることを踏まえた段取りが必要になります。手続きは市町村の都市計画担当課、税金の影響は税理士へ、それぞれ確認しながら進めるのが安全です。
Q. 生産緑地を相続したら、まず何を確認すればよいですか?
A. 指定の告示日と特定生産緑地の指定の有無、そして前の相続で納税猶予を受けているかどうかです。この3点によって、営農を続ける・特定生産緑地の指定を受ける・買取申出をするなど、選べる道と税負担が大きく変わります。判断が納税額に直結するため、早い段階で税理士に相談することをおすすめします。
