「変動が得ですよ」——その言葉、あなたのためじゃないかもしれない
住宅ローンの金利タイプを聞かれたとき、不動産営業マンの9割は「変動金利がおすすめです」と答えます。
私は不動産売買仲介の営業マンとして15年以上働いてきました。正直に言うと、私自身もそう勧めていた時期があります。
でもFP2級を取って勉強し直してから、考えが変わりました。「変動が得」は、営業マンにとって都合がいいだけの話だったんです。
この記事では、ポジショントークなしで、変動金利と固定金利の違い・シミュレーション・2026年の金利動向・あなたに合った選び方まで、本音で解説します。
「どっちが得か」ではなく、「あなたの場合、どっちが正解か」を一緒に考えましょう。
変動金利と固定金利、そもそも何が違う?
まず基本を整理します。住宅ローンの金利タイプは大きく3つあります。
① 変動金利
半年ごとに金利が見直されます。ただし返済額が変わるのは5年ごと(5年ルール)で、上がっても最大1.25倍まで(125%ルール)。金利は最も低いですが、将来の返済額が読めません。
② 全期間固定金利(フラット35など)
借入時に全期間の金利が確定します。金利は変動より高いですが、返済額がずっと変わらない安心感があります。
③ 当初固定金利
最初の5年・10年・20年だけ金利が固定され、その後は変動に切り替わるタイプです。固定期間が終わった後の金利が読めないのが注意点。

ここで覚えておいてほしいのは、「金利が低い=お得」ではないということ。金利が低い代わりに、将来のリスクを自分で背負っているのが変動金利です。
具体シミュレーション|4,000万円借りたらいくら差がつく?
数字で見てみましょう。借入4,000万円・35年返済・元利均等で3つのケースを比較します。
ケースA:変動0.4%で金利が上がらなかった場合
- 月々の返済額:約102,000円
- 総返済額:約4,290万円(利息 約290万円)
ケースB:変動0.4% → 5年後に1.0% → 10年後に1.5%と上昇した場合
- 月々の返済額:当初約102,000円 → 最終的に約118,000円
- 総返済額:約4,800万円(利息 約800万円)
ケースC:全期間固定1.8%で借りた場合
- 月々の返済額:約128,000円
- 総返済額:約5,390万円(利息 約1,390万円)
| ケース | 金利 | 月々返済額 | 総返済額 | 利息総額 |
|---|---|---|---|---|
| A(変動・金利据置) | 0.4%固定 | 約10.2万円 | 約4,290万円 | 約290万円 |
| B(変動・金利上昇) | 0.4%→1.0%→1.5% | 10.2万→11.8万円 | 約4,800万円 | 約800万円 |
| C(全期間固定) | 1.8% | 約12.8万円 | 約5,390万円 | 約1,390万円 |
ケースAとCの差は約1,100万円。「やっぱり変動が得じゃないか」と思うかもしれません。
でも、ケースBのように金利が上がると、その差は約590万円に縮まります。しかもケースBはまだ控えめな想定です。変動金利が2%を超えたら、固定より総返済額が多くなる逆転が起きます。
「変動が得だった」のは結果論です。それを前提にローンを組むのは、ギャンブルと同じです。
営業マンが変動金利を勧める「本当の理由」
ここが一番伝えたい話です。
なぜ営業マンの9割が「変動がいいですよ」と言うのか?
理由はシンプル。変動金利の方が月々の返済額が安くなるので、お客さんの購入予算が上がるからです。
例えば、月々の返済を12万円以内に抑えたいお客さんがいたとします。
- 変動0.4%なら → 約4,700万円まで借りられる
- 固定1.8%なら → 約3,750万円が上限
同じ月々12万円でも、変動なら約950万円高い物件を買えてしまう。物件価格が上がれば仲介手数料も増えます。4,700万円の仲介手数料は約161万円、3,750万円なら約130万円。差額31万円。
これは営業マンの収入に直結します。
銀行の営業にも同じ構造があります。変動で大きな金額を借りてもらえれば、銀行の利ざやも大きくなります。
批判したいわけではありません。 営業マンも銀行も、悪意でやっているわけではない。でも構造的に「変動を勧めるインセンティブ」が働いていることは、知っておくべきです。
15年の現場で、変動金利で無理して買い、金利上昇で返済が苦しくなった家庭を何組も見てきました。マイホームを手放すことになったケースもあります。「あのとき固定にしていれば」と悔やむ声は、営業マンの耳には届きません。
2026年、金利は今後どうなる?
2025年以降、日銀は金融緩和の出口に向かい始めました。
- 政策金利(短期金利): 2024年にマイナス金利を解除。2025年以降も段階的に利上げが続いています
- 変動金利の基準金利: メガバンクが基準金利を引き上げ始めており、上昇トレンドに入っています
- 固定金利(長期金利連動): 10年国債利回りは上昇傾向。フラット35の金利も2023年頃から上がっています
「変動金利はまだ低いから大丈夫」という声もありますが、35年ローンの間にどこまで上がるかは誰にもわかりません。
ただ一つ言えるのは、「これ以上金利が下がる余地はほぼない」ということ。つまり変動金利は、上がるか横ばいかの二択です。
変動金利を選んでいい人・ダメな人

