【2026年法改正】不動産の「囲い込み」がついに行政処分対象に|売主が損しないために今すぐ知るべきこと

不動産売却

「あなたのマンション、実は”わざと”売られていないかもしれません」

突然そう言われたら、ちょっと怖いですよね。でも、これは脅しでも陰謀論でもありません。不動産業界に15年以上いる私が、現場で何度も目にしてきた光景です。

その正体が「囲い込み」。2025年1月から、ようやく行政処分の対象になりました。それくらい、業界内ではグレーゾーンとして黙認されてきた慣行です。

ところが——消費者の9割は、この「囲い込み」という言葉すら知りません。

知らないままだと、あなたのマンションは数百万円安く、しかも数ヶ月も長く売れ残るかもしれません。今日はその実態と、自分の身を守る方法を全部お話しします。

そもそも「囲い込み」とは?

囲い込みとは、ひとことで言うと「売主から預かった物件を、自社の買主にしか紹介しない行為」のことです。

普通、不動産会社は売主から物件を預かると、「レインズ」という業界専用の物件データベースに登録します。そうすると全国の不動産会社がその物件情報を見られるようになり、それぞれの会社が自分の抱えている買主候補に紹介していく。これが本来の流通の姿です。

ところが囲い込みをする業者は、レインズに登録は一応するものの、他社から「この物件、内見させてください」と問い合わせが来ても「申し訳ありません、ちょうど商談中で…」と嘘をついて断ってしまう。そして、自社で買主を見つけるまで、その物件を実質的に独占し続けるんです。

なぜそんなことをするのか。答えは「両手仲介」にあります。

不動産仲介の手数料は、売主からも買主からももらえます。普通は売主側と買主側で別々の不動産会社が入るので、それぞれが「片手」の手数料しかもらえません。でも、もし同じ会社が売主・買主の両方をつかまえたら、「両手」で手数料が2倍になるんです。

3,000万円のマンションなら、片手で約100万円、両手で約200万円。1件で100万円違ってくる。だから業者は、なんとしても自社で買主を見つけたがる。これが囲い込みの動機です。

囲い込みされると売主はいくら損するのか

「業者が儲かるだけで、別に自分は損してないのでは?」

そう思った方、危険です。囲い込みされた売主は、ガッツリと損をします。

先日、知人から相談を受けたケースがあります。3,000万円で売り出したマンションが、半年経っても売れず、結局2,700万円まで値下げして成約しました。差額300万円——これ、本来なら入ってくるはずだったお金です。

なぜそうなるか。囲い込みされていると、本来なら他社経由で「3,000万円でも買いたい」というお客さんが現れていたかもしれないのに、その問い合わせは全部断られている。買主候補のプールが、自社の中だけに絞られてしまうんです。

候補が少ないと、当然売れません。売れないと、業者は売主に「やっぱり相場より高いみたいですね、少し値下げしましょうか」と提案してくる。値下げして、また売れない、また値下げ——というスパイラル。

それだけじゃありません。販売期間が3ヶ月延びるだけで、住宅ローンの利息・管理費・修繕積立金・固定資産税で数十万円が消えていきます。マンションなら月10万円前後の固定費は珍しくありません。

「商談中です」と言われ続けた売主が、精神的にも疲弊していくのも見てきました。「もう早く手放したい」と弱気になった瞬間、業者の値下げ提案がスッと通ってしまう。

囲い込みは、売主から「お金」と「時間」と「冷静な判断力」の3つを同時に奪っていく行為なんです。

2025年1月の法改正で何が変わったのか

ここまで聴いて「え、それって違法じゃないの?」と思った方。鋭いです。

実は長らく、囲い込みは「業界のグレーゾーン」として黙認されてきました。明確な禁止規定がなかったので、業者を訴えても「商談中だっただけです」と言われたら証明が難しかったんです。

そこに動いたのが、2025年1月の国土交通省ガイドライン改正です。主なポイントはこの3つ。

  1. レインズの「ステータス管理」が義務化された——物件が「公開中」なのか「商談中」なのか「成約済」なのかを、リアルタイムで正確に登録しないといけなくなりました。「本当は公開中なのに商談中と偽る」ことが追跡可能になったわけです。
  2. 違反した業者は行政処分の対象に——業務停止命令や、悪質な場合は免許取消もあり得ます。これは業界にとってかなりのインパクトです。
  3. 売主が自分でレインズの登録状況を確認できる——後述しますが、売主は登録証明書をもらって、自分の物件がどう登録されているかをIDで確認できます。

ただし——ここからが現場目線の話です。法改正されたからといって、囲い込みがゼロになるわけではありません。「ステータス管理を一応やっているフリ」をしながら、電話で来た問い合わせには「いま申込予定の方がいて…」とフワッと断る、みたいな抜け道はまだ残っています。

つまり、法改正は「武器」を売主に渡してくれただけで、それを使うかどうかは売主自身次第なんです。

大手ほど囲い込みやすい構造

ここでひとつ、業界の「不都合な真実」をお話しします。

報道ベースの数字ですが、住友不動産販売の両手仲介比率は約50%、三井のリハウスは約40%と言われています。業界平均が20〜25%程度なので、大手ほど両手の比率が突出して高いんです。

これ、なぜかわかりますか?

大手はそもそも社内に大量の買主候補を抱えています。テレビCMで集まってくる問い合わせ、ポータルサイトからの反響、店舗の来店客——膨大な「自社の買主」のプールがあるので、わざわざ他社に物件情報を流さなくても、社内でマッチングできてしまう。

それ自体は、悪いことではありません。仕組みとして自然に両手になりやすい、というだけの話です。

でも、ここから一歩踏み込んで「自社の買主が現れるまで、他社からの問い合わせは断っておこう」となったら、それは囲い込みです。そして大手であればあるほど、その誘惑は強くなる。

「大手だから安心」という思い込みは、ここでは通用しません。むしろ、両手比率の高さを知った上で、契約前に「あなたの会社の両手仲介比率はどれくらいですか?」と聞いてみる。これが、現代の売主に必要な質問です。

囲い込みを見抜く7つのサイン

ここからが本題です。実際に囲い込みされているかどうかを、売主が見抜くためのサインを7つ紹介します。3つ以上当てはまったら、要注意レベルです。

サイン1:内見の連絡が極端に少ない

相場通りの価格で出しているのに、最初の2週間で内見がゼロ、もしくは1〜2件しかない場合。普通の物件なら、初動の2週間は問い合わせが集中する時期です。ここで動きがないのは、そもそも市場に流れていない可能性があります。

サイン2:「商談中です」が頻発する

「他社から問い合わせがありましたが、ちょうど別のお客様と商談中なのでお断りしました」と何度も言われる場合。本当に商談中なら、そのお客さんとの結果が出るまでに時間がかからないはず。何週間も「商談中」が続いているなら不自然です。

サイン3:レインズの登録証明書を見せたがらない

媒介契約後、不動産会社は売主に対して「レインズに登録しましたよ」という証明書を発行する義務があります。これを「あとで送ります」と言ってなかなか出さない、もしくは催促しないと出てこない業者は怪しい。

サイン4:販売活動報告書がスカスカ

専任媒介なら2週間に1回、専属専任なら1週間に1回、業者は売主に販売活動の報告をしなければなりません。「問い合わせ:3件、内見:1件」みたいな数字だけで、どこからどんな反響があったか具体的に書かれていない報告は要注意。

サイン5:値下げ提案ばかりしてくる

売り出して1ヶ月も経たないうちに「相場より高いみたいなので値下げしましょう」と言ってくる業者。本来なら市場の反応を見て3ヶ月くらいかけて判断するところを、やたら早く値下げを促してくるのは、社内の買主に「お得な価格」で売りたいサインかもしれません。

サイン6:他社からの問い合わせが「全部断られている」

これは知り合いの不動産屋がいれば検証できます。「私の物件、御社からは問い合わせできますか?」と聞いてもらう。本当に流通していれば普通に内見予約まで進めるはず。ここで詰まったら黒です。

サイン7:専任媒介を強く推してくる

「一般媒介だと弊社のやる気が出ませんから、ぜひ専任で」と強くプッシュしてくる業者。専任媒介自体は悪い契約形態ではないのですが、囲い込みするには専任の方が都合がいい。理由なく強く推してくるのは要警戒です。