15年の経験とFPの知識から、判断基準を整理しました。
変動金利でOKな人:
- 借入額が年収の4倍以下(余裕のある借入)
- 金利が2%に上がっても、返済額が手取りの30%以内に収まる
- 繰り上げ返済用の貯蓄が500万円以上ある
- 共働きで、片方の収入だけでもローンが払える
この4つをすべて満たしているなら、変動で攻めるのも合理的な選択です。
固定金利にすべき人:
- 借入額が年収の5倍以上
- 金利上昇に耐える貯蓄がない
- 片働き、または収入が不安定(フリーランス・歩合給など)
- 「金利が上がるかも」と考えるだけで不安になる
- 返済期間が30年以上
1つでも当てはまるなら、固定の方が安全です。
大事なのは「どっちが得か」ではなく、「最悪のケースでも家計が破綻しないか」です。
「ミックスローン」という第3の選択肢
「変動も固定も決めきれない」という方には、ミックスローンがあります。
例えば4,000万円を借りる場合、2,000万円を変動・2,000万円を固定で組むやり方です。
メリット:
- 金利が上がっても、固定部分がクッションになる
- 精神的な安心感がある
- 変動部分で金利の低さも享受できる
デメリット:
- 住宅ローンの契約が2本になるため、事務手数料・保証料が2倍かかる
- 管理が面倒(繰り上げ返済もそれぞれ手続きが必要)
- 中途半端で、どちらのメリットも薄まる
住み替え資金に余裕があり、「変動100%は怖いけど固定は高い」と感じる方には検討の価値があります。
※諸費用について詳しくは → 不動産の「見えない費用」完全リスト
繰り上げ返済の「正しい使い方」
変動金利で借りるなら、繰り上げ返済とセットで考えるのが鉄則です。
期間短縮 vs 返済額軽減、どっちが得?
- 期間短縮型: 返済期間を縮める → 利息の削減効果が大きい
- 返済額軽減型: 月々の返済額を減らす → 家計の安全マージンが増える
教科書的には期間短縮型の方が「お得」ですが、金利上昇リスクに備えるなら返済額軽減型の方が実用的です。月々の返済額に余裕ができれば、金利が上がっても耐えられます。
繰り上げ返済のコツ:
- 「余裕がある月に100万円」より「毎年コツコツ50万円」の方が効果的
- 手元資金をゼロにしてまで繰り上げるのはNG。生活費6ヶ月分は必ず残す
- 住宅ローン控除の期間中は、繰り上げ返済を急がなくてもいい場合がある
プロの結論|「あなたの場合」の考え方
最後に、15年の現場経験とFP2級の知識を持つ私の本音をお伝えします。
「変動か固定か」の正解は、あなたの家計状況によって違います。
ただ、一つだけ断言できることがあります。
「最悪のケースでも生活が破綻しない選択をすること」——これが住宅ローンの唯一のルールです。
迷ったら、こう考えてください。
- 固定で組んで、金利が上がらなかった → 「少し多く払ったけど、安心を買えた」
- 変動で組んで、金利が上がった → 「家計が苦しい。最悪、家を手放すかも」
どちらの後悔が大きいですか?
私の本音は、「迷ったら固定寄りで組んで、余裕があれば繰り上げ返済」が一番後悔しない選択だということです。
不動産屋にも銀行にもポジショントークがあります。最後に決めるのは自分です。この記事がその判断の材料になれば幸いです。
まとめ|住宅ローンの金利選びで損しないために
この記事のポイント:
☑ 変動金利は金利が低い代わりに、将来の上昇リスクを自分で背負う
☑ 固定金利は金利が高い代わりに、返済額がずっと変わらない安心がある
☑ 4,000万円の借入で変動と固定の差は最大約1,100万円。ただし金利上昇で逆転もあり得る
☑ 営業マンが変動を勧めるのは、購入予算が上がり手数料が増えるから
☑ 2026年現在、日銀の利上げで変動金利は「上がるか横ばいか」の局面
☑ 年収の4倍以下の借入+貯蓄500万以上なら変動もOK、それ以外は固定が安全
☑ 迷ったら「固定寄り+繰り上げ返済」が一番後悔しない
変動が得か固定が得かは「結果論」でしかわかりません。でも、「最悪でも大丈夫」な選択は、今の時点で判断できます。
この記事はFP2級を保有し、不動産売買仲介15年以上の経験を持つ筆者が執筆しています。金利は2026年4月時点の情報をもとにしています。個別の状況によって最適解は異なりますので、複数の金融機関に相談されることをおすすめします。


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