これらのサインの怖いところは、ひとつひとつは「そういうこともあるよね」で済んでしまうこと。でも複数重なったら、確実に何かが起きています。

売主が今すぐできる5つの自衛策

サインを見抜けるようになったら、次は実際に身を守る方法です。私が15年間で見てきた中で「これをやっていれば被害を防げた」と思う5つを紹介します。

自衛策1:一般媒介で複数社に出す

最強の防御策です。一般媒介なら同時に3〜5社に依頼できるので、囲い込みのインセンティブそのものが消えます。「自社で抱え込んでも他社が先に売ってしまうかもしれない」と思ったら、業者は最初から本気で動かざるを得ません。

「一般だと業者がやる気を出さない」と言われますが、それは囲い込みで両手を狙う業者の言い分です。本当に良い業者は、一般でも全力で動きます。

自衛策2:レインズの登録証明書を必ずもらう&IDで自分で確認

専任で契約するなら、これは絶対にやってください。登録証明書には売主専用のIDとパスワードが書かれていて、これを使えば自分の物件がレインズ上でどう表示されているかを24時間チェックできます。「公開中」になっていればOK、「書面による購入申込みあり」などになっていたら、その業者に詳細を確認しましょう。

自衛策3:販売活動報告書を「具体的な数字」で求める

「問い合わせ:◆件」だけじゃなく、「ポータルサイトからの反響◆件、他社からの問い合わせ◆件、内見実施◆件、内見後の感想:△△」というレベルで報告を求めましょう。具体性を求められて困る業者は、活動していないか、活動を隠している業者です。

自衛策4:SUUMO・HOME’Sで自分の物件がどう見えているか毎週チェック

これは無料でできる超重要なチェックです。自分の物件が一般のポータルサイトでちゃんと公開されているか、価格や写真は適切か、目立つ位置に出ているか。週に1回、買主のフリをして検索してみてください。掲載されていなかったり、変な場所に追いやられていたら、業者に理由を聞きましょう。

自衛策5:違和感があれば媒介契約を切る勇気を持つ

これが一番難しいけど、一番大事です。「お世話になっているし、悪いかな」と遠慮していると、何百万円も損します。専任媒介でも、契約期間中の解除は可能です(理由によっては費用がかかる場合あり)。

迷ったら、ひと言「他社からセカンドオピニオンを取りたいので一旦活動を止めてもらえますか」と伝えるだけで、業者の本気度が見えてきます。

それでも囲い込みされたら?

ここまでやってもなお、囲い込みの被害に遭ってしまったら——次の一手があります。

1. 国土交通省・地方整備局への通報

各地方整備局には「不動産取引適正化の窓口」があります。具体的な事実関係(媒介契約書、活動報告書、他社からの問い合わせ証拠など)を揃えて相談しましょう。法改正後は処分につながりやすくなっています。

2. 都道府県の宅建協会への相談

宅建協会も会員業者の不適切行為に対して指導する権限があります。匿名でも相談を受け付けてくれるところが多いです。

3. 媒介契約解除の手順

専任媒介の解除は、原則として書面で通知すれば可能です。ただし契約書に違約金条項がある場合があるので、契約書を必ず読み返してください。

4. 弁護士に相談するべきケース

明らかな逸失利益が発生している場合、損害賠償請求も視野に入ります。不動産トラブルに強い弁護士を探しましょう。日弁連や各地の弁護士会で無料相談を受けられます。

まとめ:もう”鴨”ではいられない

法改正は確実に前進しました。レインズのステータス管理も、行政処分の枠組みも、売主にとっての武器は揃いつつあります。

でも、忘れないでください。武器があっても、使い方を知らない人は守られません。

「囲い込み」という言葉を知らないままだったら、あなたは今後も業界にとっての”鴨”のままです。でも、この記事を最後まで読んだあなたは、もう違います。サインを見抜く目があり、自衛策を打つ知識があり、いざとなったら相談できる窓口も知っている。

15年間、この業界の表も裏も見てきて思うのは、「知っている売主」と「知らない売主」の差は、本当に残酷なほど大きいということです。

あなたの大切な資産を、他人の都合で値引きされないために。今日学んだことを、ぜひ実際の売却で使ってください。


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